若年層から高齢者まで、今や欠かせないインターネット通販。通販事業者は増え続けていますが、その中には、嘘の広告によって騙したり、問い合わせに対応しなかったりするなど、悪質な事業者も含まれています。ネット通販をめぐる消費者トラブルは増加傾向にあり、その内容も多様化しています。被害に遭わないように、「消費者白書」を通して、最近の傾向と対策を理解しましょう。
ネット通販の相談件数は全体の29%
2022年に全国の消費生活センターに寄せられた消費者相談の全体像を見ましょう。消費者白書によると、総件数は約87万件で前年からやや増加。商品・サービス別で見ると、トップ3は「商品一般」「不動産貸借」「工事・建築」でしたが、4位に「基礎化粧品」、6位に「エステティックサービス」が入り、美容関連が増加しています。
販売手法別では、「インターネット通販」に関する相談が最多で、全体の29%を占めています。「店舗通販」の21%、「訪問販売」の8%と比べて、ネット通販のトラブルが多い様子がうかがえます。
「定期購入」に関するトラブルが過去最多

従来から見られるネット通販のトラブルの代表的なものに、商品が届かない「商品未着」、注目した商品と違う物が届く「注文品違い」、販売事業者と連絡が取れない「連絡不能」などがあります。
こうした一般的なトラブルのほか、22年の特徴の1つに、「定期購入」に関するトラブルが激増したことがあります。
これは、健康食品や化粧品のネット広告で「初回無料」「初回500円」などとうたいながら、申し込んだ方に対し、複数回の購入が条件として高額料金を請求するという詐欺的な商法。「いつでも解約可能」と表示していたものの、販売事業者に連絡がつかないケースも多いです。
22年には定期購入に関する相談が約7万5000件に上り、過去最多を記録しました。特に50代以上で大幅に増えています。購入商品はもともと健康食品が多かったのですが、最近では化粧品が激増しています。
相談事例には、「いつでも解約可能、定期縛りなしという広告を見てダイエットスムージーを購入したが、解約しようとしたら6回購入が条件だと言われた」などがあります。
SNSをきっかけにトラブルに巻き込まれるケースが増加
LINEなどのSNSの利用によって、トラブルに巻き込まれるケースが増加していることも、22年の特徴の1つ。SNS関連の相談件数は約6万件に達し、前年度の5万件から大幅に増加しています。
消費者相談は若者層で多いのですが、SNS上の広告をきっかけにトラブルに巻き込まれるケースは中高年でも増えています。
SNS上の広告で有名百貨店の値引きセールを宣伝し、偽サイトへ誘導して、クレジットカード情報を盗んだり、偽物を買わせたりするケースも報告されています。
高齢者のトラブルが急増

被害に遭う高齢者が増加していることも、最近の特徴です。22年には高齢者のネット通販に関する相談が約5万件に達しました。
前述した化粧品や健康食品の定期購入に関するトラブルが、高齢者でも前年の約2倍に急増し、過去最多となっています。
このほか、ネット通販による「ウイルス対策ソフト」のパソコンサポート詐欺や、「出会い系サイト・アプリ」のサクラサイトで料金を支払わせる手口によるトラブルが多いのも、高齢者の特徴です。
トラブル回避のためにできること
ネット通販でトラブルに遭わないように、誰でもできることは何でしょうか?
1点目は、商品・サービスを購入する前に、所在地や連絡先、利用者の評価など事業者情報を確認すること。
2点目は、化粧品や健康食品を購入する際に、定期購入コースになっていないかどうかを十分に確認することが大切です。定期購入コースを注文する場合には、購入回数や支払う料金の総額、解約方法なども確認し、画面を保存するようにしましょう。
3点目として、通常価格よりも大幅な割引を設定している場合は、模倣品である可能性がありますので、注文するかどうかを慎重に判断してくださいね。
4点目は、クレジットカードが利用できず、支払方法が銀行振込や代引しか用意されていない場合は十分に注意しましょう。
また、最近では正規の通販サイトをコピーした偽サイトを作成し、代金支払後も商品を送らなかったり、偽ブランド品を送ったりする被害が報告されています。
そうした偽サイトは簡単に見分けがつきません。このため、サイトのURLをはじめ、注文後のメールなどに不自然な日本語がないか、表示されている電話番号につながるかなどを確認することも必要です。
面倒でもスクリーンショットを!

ネット通販のトラブルを防止するために、面倒かもしれませんが、注文画面をスクリーンショットで保存しておくことをおススメします。
埼玉県消費生活支援センターでは、「ネット通販、ポチッと注文の前にスクリーンショット」を呼びかけ、動画で説明しています。スクリーンショットのやり方がわからない方は、埼玉県庁のホームページに詳細(https://www.pref.saitama.lg.jp/b0304/houdou-oshirase/netshop_screenshot2022.html)が掲載されていますので、ぜひご覧ください。
また、今回説明したとおり、化粧品・健康食品の定期購入に関するトラブルが激増していますので、注文時の確認が大切となります。一方、定期購入は注文忘れの心配がない、割安で購入できるなど、消費者にとってメリットがあります。定期購入で注文する場合は、安心できる通販サイトで行ってくださいね。