無許可の「経口補水液」表示が禁止に! スポーツ飲料の注意点とは?

国の特別用途食品制度で許可された、脱水症状の方が使用する「経口補水液」が販売されている一方で、許可を受けずに「熱中症対策」「経口補水液」と表示したスポーツ飲料も売られています。その違いや、商品選びで注意すべき点を解説します。

夏場は熱中症に注意!

高温多湿の場所に長時間いると、体温を調節する機能がうまく働かなくなって、体内に熱がこもった状態となります。これを「熱中症」と呼びます。

夏場になると、屋外でスポーツを行って熱中症で病院に運ばれたというニュースを耳にします。室内にいてもエアコンがない部屋では発症することがあり、最悪の場合は命を落とします。

電解質って何?

「熱中症対策」をうたうスポーツ飲料の広告を見ると、「経口補水液」の表示とともに、スポーツ時や激しく汗をかいた時に「水分と電解質を補給」という説明があります。

電解質とは、水に溶けて電気を通す性質の物質のこと。代表的なものに、ナトリウム・カリウム・マグネシウムなどがあります。

スポーツ飲料のパッケージには、ナトリウムやカリウムを強化した旨が表示されています。

激しく汗をかくと、水分をはじめ、ナトリウムやカリウムなども体外へ排出されることから、電解質の補給を訴求しているわけです。

特別用途食品と一般のスポーツ飲料の違い

「熱中症対策」をうたう一般的なスポーツ飲料を日頃から利用している方も多いと思われますが、実は深刻な問題を抱えています。

そもそも熱中症は疾病であり、「熱中症対策」という表現は疾病予防に該当し、一般的な食品・飲料で用いることができません。

「熱中症対策」「脱水症対策」と表示できるのは、消費者庁が所管する特別用途食品制度の許可を得た商品だけ。専門家による審議を経て許可されることから、スポーツ時などの脱水症や熱中症に対する効果が期待できます。

一方、許可を得ていないスポーツ飲料の場合、ナトリウムやカリウムの配合量・配合割合にバラツキがあり、脱水症状の方が利用しても症状を改善できるかどうかは不明です。「熱中症対策」「経口補水液」とうたった広告を信じて利用したものの、症状が改善されない場合は、健康上の大きなリスクを招いてしまいます。

怖いナトリウムの摂り過ぎ

許可を得ていない商品については、もう1つ、大きな問題を抱えています。「熱中症対策」「経口補水液」とうたって販売されているスポーツ飲料は、スーパーやコンビニで、果汁飲料や炭酸飲料といったソフトドリンクと一緒に並べて売られています。

また商品パッケージに、どのような場合に使用するのか、という注意書きもありません。このため、脱水症状でない時に、ソフトドリンクとして利用する方も多いわけです。

しかし、健康な方がソフトドリンクとして利用すると、ナトリウムなどの過剰摂取を招きます。ご存じのとおり、ナトリウムの過剰摂取は生活習慣病の原因となり、避けなければなりません。これに対し、特別用途食品として許可された商品では、パッケージに「経口補水液」の表示とともに、軽度から中等度の熱中症や脱水症の方を対象とする旨を明記していますので、どのような場合に利用するのかが明瞭です。

特別用途食品制度を改正、無許可の「経口補水液」表示を禁止に

こうした問題を解消するため、消費者庁は特別用途食品制度を改正し、「経口補水液」を“許可基準型”病者用食品として位置づける方針です。経口補水液と商品に表示して販売するためには、同庁の許可が必要になります。

許可された商品には「経口補水液」の表示とともに、「感染性胃腸炎による下痢・嘔吐等の脱水状態に適する」旨を表示します。順調に行けば、2023年度の早い段階でスタートする見通しです。

規格基準についてはWTOガイドラインなどを参考に、ナトリウムは100mlあたり92~138mg、カリウム59~98mg、ブドウ糖1.35~2.50gなどとする予定です。

同制度の下で、既に許可されている「経口補水液」もありますが、こちらは“個別評価型” 病者用食品と呼ばれるものです。これは、企業が希望する表示内容と、その裏付けとなる科学的データを提出し、審査を通れば表示が許可されます。これまでに「熱中症」対策や「脱水症」対策と表示できる商品が許可され、販売されています。

規格基準型であれ個別評価型であれ、制度の改正後、「経口補水液」と表示するためには、特別用途食品として許可されることが条件となります。現在、ソフトドリンク売り場で販売されているスポーツ飲料に「経口補水液」と表示できなくなります。当然ながら、「熱中症対策」といった広告も取り締まりの対象となります。

一般的なスポーツ飲料の利用には注意も必要

一般的なスポーツ飲料を利用する方は、健康面を考えて、ナトリウムや糖分などの摂り過ぎにならないように注意することが重要です。

もし、脱水症状が生じた場合には、一般のスポーツ飲料ではなく、効果が期待できる特別用途食品の「経口補水液」を利用しましょう。

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フリーライター。食品、サプリメント、医薬品、医療、通販などの分野を中心に取材・執筆活動。玉石混交の情報が氾濫する中で、正しい情報の発信を目指します。千葉ロッテマリーンズを応援。仕事で疲れた時は、MISIAさんの歌が一番の癒し。