健康に関する情報が次々と登場していますが、ここ最近、「レジスタントスターチ」という言葉を耳にすることが増えました。レジスタントスターチはご飯やパンにも多く含まれる成分ですが、健康のために重要であることがわかってきました。これまで「ダイエットの敵」「健康に良くない」とされてきた主食に対する考え方が、大きく変わろうとしています。
レジスタントスターチとは?
レジスタントスターチとは、「レジスタント(消化しにくい)+スターチ(デンプン)」のこと。日本語で「難消化性デンプン」と呼ばれています。
ご飯やパンの主成分はデンプンです。私たちは、主食から多くのデンプンを摂取しているわけですね。小学校の授業で、植物は日光を浴びて光合成を行い、デンプンをつくると習ったことを覚えているでしょうか。
デンプンは、砂糖の仲間であるブドウ糖(グルコース)がたくさんつながってできています。デンプンは口に入った後、細かく分解されて、小腸でブドウ糖となり、体内へ吸収されます。
これまで、デンプンは分解され、最終的に小腸からすべて吸収されて、私たちが活動するためのエネルギーとして利用されると考えられてきました。
しかし、デンプンのなかには、小腸でも完全に消化しきれないものもあることが、近年の研究で明らかになってきました。つまり、小腸で吸収されずに、大腸まで届くデンプンがあるわけです。これがレジスタントスターチです。
レジスタントスターチには4種類のタイプがある
レジスタントスターチには、いくつかのタイプがあることもわかってきました。基本的に4つのタイプに分かれ、それぞれ性質も違います。
RS1(RS=レジスタントスターチの略)は、雑穀などのように硬い外皮で覆われているために、消化酵素が届かないタイプのデンプン。全粒粉や加工度が低い穀類などがその代表例です。
RS2は、消化されにくい粒子のタイプのデンプン。例えば、アミロースの含有量が多いデンプンがこれに該当します。未熟なバナナや生のジャガイモなどにも含まれています。
RS3は、いったん加熱処理した後に、冷やして保存することで、一部が再結晶したタイプのデンプン。冷やすことによって、消化されにくい構造となります。冷えたご飯、春雨などに豊富に含まれています。こうしたデンプンを「老化デンプン」と呼びます。
RS4は、酵素などを用いて化学処理を施したタイプのデンプン。パンやスナック菓子などに含まれています。
水溶性食物繊維と不溶性食物繊維のメリットを兼ね備えた
レジスタントスターチ
レジスタントスターチが話題となっているのは、私たちの健康に大いに貢献してくれるからです。レジスタントスターチには、食物繊維と非常によく似た作用があります。しかも、水溶性食物繊維と不溶性食物繊維の両方のメリットを享受できることから、注目を集めています。
食物繊維は、大きく水溶性食物繊維と不溶性食物繊維に区分できます。
水溶性食物繊維は水に溶けやすく、体内でジェル状になります。水溶性食物繊維を多く含む食品として、ワカメ・コンブなどの海藻類、コンニャクイモ・サトイモといったイモ類、大麦やオーツ麦、リンゴをはじめとする果物などがあります。
水溶性食物繊維は、粘着性があり、体内をゆっくりとしたスピードで移動します。このため、空腹感を満たし、食べすぎを防止します。また、さまざまな機能性も報告されています。
一方、不溶性食物繊維は、玄米や大豆、キノコ、エビ・カニの殻などに多く含まれています。水に溶けずに、水分などを吸収する性質があります。不溶性食物繊維についても、健康への効果が報告されています。
小腸で消化されずに大腸で酪酸や酢酸などに変化
レジスタントスターチに話を戻しましょう。レジスタントスターチは小腸で消化されずに、大腸まで届きます。大腸で腸内細菌の働きによって、酪酸や酢酸などの物質に変わります。レジスタントスターチは、前述した水溶性食物繊維と不溶性食物繊維のそれぞれが持つ機能を併せ持っています。
健康を維持する上で、食物繊維の積極的な摂取を心がけている方も多いと思われますが、実はそれ以上に、冷えたご飯やパンなどに含まれるレジスタントスターチが、私たちの健康に貢献している可能性があるわけですね。
「主食はダイエットの敵」という考え方の大転換を!
「ご飯やパンは体に良くない」「主食はダイエットの敵」と考えてきた方も多いのではないでしょうか。しかし、冷えたご飯には「老化デンプン」と呼ばれるレジスタントスターチが多く含まれています。パスタや全粒粉なども同様です。
私たちは、これまでの考え方を大きく転換させなければならないかもしれません。もちろん食べ過ぎは禁物ですが、冷えたご飯を利用したり、パンやパスタを取り入れたりして、主食類をしっかりと食べることの重要性を考え直してみませんか?