食品添加物についてはやたらと危険性を煽る報道もあり、不安になる方も多いでしょう。一方、業界側の「食品添加物は安全」という主張も、すんなりと受け入れがたいですね。大切なのは、食品添加物の基礎知識を身に付けて、冷静に判断することです。
食品添加物の基本ルール
食品添加物は食品衛生法で規制されています。使用できる食品添加物は、天然物かどうかを問わず、厚生労働大臣が指定したものに限られます。
例外的に、指定を受けずに使用できるのは、「既存添加物」「天然香料」「一般飲食物添加物」だけです。
個々の食品添加物については、食品衛生法に基づき、成分規格や使用できる量などを定めています。
「指定添加物」と「既存添加物」の違いは?

食品添加物は、「指定添加物」「既存添加物」「天然香料」「一般飲食物添加物」の4つに区分されます。
まず、指定添加物と既存添加物の違いを理解しましょう。
指定添加物とは、厚生労働大臣が定めた食品添加物のこと。安全性は内閣府の食品安全委員会が評価します。甘味料のキシリトール、酸化防止剤のL-アスコルビン酸、保存料のソルビン酸などがよく知られています。
既存添加物とは、1995年時点(食品衛生法の改正時)で既に日本で使用されていて、食経験が長い食品添加物のこと。例外的に、指定を受けずに使用・販売することが認められています。着色料のウコン色素やクチナシ色素などが代表選手です。
「天然香料」「一般飲食物添加物」とは?

天然香料は、動物や植物から得られる天然の物質で、食品に香りを付ける目的で使用されます。例えば、バニラ香料やカニ香料などがあります。
一般飲食物添加物は聞き慣れない言葉ですね。これは一般的な食品・飲料でありながら、食品添加物として使用されるもの。代表例にイチゴジュース、オレンジジュース、寒天、カゼイン、ココアなどがあります。
食品添加物の安全性確認の方法
食品添加物の安全性は、どのように確認されているのでしょうか。
まず、食品安全委員会で安全性を評価します。次に、厚生労働省の審議を経て、成分規格や使用基準を設定するという流れです。
食品安全委員会による評価では、動物を用いた毒性試験のデータなどを用いて、個々の食品添加物について「1日摂取許容量(ADI)」を設定します。
ADIとは、人が生涯にわたって毎日摂取し続けても、健康への悪影響が出ないと推定される1日あたりの摂取量のこと。設定されたADIを超えないように、厚労省では使用基準を設定します。
つまり、一生食べ続けても健康被害が出ない量に基づいて、使用可能な量などを設け、安全性を確保しているわけですね。
安全性に関する国際動向は無視できない
消費者団体のなかには、「日本の食品添加物の規制は海外よりも甘い」と批判する声もあります。しかし、海外諸国の基準と単純に比較することはできません。
というのも、国によって食文化や食生活が違い、食品添加物の定義や対象範囲、使用可能な量が異なることも珍しくないからです。
ただし、海外で新たな知見が報告された場合には、無視してもよいという話にはなりません。日本も再検討する必要があるでしょう。
日本人の摂取量の実態
日本人がどのくらい食品添加物を摂取しているのかを調べるため、厚生労働省では毎年、スーパーなどで販売されている食品を購入し、食品中の食品添加物の量を分析しています。
2020年度調査によると、ADIに対する「推定1日摂取量」の割合は、保存料で最も高かった「亜硫酸塩類」が0.57%でした。着色料については最も高かった「カンタキサンチン」でも0.03%にすぎず、それぞれの食品添加物でADIを大きく下回っています。
数値を見る限り、食品添加物の摂取量については、今すぐ心配するような状況にないことがわかります。
安全性の課題とは?
個々の食品添加物の安全性は確認されているのですが、多種類の食品添加物を同時に摂取することによる影響は不明です。というのも、安全性を評価する手法が確立されていないからです。複合摂取による影響については、今後の課題に挙がっています。
また、関連業界は「食品添加物は安全」と強調しがちですが、使用基準を順守した場合に限られます。当然ながら、製造上の管理ミスによって、食品添加物による健康被害が発生する可能性は否定できません。
食品添加物の安全性を確保するには、国による安全性の評価に加え、製造上のミスをいかに防止するかという点も合わせて考える必要があります。食品添加物それ自体が安全なのではなく、使用基準を順守することで健康被害が防止されていることを忘れてはなりません。
冷静な判断で行動を!

食品添加物の安全性に対して、神経質になる必要はありません。その一方で、新たな知見に基づいて、発がん性があるなどの理由から海外諸国で使用を中止した食品添加物が出ているように、無頓着すぎるのも問題です。
ここまで見てきたように、食品添加物をあまり気にしないことも、食品添加物を避けたいと考えることも、どちらも間違いではありません。大切なのは、食品添加物の基礎や使用実態を知り、冷静に判断すること。
食品添加物を避けたい、リスクを抑えたい方にとっては、食品添加物の使用を抑えた食品を選んだり、インスタント食品の利用を減らしたりすることが必要です。