意外と知らない「酸化防止剤」「増粘安定剤」「乳化剤」の役割と用途先

食品添加物と言えば、「着色料」や「保存料」をすぐにイメージしますが、ほかにも、私たちが日常的に口にするさまざまな食品で使用されるものがあります。その代表である「酸化防止剤」「増粘安定剤」「乳化剤」について解説します。

酸化防止剤は健康被害防止でも重要

酸化防止剤は、空気中の酸素によって生じる食品の酸化を防止するために使用されます。酸化は衛生面の問題に加えて、食品によっては退色や栄養価の低下の原因にもなります。

ワインの商品ラベルには「酸化防止剤(亜硫酸塩)」と記載されています。原料のブドウには雑菌が付いているので、フィルターなどで雑菌を取り除き、酸化防止剤によっても繁殖を抑制するわけです。

油脂製品については、安全面で酸化防止剤は重要な役割を果たしています。長期間にわたって保存すると、酸化によって風味が劣化するだけでなく、酸化で生じた過酸化物による消化器障害を引き起こすこともあります。

酸化防止剤の代表は「ビタミンC」

酸化防止剤で代表的なのが「ビタミンC(L-アスコルビン酸)」。ビタミンCは水に溶けやすく、果実加工品・漬物・総菜・パンなどの褐変や風味の劣化を防ぎます。

「ビタミンE(トコフェロール)」も代表的な酸化防止剤の1つで、油脂やバター、菓子などの酸化を防ぎます。ほかにも、「カテキン」「エリソルビン酸」「ジブチルヒドロキシトルエン」などがあります。

増粘安定剤は食品の粘り気を出す

増粘安定剤は、水に溶解または分散して、食品の粘り気を出したり、固めたりするために用います。使い方によって「増粘剤」「ゲル化剤」「安定剤」に分かれます。

増粘安定剤の代表的なものに「キサンタンガム」「カラギナン」「グァーガム」「ペクチン」があります。

「キサンタンガム」はデンプンを発酵して製造されます。「カラギナン」はスギノリ科アイリッシュモス、ミリン科キリンサイなどの海藻から抽出されます。

「グァーガム」はマメ科植物のグァーの実から、「ペクチン」は柑橘類やリンゴの果皮から得られます。

ほかにも、食物繊維の成分であるセルロールを処理した「カルボキシメチルセルロースナトリウム」、コンブやワカメに含まれる多糖類の「アルギン酸」などがあります。

増粘安定剤の用途はゼリー・ジャム・グミ・レトルト食品などと幅広い

増粘安定剤は幅広い食品に使用されます。カラギナンやペクチンは、ゼリー・ジャム・アイスクリームなど。キサンタンガムはドレッシング・タレ類・佃煮・レトルト食品など。グァーガムもドレッシングやソースなどに使われます。

また、麺類やパンといった小麦粉製品、マシュマロやグミをはじめとした菓子類、さらにはヨーグルト、介護用食品、畜肉製品などでも増粘安定剤は利用されています。

乳化剤により、水と油も混じり合う

乳化剤は、水と油のように本来ならば混じり合わない物質の境界面で作用し、混ざるようにする物質です。

例えば、マヨネーズの原材料は卵・サラダ油・酢ですよね。これらが交じり合うのは、卵黄に含まれるレシチンが乳化剤の作用を持つためです。

食品に含まれる成分の境界面の性質を変える働きがあることから、ケーキの起泡剤としても利用されます。また、焼き菓子の離型剤、デンプンの食感劣化を防ぐ老化防止剤といった目的でも用いられます。

乳化剤には「レシチン」「グリセリン脂肪酸エステル」などがある

乳化剤には、「レシチン」「サポニン」「グリセリン脂肪酸エステル」「ショ糖脂肪酸エステル」などがあります。

「レシチン」は卵黄から得られる卵黄レシチンと、アブラナや大豆の種子から得られる植物レシチンに分かれます。「サポニン」はエンジュの花、キラヤの樹皮、大豆の種子などから抽出されます。

「グリセリン脂肪酸エステル」は、油脂から得られる脂肪酸とグリセリンを反応させて製造。乳化剤のほか、起泡剤や豆腐用消泡剤の用途でも使用されます。

乳化剤の用途先はマーガリンからカレーのルーまで

乳化剤も幅広い食品に用いられます。「レシチン」はアイスクリーム・マーガリン・菓子類など。「サポニン」は清涼飲料水や乳製品など。「グリセリン脂肪酸エステル」もマーガリン・乳製品・乳飲料など多くの食品で利用されています。

また、「ショ糖脂肪酸エステル」はホイップクリームやケーキ、カレーのルーなどに用いられます。

酸化防止剤などの安全性は?

酸化防止剤、増粘安定剤、乳化剤の安全性は、どう考えればよいのでしょうか。

結論から言えば、国の機関で専門家が安全性を十分に評価していますので、これらを使用した加工食品についても安心して口にできます。

食品添加物の使用量については、食品衛生法の下で定められています。また、酸化防止剤などでは、必要に応じて「1日摂取許容量(ADI)」が定められています。

ADIとは、その食品添加物を生涯にわたって毎日摂取し続けても、健康への悪影響が出ないと推定される1日あたりの摂取量。それぞれの食品について添加できる量が定められているため、通常の食生活でADIを超えることはありません。

食品添加物を避けたい方は商品パッケージをよく読んで選ぶこと

さまざまな食品で使用される酸化防止剤、増粘安定剤、乳化剤。健康への影響という点では、心配する必要はありません。

しかし、食品添加物を避けたい方は商品パッケージをよく読んで、どの食品添加物が不使用かを確認してから商品を選びましょう。

【食品添加物の主な種類と用途】

甘味料食品に甘みを与えるキシリトール、アスパルテーム
着色料食品を着色し、色調を調整するクチナシ黄色素、コチニール色素
保存料カビや細菌などの発育を抑制し、食
品の保存性を向上させる
ソルビン酸、しらこたん白抽出物
増粘剤、安定剤、
ゲル化剤
食品に滑らかな感じや粘り気を与え
、安定性を向上させる
ペクチン、カルボキシメチルセルロ
ースナトリウム
酸化防止剤油脂などの酸化を防ぎ、保存性を良
くする
二酸化硫黄、ビタミンC
色剤ハム・ソーセージなどの色調を改善
する
亜硝酸ナトリウム、硝酸ナトリウム
漂白剤食品を漂白し、白く、きれいにする亜硫酸ナトリウム、次亜硫酸ナトリ
ウム
防かび剤輸入柑橘類などのかびの発生を防止
する
オルトフェニルフェノール
香料食品に香りを付けるオレンジ香料、バニリン
酸味料食品に酸味を与えるクエン酸、乳酸
調味料食品にうま味などを与え、味を調え
L-グルタミン酸ナトリウム
乳化剤水と油を均一に混ぜ合わせる植物レシチン
pH 調整剤食品の pH を調整し、品質を良くす
DL-リンゴ酸、乳酸ナトリウム
膨張剤ケーキなどをふっくらさせ、ソフト
にする
炭酸水素ナトリウム、焼ミョウバン

出典:消費者庁「食品添加物表示に関するマメ知識」

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フリーライター。食品、サプリメント、医薬品、医療、通販などの分野を中心に取材・執筆活動。玉石混交の情報が氾濫する中で、正しい情報の発信を目指します。千葉ロッテマリーンズを応援。仕事で疲れた時は、MISIAさんの歌が一番の癒し。