ECサイトの食品表示 正しく理解するためのポイントとは?

小売店では、食品を手に取ってパッケージの表示を見て商品を選びますよね。しかし、インターネット通販では知りたい情報が得られなかったり、特有の表示方法によって正しく理解できなかったりします。そこで、ECサイトの食品表示の見方について解説します。

消費者が知りたい情報のトップは「消費期限・賞味期限」

食品を選ぶ時に、あなたはどのような表示を重視しますか。消費者庁が実施したアンケートによると、ECサイトで消費者が必ず知りたいと答えた食品表示のトップは「消費期限・賞味期限」。2位以下は、「名称」「内容量」「原材料名」「原料原産地(加工食品)」「原産地(生鮮食品)」などが続きます。

これに対し、ネット通販業者がすべての商品に記載していると回答した表示は、「消費期限・賞味期限」が5割強、「原料原産地(加工食品)」「原材料名」が4割前後にとどまっています。

ECサイトで表示が困難な「期限情報」「産地情報」

このように、ネット通販では消費者ニーズと事業者の取り組みに乖離が見られます。事業者も努力しているのですが、ネット通販特有の事情があり、商品パッケージのようにはいきません。

特にECサイトで表示が困難なのが、賞味期限や消費期限の「期限表示」。というのも、ECサイトで注文した後、発注から配送までにタイムラグが生じるからです。さらに、物流事情や悪天候によって、消費者の手元に届くまでの日数にも誤差が生じます。

生鮮食品の原産地や加工食品の原料原産地も、ECサイトで表示するのが困難と言われています。商品によっては、季節ごとに産地がころころと変わるからです。

消費者庁、ECサイトの食品表示ガイドブックを公表

ECサイトの食品表示の拡充に向けて、消費者庁は2022年6月15日、「インターネット販売における食品表示の情報提供に関するガイドブックについて」を公表しました。今後、ネット通販業者はガイドブックを参考に、食品表示を拡充していくと予想されます。

ガイドブックはネット通販業者に向けたものですが、消費者にとっても参考になります。ガイドブックを知れば、ECサイトの食品表示の意味を正しく理解できます。ここでは、消費者が誤認しやすいポイントに絞って述べていきます。

「期限残表示」とは?

ガイドブックで詳しく説明しているのが、「期限情報」の提供方法。前述したとおり、消費者ニーズがもっとも大きく、一方、事業者にとってはもっとも困難な表示だからです。

各ECサイトを見ると、「賞味期限:〇年〇月〇日」「到着から〇日」「出荷日から〇日」「製造日から〇日」など、さまざまな方法で期限情報を提供しています。

ガイドブックでは、こうしたネット上で見られる表示方法を列挙し、事業者が取り組むべき優先順位を示しています。それによると、理想は「賞味期限:〇年〇月〇日」という年月日表示。しかし、異なる製造ロットの商品が混在していることから、ECサイトでは非現実的です。そこで、「期限残表示」が望ましいとしています。

「期限残表示」は、残り何日間おいしく食べることができるのかを意味しています。

「期限残表示」には2通りあります。1つ目は、「到着日から7日」「賞味期限まで10日以上日持ちするものをお届け」といった商品の到着日から起算する方法。2つ目は、「出荷日から7日」「商品発送の時点で賞味期限まで残り10日以上の商品をお届け」といった出荷日から起算する方法です。

2つの方法を比べると、到着日から起算する方法の方が、残りの日数を理解しやすいと言えます。

これらの「期限残表示」にも注意すべき点があります。配送期間にタイムラグが出る場合は、ECサイト上で保証した期限残と実際に届いた商品の期限残にズレが生じることがありますので、この点を理解することが大切です。

「期間表示」は誤解しないように!

ガイドブックでは、「期限残表示」が困難な場合は「期間表示」を推奨しています。「期間表示」とは、「食品そのものに設定された賞味期限までの期間」を指し、主に賞味期限が長い食品で利用されています。

具体的に見ると、「賞味期限:180日」「賞味期限:3年」という表示方法です。

注意点は、実際においしく食べることができる残りの期間がわからないこと。手元に届いた時点から「180日」「3年」という意味ではありませんので、誤解しないようにしましょう。

複数の産地を併記、その意味は?

ガイドブックでは、生鮮食品の「原産地」は商品選択で重要なため、可能な限り、小売店で見られる表示方法によって情報提供するように呼びかけています。

ただし、野菜や果物は季節によって産地が変わるものも少なくありません。この場合、ECサイトでは「原産地:鹿児島、広島、和歌山、福島など」というように、複数の産地が併記されていることがあります。こうした表示があれば、どれかの産地が該当すると理解しましょう。

加工食品の原料原産地表示についても原則、商品パッケージと同じ表示方法を求めています。また、ECサイトは表示スペースが大きいため、原材料名と分けて別の欄に「大豆(米国または中国)、牛肉(米国またはメキシコ)」などと表示する方法も推奨しています。

意外な落とし穴も

ネット通販ならではの注意点もあります。ECサイトで購入する際に、「期限情報」や「産地情報」などを確認する方は多いと思われます。では、商品の寸法についてはどうでしょうか?

意識しない方も多いかもしれませんが、商品が届いてから「冷凍庫に入らない」といった声も販売業者に寄せられています。加えて、寸法が大きいと宅配ボックスにも入りません。配送業者とやり取りしている間にも、残りの賞味期限は減っていきます。

このため、注文時には商品の寸法に加え、梱包サイズの確認も必要です。ECサイトに表示がない場合は、販売会社に確認しましょう。

食品表示を確認し、快適なネットショッピングを!

ネット通販は今後も市場拡大が予想されています。ネット通販でしか手に入らないもの、安く買えるものもあり、届いた瞬間の楽しみもあります。

快適なネットショッピングを楽しむために、今回紹介した表示内容をしっかりと確認してくださいね。

ABOUTこの記事をかいた人

フリーライター。食品、サプリメント、医薬品、医療、通販などの分野を中心に取材・執筆活動。玉石混交の情報が氾濫する中で、正しい情報の発信を目指します。千葉ロッテマリーンズを応援。仕事で疲れた時は、MISIAさんの歌が一番の癒し。