日ごろ何気なく口にする漬け物や干しシイタケなどは、先人の知恵が凝縮された保存食として古くから伝わってきました。近年では災害時の非常食としても注目されています。日本各地で発祥した伝統的な保存食について見ていきましょう。
保存食は健康志向食品の“元祖”
昔から日本各地で保存食が伝統的に作られてきました。野菜・海藻・魚介類などを乾燥させて、常温で長期保存できるようにした乾物をはじめ、漬け物、ドライフルーツなどがあります。
そうした伝統的な保存食は、厳しい冬に食料が不足することへの対応などを目的に発展してきました。近年では、大型の地震や豪雨が毎年のように発生していることを受けて、非常食としても注目を集めています。
また、保存食は天日干しや発酵といった製造工程を経るものも多く、その結果、生鮮の状態と比べて栄養価が大きく向上するものもあります。先人の知恵を凝縮した保存食は、健康志向食品の“元祖”として再認識されるようになってきました。
干し柿、干しシイタケ、乾燥ヒジキ、漬け物、新巻鮭など、日本で発祥し、昔から各地域で親しまれてきた代表的な保存食の魅力を紹介します。
天日干しによって高まる栄養価

干し柿は、日本で生まれたドライフルーツ。子どもから高齢者までのおやつとして、今も根強い人気を誇ります。干し柿は柿を乾燥させたもので、通常は渋柿を使用します。
柿は、甘柿と渋柿に大きく分けることができます。柿の渋味のもとは、水溶性タンニンという成分。これが口の中で溶けると、渋味を感じるわけです。甘柿も成長の途中では渋味がありますが、収穫する頃にはタンニンは水溶性から不溶性へと変化し、渋味がなくなります。
一方、渋柿はそのままでは渋くて食べることができません。しかし、干すことによって渋味がなくなり、おいしく食べることができるようになります。干し柿の表面には白っぽい粉が付いていますが、これは柿の糖分で、干し柿の甘さのもとです。また、生の柿と比べて食物繊維やビタミンAが多いなど、栄養価の高さも特長です。
干しシイタケには、うま味成分の「グアニル酸」が多く含まれています。このため、生のシイタケよりも、本来のうま味を味わうことができます。
栄養面を見ると、干しシイタケは、天日干しによってビタミンDが増します。ビタミンDの補給には、生のシイタケよりも干しシイタケが有利と覚えておきましょう。
乾燥ヒジキ、高野豆腐は栄養成分が豊富

乾燥ヒジキは、収穫したヒジキを水蒸気で蒸し、乾燥させて製造されます。一般的に鉄分が豊富と言われていますが、これは鉄製の釜で処理するかどうか、また加熱時間の長さによっても大きく違ってきます。本来、乾燥ヒジキに豊富に含まれるのは、カルシウム、食物繊維、ヨウ素です。
高野豆腐は、豆腐を凍結させて、低温熟成、乾燥などの工程を経て製造されます。栄養価については、植物性たんぱく質が多く含まれている点が特長。カルシウムや鉄分も豊富です。手軽に植物性たんぱく質を摂取したい方にとって、重宝される食材です。
災害時にも頼れる漬け物

漬け物も日本を代表する保存食。そのうちの1つ、たくあん漬けは、冬場に収穫されたダイコンを原料に使用します。
ダイコンを日干しして水分を飛ばし、米麹と塩で数カ月の間、漬け込みます。乾燥・塩蔵・発酵の過程を経て、保存性を高めるとともに、デンプンが糖分に変わって甘味が増し、風味も良くなります。
梅干しは自宅でも作ることができます。梅の実を洗浄し、ストックバックに入れて塩を馴染ませて、仕込みます。1カ月ほどしたら、天日干しをして完成となります。
漬け物は長期保存が可能で、ご飯のお供に最適。「とりあえず漬け物があれば…」という安心感を与えてくれて、災害時にも頼りになる存在です。
うま味が増す魚介類の保存食

魚介類は保存食とすることで、明らかにうま味が増すというメリットがあります。
新巻鮭は、鮭を塩に漬けてから乾燥させることで、保存性を高めています。秋に獲れる鮭に塩をすり込み、重石を乗せて水分をじっくりと飛ばして乾燥させるという工程を繰り返します。この工程によって、鮭に含まれるたんぱく質がうま味成分に変わり、豊かな風味が生まれてきます。
北陸地方の郷土料理であるサバのへしこも、代表的な魚介類の保存食。サバをひらきにして塩に漬けた後、米麹と糠に付け込み、1年ほど寝かします。熟成の過程でたんぱく質がうま味成分に変わり、おいしさを一層引き立ててくれます。
非常食にも、健康のためにも保存食を利用

日本で生まれた保存食は、長期保存が可能なものが多く、栄養価の高さも特長です。各地域の伝統的な保存食を子どもに教えることは、日本の食文化や歴史に触れることにもなり、有意義な食育となるでしょう。
保存食は、非常食としても家庭で備蓄しておきたいですね。また、健康面を考えて、日ごろの食卓でもぜひ利用してみましょう。