梅雨時になるとせっかく保存していた食品にカビが生えて、「食べても大丈夫なの?捨てた方がいいの?」と悩んでしまいます。カビの種類によっては食品を腐らせて、健康に悪影響を与えるものもあります。カビが生えた食品に、私たちはどう向き合えばよいのでしょうか?
カビは微生物の仲間、有益なものも
カビは微生物の仲間です。微生物を大きく分けると、「ウイルス」「細菌」「菌類」があります。このうち「菌類」には、酵母やカビが含まれます。キノコも菌類の1つです。
カビには約3万に上る種類があります。カビは一括りにして、その善悪を語ることはできません。カビの中には、私たちにとって有益なものもあるからです。発酵食品の製造に利用されるカビは、その一例です。
カビを利用して製造される食品に、甘酒や鰹節があります。みそ・しょうゆ・清酒などは、カビ・酵母・細菌を一緒に利用して製造されます。
食品に付くカビは、食品中の有機物を分解して栄養に用いて、菌糸を伸ばして成長していきます。みその場合だと、大豆をアミノ酸に変えます。
米や麦のカビは毒性の強いカビ毒を産生
有益なカビがある一方で、カビの中には「カビ毒」を作り出して、健康被害を引き起こすものもあります。カビ毒は、カビが食品に付着し、増殖して産生する毒素の総称です。
日本では、特に米や小麦といった穀類のカビに注意する必要があります。乾燥や貯蔵の条件が悪いと、穀類にカビが生えます。
2011年には、国産の米が「アフラトキシン」によって汚染された事件が発生しました。アフラトキシンは、カビによって産生されるカビ毒の1つで、強い毒性を持っています。
また、日本では麦類の生育後期に降雨が多いことから、小麦や大麦に赤カビが生えるこも。赤カビが産生するカビ毒の「デオキシニバレノール」や「ニバレノール」による汚染も起こることがあります。
冷蔵庫に入れても安心できない!
次に、一般家庭に置き換えて、カビの危険性を考えてみましょう。
リビングやキッチンなどの空間には、カビの胞子や菌糸が漂っています。一般住宅の室内に浮遊しているカビの数は、1㎡あたりに数百個から数千個と言われています。もちろん、目には見えません。
カビはモチやパンなどの食品に付着し、増殖していきます。デンプンや糖分を多く含む食品を好む傾向があります。
「冷蔵庫に入れておけば大丈夫」という声も聞こえてきそうですが、そうではありません。一般的に、カビが生育するのに必要な温度は10~30℃で、特に生育に最適な温度帯は20~25℃。しかし、10℃以下でもカビが生えることがあり、冷蔵庫に入れた食品も安心できません。
表面にカビが見えるモチは全体が蝕まれている
モチのカビにも人体に有害なものがあります。おばあちゃんから「カビの生えた部分を取り除けば大丈夫」と教わり、食べた経験はありませんか?実は、これは危険な行為なのです。
モチの表面に付いたカビは見分けることができて、取り除くことも可能です。しかし、表面だけでなく、食品中にもカビが増殖していて、人の目で見分けることができません。表面にカビのあるモチは、中身もカビに蝕まれていると考えるべきなのです。
カビの生えた食品は思い切って捨てること!
カビには有益なものと有害なものがあると話しましたが、食品に生えたカビが人体に有害なものか、無害なものかは、家庭で判断することはできません。
さらに、やっかいなのは、付着したカビがカビ毒を作り出した場合、カビ毒は焼いたり、煮たりなど加熱調理を施しても、無毒化できないことです。カビ毒は耐熱性を持ち、調理によって毒素の量や強さを低減できません。
ミカンや他の果物や野菜ついても同じです。カビが生えた部分だけを取り除いても安心できません。
健康被害のリスクがあることから、カビが生えたものは口にしないようにしましょう。もったいないと思うかもしれませんが、思い切って捨てることが基本です。
家庭内で注意すべきこと
では、食品にカビが生えないようにするために、家庭で注意すべき点は何でしょうか。
内閣府の食品安全委員会によると、「清潔に保つ」「低温」「乾燥」「密閉」が基本となります。しかし、前述したとおり、冷蔵庫内でもカビが生えることがあり、確実ではないと注意を呼びかけています。
カビが作り出すカビ毒は、家庭で行う調理によって分解されません。ごくわずかな量でも摂取すると、健康に悪影響を与えます。このため、カビが生えた食品を見つけた場合は、勝手に判断せず、思い切って捨てることが、あなたや家族の健康を守る上で大切です。
カビが生えた食品を食べても、すぐに健康被害が出ないことが多いため、「食べても大丈夫」と誤解する方も少なくないようですが、長い間、何度も摂り続けた場合には、健康に悪影響を及ぼすことがわかっています。健康被害を未然に防止する上で、食品のカビには十分に注意してくださいね。