サプリメントの「指定成分」って何?

最近、パッケージに「指定成分等含有食品」と表示されたサプリメントを見かけるようになりました。この「指定成分」って、どのようなものでしょうか。体にいいの?安全性は?など、いろいろと疑問が湧いてきますね。あなたがサプリメントを賢く選ぶために、ぜひ知ってほしい「指定成分」について解説します。

「指定成分」とは?

厚生労働省と消費者庁は2020年6月1日、「指定成分等含有食品」の制度をスタート。国が指定する成分を含む食品を対象に、パッケージに「指定成分等含有食品」と表示することなどを義務づけました。

指定成分には、現在のところ次の4つがあります。

  1. プエラリア・ミリフィカ
  2. コレウス・フォルスコリー
  3. ブラックコホシュ
  4. ドオウレン

このうち、プエラリア・ミリフィカやコレウス・フォルスコリーのサプリメントは、若年層から中高年までの女性に人気です。

制度が導入された背景

この制度が導入されたのは、なぜでしょうか?発端は、(独)国民生活センターが2017年7月に行ったプエラリア・ミリフィカのサプリメントに対する注意喚起です。

国民生活センターには2012年から2017年4月までに、プエラリア・ミリフィカ製品による健康被害情報が209件寄せられました。実は件数よりも健康被害の内容が衝撃でした。下痢や肌荒れといったよくある症状だけでなく、月経不順や不正出血など、女性特有の症状が多数含まれていたのです。被害者のほぼ全員が女性。10代が18%、20代が33%、30代が20%、40代が20%と、ほかのサプリメントと比べて若い層が多いのも特徴です。

プエラリア・ミリフィカには、「デオキシミロエストロール」「ミロエストロール」という女性ホルモンと同じ作用を持つ物質が含まれています。しかも、大豆に含まれるイソフラボン類と比べて、エストロゲン活性の強さは約1,000倍~1万倍。このため、生理作用に顕著な悪影響を与えてしまうわけです。

販売会社の広告も問題視されました。各社では「バストアップ効果」をうたい、スタイルを変えられると広告していたのです。もちろん、そうした効果はありません。これらの表示は医薬品医療機器等法や景品表示法に違反します。国民生活センターの注意喚起から間もなく、厚労省が食品衛生法の改正に向けた検討を開始。もともと健康食品対策は予定になかったのですが、プエラリア・ミリフィカの問題を受けて、健康食品に含まれる成分の安全対策が議論されました。そして、指定成分等含有食品に関する制度の導入を決定したわけです。

健康被害情報の届出を義務化

指定成分等含有食品に関する制度について、まず表示ルールから見ていきましょう。指定成分を一つでも含む場合は、パッケージに「指定成分等含有食品(〇〇〇)」(〇〇〇は指定成分名)と表示しなければなりません。

このほかにも、次の2つの表示を義務づけています。

  • 「指定成分等とは、食品衛生上の危害の発生を防止する見地から特別の注意を必要とする成分または物です。」
  • 「体調に異変を感じた際は、速やかに摂取を中止し、医師に相談してください。加えて、体調に異変を感じた旨を表示された連絡先に連絡してください。」

表示ルール以外の規制も強化しました。販売会社と製造会社に対し、指定成分を含む食品の摂取で健康被害が発生した場合、都道府県へ届け出ることを義務化。都道府県は寄せられた情報を厚労省へ報告します。また製造会社に対し、「GMP」と呼ばれる製造管理手法を義務づけました。

「指定成分」を含むサプリメントを利用しても大丈夫?

消費者団体の関係者や学識経験者からは、「指定成分という名称を見ると、消費者は体に良い成分と思ってしまうのではないか」という声も聞かれます。パッケージには、前述したように指定成分の説明が記載されています。しかし、これを読んでも、どのような成分であるのかが、今一つはっきりと伝わってこないのではないでしょうか。

わかりやすく言えば、指定成分とは「健康被害を招きやすい成分」です。指定成分を含む製品については、健康被害を防ぐために、使用目的・対象者・摂取量などに細心の注意を払う必要があります。つまり、気軽に使用できる商品ではない、という点を理解することが大切です。

制度導入による健康被害の防止効果は?

指定成分等含有食品に関する制度は健康被害の防止が目的ですが、その効果は表れているのでしょうか。厚労省が2021年4月に公表した資料によると、制度のスタート後に指定成分等含有食品によって健康被害が発生したという報告は約200件を数えます。その約半分をコレウス・フォルスコリー製品が占めます。

次にブラックコホシュ製品(約70件)、プエラリア・ミリフィカ製品(約20件)。ドオウレン製品はゼロでしたが、これはドオウレンを含むサプリメントが国内でほとんど流通していないためだと考えられます。規制が強化されたものの、制度のスタート後も相変わらず多数の健康被害が発生しているというのが実態です。

「指定成分」を含むサプリメントは避けるのが無難

では、私たちは指定成分を含む製品とどのように向き合えばよいのでしょうか。結論を言えば、安全性の観点から、指定成分を含むサプリメントはおススメできません。コレウス・フォルスコリーやプエラリア・ミリフィカを含むサプリメントの広告も、相変わらず“問題あり”です。事実でない効果をうたう違法な広告が散見されています。見た目でわかるほど体形が変貌するといった広告を鵜呑みにしないように注意してくださいね。サプリメント製品を賢く選択する上で、パッケージに「指定成分等含有食品」と表記されている製品は避けるのが無難と言えます。

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フリーライター。食品、サプリメント、医薬品、医療、通販などの分野を中心に取材・執筆活動。玉石混交の情報が氾濫する中で、正しい情報の発信を目指します。千葉ロッテマリーンズを応援。仕事で疲れた時は、MISIAさんの歌が一番の癒し。