トランス脂肪酸って何?健康への影響は?

健康に悪影響を与えるトランス脂肪酸。「耳にしたことはあるけど、詳しくは知らない」という方も多いことでしょう。トランス脂肪酸とはどのようなもので、どの食品に多く含まれているのかを理解し、あなたの食生活を見直してみましょう。

トランス脂肪酸とは?

トランス脂肪酸は、脂質を構成する脂肪酸の1種です。脂質は、私たちが生命を維持するために不可欠な「3大栄養素」の1つ。脂質を構成する脂肪酸は、「飽和脂肪酸」と「不飽和脂肪酸」に大別できます。肉類や乳製品などに多く含まれる飽和脂肪酸は、取りすぎると健康を害すると言われています。一方、不飽和脂肪酸にはDHAやEPA、オレイン酸、α-リノレン酸などがあり、健康に良いイメージが定着しています。

ところが、不飽和脂肪酸にも「シス型」と「トランス型」の2種類があり、すべてが“健康の味方”というわけではありません。DHAやEPA、オレイン酸、α-リノレン酸などは「シス型」の不飽和脂肪酸に分類されます。これに対し、トランス脂肪酸は「トランス型」の不飽和脂肪酸なのです(「シス型」「トランス型」については、かなり専門的な話となりますので、ここでは割愛します)。

トランス脂肪酸を多く含む食品とは?

トランス脂肪酸を特に多く含む食品として、マーガリン、ファットスプレッド、ショートニングなどがあります。当然、これらを原材料に使用する菓子、パン、ケーキなどにも多く含まれています。

食品安全委員会によると、食品中のトランス脂肪酸の含有量(100gあたり)はショートニングが13.6gでもっとも多く、次に業務用のマーガリンとファットスプレッドが各8.2g(市販用は5.5g)。菓子類にも多く含まれています。100gあたりにパイは4.8g、クッキーは1.9g、コーン系スナック菓子は1.7g。このほか、クリームやマヨネーズにも多く含まれています。

なぜ、マーガリンなどにはトランス脂肪酸が多いの?

マーガリンやファットスプレッドなどに、トランス脂肪酸が多く含まれるのはなぜしょう?その理由は製造方法にあります。マーガリンやファットスプレッドなどの製造では、液体状の油脂を固体化させるわけですが、その際に「水素添加」という方法を用いる場合があります。この水素を添加する工程で、トランス脂肪酸が生じるのです。また、植物油の製造では、においを除去する目的で高温処理を行うことがあります。これによってもトランス脂肪酸が生じます。このため、サラダ油などにもトランス脂肪酸が含まれることがあります。

健康にどう影響するの

トランス脂肪酸が問題視されるのは、取りすぎると健康に悪影響を与えるからです。血液中のLDLコレステロール(悪玉コレステロール)が増加し、HDLコレステロール(善玉コレステロール)が減少すると報告されています。トランス脂肪酸を多く取り続けると、病気にかかるリスクを高めます。WHO(世界保健機関)によると、心臓病の発症リスクを高め、冠動脈疾患である心筋梗塞や狭心症などの発症を増やします。このほか、肥満やアレルギー性疾患との関連性が認められた症例も報告されています。

私たちの摂取状況は?

では、私たち日本人はトランス脂肪酸をどのくらい摂取しているのでしょうか。WHOが掲げるトランス脂肪酸の摂取量の目標は、総エネルギー摂取量の「1%未満」。これに対し、食品安全委員会の「食品に含まれるトランス脂肪酸」評価書によると、日本人の摂取量は平均値で0.3%。日本人の多くはWHOの目標を下回り、通常の食生活を送っている方にとっては健康への影響は小さいと言えます。

といっても、安心できない方もいます。スナック菓子が好きな方、ケーキが大好物の方、脂質の多い食事を取りがちな方などは注意が必要です。また平均すると、女性の方が男性よりも総エネルギー摂取量に占める摂取割合が高い傾向にあります。

食品メーカーの対策は?

先進諸国では健康政策の観点から、食品に含まれるトランス脂肪酸について規制を導入しています。欧州連合(EU)は2019年に一般消費者向け食品を対象に、トランス脂肪酸が100gあたり2gを超えないようにする規制を導入。21年4月から完全施行となり、現在は規制をクリアした食品だけが流通しています。米国では2006年から加工食品を対象に、トランス脂肪酸の含有量の表示を義務化。2018年からは、水素を添加した油脂の食品への使用規制を開始しています。

日本では、食品業界が中心となって対応を進めています。たとえば、油脂の製造工程では、風味を改良する目的で高温処理を施す場合がありますが、トランス脂肪酸を増やさないように温度・時間・圧力を厳密に管理しています。マーガリンやショートニングのメーカーでは、水素の添加に代えて、エステル交換などの加工技術を採用。これによって、トランス脂肪酸の含有量が少ない製品を開発しています。

スナック菓子やケーキの食べ過ぎに注意!

トランス脂肪酸の摂取を控えるためには、脂肪の多い食事に偏らないように心がけることが大切。スナック菓子やクッキー、ケーキなども食べ過ぎないことです。特に女性は男性よりも、トランス脂肪酸の摂取割合が高い傾向が見られますので、くれぐれも用心してくださいね。

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フリーライター。食品、サプリメント、医薬品、医療、通販などの分野を中心に取材・執筆活動。玉石混交の情報が氾濫する中で、正しい情報の発信を目指します。千葉ロッテマリーンズを応援。仕事で疲れた時は、MISIAさんの歌が一番の癒し。