アクリルアミドに注意!揚げ物やスナック菓子は危険なの?家庭料理でも増えるアクリルアミドとの上手な付き合い方

スナック菓子やフライドポテトに多く含まれる「アクリルアミド」という物質をご存じですか。アクリルアミドを多く含む食品を摂り過ぎると健康に悪影響を与えるため、食事やおやつを見直すことが大切。アクリルアミドを多く含む食品、日本人の摂取状況、食品メーカーの対策などを見ていきましょう。

アクリルアミドとは?

Acrylamide in food. Potato fries and chemical formula of acrylamide.

日本ではアクリルアミドは劇物に指定されています。もともとは工業用途に用いる化学物質。紙の強度を高めたり、繊維のシワを防いだりするために用いる「ポリアクリルアミド」の原料として利用されています。

1分子(モノマー)のアクリルアミドが2つ以上つながったものを「ポリアクリルアミド」と言います。食品に含まれ、健康を害すると問題視されているのはモノマーのアクリルアミドです。

2000年代に入る頃まで、工業用途で使用されるアクリルアミドが食品に含まれることは知られていませんでした。スウェーデン食品庁とストックホルム大学が02年に、揚げたり、焼いたりしたジャガイモの加工品などに高濃度のアクリルアミドが含まれると発表したことで、世界中で注目されるようになりました。

このような有害物質が日頃口にする食品に含まれているという新たな事実は、世界中に衝撃を与えました。

なぜ加工食品に含まれるの?

高濃度のアクリルアミドが一部の加工食品に含まれるのは、なぜでしょうか。

アクリルアミドは、食品に含まれるアミノ酸の1種であるアスパラギンと果糖・ブドウ糖などの還元糖が、調理で加熱(120℃以上)されることによって生成されます。

油で揚げたり、焼いたりする調理の場合、水分が減少して表面温度が上昇することで、アクリルアミドが生成されやすくなります。

どのような食品に多く含まれているの?

基本的にアクリルアミドは、炭水化物を多く含む食材を高温で揚げたり、焼いたりすると、たくさん生成されます。代表的なものに、ポテトスナックやフライドポテトがあります。ビスケットやクッキーといった穀類を原材料とした焼き菓子にも、高濃度に含まれています。

スーパーやコンビニで販売されている加工食品だけでなく、家庭料理でもアクリルアミドは発生します。例えば、手作りの焼き菓子、トーストパン、野菜の素揚げ・炒め物などです。

農林水産省の調査によると、フライドポテトは1㎏中に平均0.27~0.41mg、ポテトスナックは0.57~1.2mg、コーンスナックは0.14mgのアクリルアミドを含有。一方、市販の食パン(0.02mg)、カレーパン(0.03mg)、天ぷら(0.02mg)、お好み焼き(0.02mg)などは少なめです。

アクリルアミドは発がん性物質

アクリルアミドが問題視されるのは、発がん性のある物質だからです。

国際がん研究機関の「発がん性分類」によると、アクリルアミドは人に対する発がん性の証拠は不十分ですが、動物実験では証拠が十分にあるため、「人に対しておそらく発がん性がある」と評価されています。同じ分類に位置づけられている物質として、木材の防腐剤であるクレオソトなどがあります。

つまり、フライドポテトやスナック菓子を食べ過ぎると、がんを発症するリスクが高まると考えられているわけですね。

そこで気になるのは、私たちが日常生活でどのくらいの量のアクリルアミドを摂取しているのか、という点ですね。

内閣府の食品安全委員会が実施した評価の結果、日本人のアクリルアミドの推定平均摂取量は1日・体重1㎏あたり0.24マイクロg(マイクロ=百万分の1)でした。

食品別で見ると、高温で調理したフライドポテトや炒めた野菜などが全体の56%を占めます。そのほか、飲料が17%、ポテトスナック・小麦菓子・米菓などが16%、パン類などが5.3%、その他が6.2%と推定されています。

次に、この数値を世界の摂取量と比較してみましょう。

国連のFAO/WHO合同食品添加物専門家会議の調査結果によると、世界の平均的なアクリルアミド摂取量は1日・体重1㎏あたり1マイクロg、高摂取群では4マイクロg。また、地域別で見ると、オーストラリア・ニュージーランドは1~4マイクロg、EU(欧州連合)諸国は0.4~1.9マイクロgです。

海外諸国と比べると、日本人の摂取量はかなり少ないと言えるでしょう。基本的には神経質になったり、大騒ぎしたりする必要はありません。

ただし、スナック菓子や焼き菓子などをたくさん食べる方や、ファストフードの利用が多い方などでは、アクリルアミドの摂取量が多くなり、安心できません。

進む食品企業の対策、アクリルアミド濃度低減の成功事例も

加工食品に含まれるアクリルアミドの濃度を低減させるために、国内の食品企業ではさまざまな取り組みが進められています。

ポテトスナックやフライドポテトについては、原材料のジャガイモを長期間貯蔵すると、アクリルアミドの前駆体の一つである還元糖の濃度が高くなり、その結果、アクリルアミドの濃度も高くなることがわかっています。また、品種によっても還元糖の含有量が異なります。

そうした知見を基に各社では、還元糖の含有量が少ない品種への転換、ジャガイモの保管条件の見直し、フライ時の温度条件の見直しなどを実施。アクリルアミドの濃度低減に成功したという報告もあります。

食生活で注意する点とは?

厚生労働省は国民に向けて、次のような点に注意するように呼びかけています。

・バランスの良い食事を心がけ、揚げ物や脂肪分が多い食品の過度な摂取を控える。

・炭水化物の多い食品を焼いたり、揚げたりする場合は、あまり長時間、高温で調理しないようにする。

また、煮たり、蒸したりした食品には、アクリルアミドがほとんど含まれないことがわかっています。揚げ物や炒め物ばかりでなく、煮物や蒸した物も含めてバランス良く食べることをおすすめします。

大切なのは、確かな情報に基づいて冷静に行動すること。神経質になって、揚げ物や炒め物、ファストフードや菓子を極端に避ける必要はないでしょう。あなたの健康を守るために、さまざまな食品をバランス良く食べる習慣を身に付けてくださいね。

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フリーライター。食品、サプリメント、医薬品、医療、通販などの分野を中心に取材・執筆活動。玉石混交の情報が氾濫する中で、正しい情報の発信を目指します。千葉ロッテマリーンズを応援。仕事で疲れた時は、MISIAさんの歌が一番の癒し。