機能性表示食品制度が改正され、2024 年 9 月 1 日と 2025 年 4 月 1 日の 2 段階に分
けて施行されます。今回の改正は、紅麹原料を配合した製品による健康被害の発生を
受けたもの。容器包装上の表示内容が従来よりも詳細になるなど、私たち利用者に
とってもメリットのある改正となります。一方、販売事業者(届出者)にとっては、さ
まざまな順守事項が盛り込まれ、厳しい対応が求められます。
紅麹原料の問題を受けて制度を改正
機能性表示食品制度は、事業者が消費者庁へ届け出れば、「体脂肪を減らすことが報
告されています」「食後の血中中性脂肪の上昇を穏やかにする」といった効果を表示
できる仕組み(届出制)。これまでに 8500 件を超える届出が行われ、大きな市場を
形成しています。
ところが、2024 年 3 月に、紅麹原料を配合した機能性表示食品による健康被害発生
が発覚。これを受けて、政府は同制度の抜本的な改正を行いました。
届出制は維持されるのですが、従来のガイドラインによる制度運用をやめて、法令化
に基づく運用へと大きく舵を切りました。この背景として、ガイドラインには法的拘
束力がなく、安全性や機能性の根拠に問題があるとわかっても、国は強い姿勢で対応
できなかったことがあります。
今回の改正により、ガイドラインで定めるルールを食品表示法の食品表示基準(内閣
府令)と告示に移行しました。機能性表示食品の要件を法令化したことで、違反した
届出者は機能性表示食品として販売できなくなります。
健康被害情報の報告を義務化
2024 年 9 月 1 日施行の新たな対策には、
- 健康被害情報の収集・報告の義務化
- GMP(適正製造規範)による製造管理の要件化
- 容器包装上の表示方法の見直し――があります。
健康被害情報の収集・報告の義務化は、施行日(9 月 1 日)からスタート。これは、紅麹原料の問題で、初めて健康被害情報を把握してから行政へ報告するまでに、2 カ月も要したことが問題視されたことを受けて、導入されました。国へ報告するのは、医師の診断を受けた健康被害情報であり、因果関係が不明な場合も含みます。販売事業者には、都道府県知事等(保健所)と消費者庁へ報告する義務があります。違反すると、厚生労働省は食品衛生法による営業禁止・停止を命じることが可能です。消費者庁は食品表示法により機能性表示をやめさせることができます。
サプリメントを対象に製造管理を厳格化
GMP による製造管理の義務化は、2 年間の経過措置期間を設け、2026 年 9 月 1 日か
ら完全施行となります。GMP とは、原料の受け入れから製造、出荷までの全工程で、
適正な製造・品質管理を要求する取り組みで、安心・安全な製品を製造するために工
場が守るべき基準となります。
GMP の義務化は、サプリメント形状の機能性表示食品が対象。実際に GMP による製
造管理を行うのは製造工場ですが、届出者は製造工場で GMP による管理が行われてい
ることを確認しなければなりません。順守されない場合、消費者庁は食品表示法に基
づく指示・命令を出します。
さらに、行政機関が製造工場に立ち入り検査を行い、GMP による管理が行われている
かどうかを確認します。
容器包装上の表示ルールを改善
私たちが商品を選ぶ際に、頼りにするのが容器包装上の表示ですよね。この表示方法
も見直され、2024 年 9 月 1 日に施行。2 年間の経過措置期間を経て、26 年 9 月 1 日
から完全施行となります。
従来、「コレステロールを下げる」「内臓脂肪を減らす」といった言い切り型の表示
が主流となっていました。これは、消費者庁へ届け出た表示内容の一部を切り取った
ものです。
しかし、今回の改正によって、機能性を研究レビュー(論文を収集して総合判断する
手法)によって評価した場合、届出表示の一部を切り取る表示方法が禁止されます。
完全施行後には、「本品には〇〇(成分名)が含まれます。〇〇には△△(機能性)
ことが報告されています」と表示しなければなりません。
また、機能性表示食品であることが容易に伝わるように、「機能性表示食品」の文字
を容器包装の主要面の上部に、線で囲んで表示することも義務づけました。そのすぐ
近くに「届出番号」を表示することも必須となります。
あなたが購入しようとする製品の詳細を知りたい場合には、消費者庁ウエブサイトの
検索画面から届出番号を記入すれば、詳細情報を閲覧できます。
来年 4 月から更新制を導入
次に、2025 年 4 月 1 日から施行される対策で、特に重要なものに「更新制」の導入
があります。
これは、GMP による製造管理、健康被害情報の収集・報告などの順守状況について、
届出者が自己点検し、その結果を消費者庁へ報告するという取り組みです。年に 1 回
報告することを義務づけ、怠ると機能性表示食品として販売することができなくなり
ます。
また、新規の機能性関与成分への対応も注目されています。消費者庁では、届出実績
のない新たな機能性関与成分については慎重に安全性を確認する考えです。このため、
専門家の意見を聞く仕組みを導入します。
確認には時間がかかることから、従来の販売 60 日前の届出を販売 120 日前とする特
例を設けました。
消費者庁ウエブサイトで詳細情報の確認を!
今回の改正は多岐にわたり、事業者にとってハードルの高い内容となります。一方、
私たち利用者にとっては、従来よりも信頼できる制度となり、メリットは大きいと言
えます。
機能性表示食品を利用する場合は、消費者庁ウエブサイトで製品情報を確認して判断
するようにしましょう。