低カロリーでありながら、砂糖よりも甘味が強いことから、さまざまな加工食品に使用されている甘味料「アスパルテーム」について、2023年7月14日に世界保健機関(WHO)が「発がん性の可能性がある」と発表しました。アスパルテームに対し、私たちはどう向き合えばよいのでしょうか?
アスパルテームとは?

アスパルテームは、1983年に厚生労働省(当時は厚生省)が食品添加物として認可。大手食品メーカーなどが卓上用甘味料として発売しています。
アスパルテームは砂糖の約200倍の甘味があるとされ、カロリーもわずかしかありません。
そうした特徴を“売り”に、用途先はさまざまな加工食品に広がっています。日本では主にアイスクリーム・ヨーグルトをはじめとしたデザート類や菓子類、チューンガム、ダイエット食品などに使用されています。
アスパルテームは発がん性の根拠で3番目の位置づけ
アスパルテームの発がん性を発表したのは、世界保健機関(WHO)の傘下機関である国際がん研究機関。アスパルテームの発がん性を「2B」というランクに分類しました。国際がん研究機関がアスパルテームを評価したのは初めてです。
国際がん研究機関による発がん性の分類は、根拠に基づいて4段階に分かれます。もっとも強い根拠があるのが「1(ヒトに対して発がん性がある)」で、「人で発がん性の十分な根拠がある場合」と規定しています。例えば、アルコール飲料やタバコ、アスベスト、カドミウムなどがあります。
2番目は「2A(おそらくヒトに対して発がん性がある)」。(1)ヒトで発がん性の限定的な証拠がある、(2)実験動で発がん性の十分な根拠がある、(3)発がん性物質としての主要な特性を示す有力な証拠がある――の少なくとも2つに該当するケースです。例えば、ポテトチップスやフライドポテトに含まれるアクリルアミド、65℃以上のホットドリンクなどがあります。
3番目は「2B(人に対して発がん性がある可能性がある)」で、前述した「2A」の3つの要件のうち、1つが該当するケースです。この分類に入るものに、ガソリン、漬物、わらびなどがあります。今回、アスパルテームはこの「2B」に分類されました。
4番目は「3(人に対する発がん性について分類できない)」で、上位3分類のどれにも該当しないケースです。これには、カフェインや茶などがあります。
この4分類は、発がん性の強さを示しているものではなく、発がん性の根拠のレベルを示したものです。
許容1日摂取量(ADI)は変更せず
アスパルテームの安全性について国際がん研究機関では、試験動物や人のデータも含めて評価しました。ノンシュガー甘味料を用いた飲料と人の肝臓がんに関する調査や、マウス・ラットを用いた試験などです。
ただし、発がん性などの確実な証拠がなかったことや、アスパルテームは摂取後に消化管内で分解され、そのまま全身の循環に入らないことから、許容1日摂取量(ADI、0~40mg/kg<体重>)を変更する理由はないとしています。
許容1日摂取量とは、ある物質について、人が生涯にわたって毎日摂取し続けたとしても、健康に悪影響が出ないと考えられる量のこと。FAO/WHO合同食品添加物専門家会議では、アスパルテームの1日あたりのADIを体重1㎏当たり40mgに設定しています。
厚生労働省の調査(2022年度)によると、生産量統計調査による推計値結果として、日本人のアスパルテームの摂取量は1日あたり6.58 mgと推計。ADI比で見ると0.3%で、ADIを大きく下回っています。
今後の研究で発がん性についてより明確に
今回のWHOが示した「発がん性の可能性がある」という見解に対し、私たちはどう受け止めればよいのでしょうか?
まず、これまでにデザートや菓子などに含まれるアスパルテームを摂取してきたことについては、前述したとおり、ほとんどの方にとってADIと比べてわずかな量にすぎませんので、心配し過ぎる必要はないでしょう。
現時点では摂取量の面で、それほど心配しなくてもよいと考えられますが、今後の研究によっては状況が変わってくる可能性もあります。
今回の「2B」への分類は、「ヒトに対して発がん性がある可能性がある」というものであり、明確に判断するためのデータが不足しているわけです。このため、今後の研究によっては、発がん性の可能性がより明確になることも否定できません。
過剰反応も軽視もせず、冷静に判断

日本国内で使用される食品添加物については、国の厳しい審査を受けていますので、偏食をしない限り、健康への悪影響については心配しすぎる必要はありません。
その一方で、現時点ではデータ不足により解明されていない部分もあり、「アスパルテームは絶対に安全」という添加物業界や御用学者の主張を鵜呑みにすることも禁物です。
今回のWHOの発表に対し、過剰反応することも軽視することもせずに、まずは冷静に考えて行動することが大切です。