健康食品や化粧品の誇大な効果をうたったインターネット広告や、詐欺的な定期購入契約などによって、消費者に被害を及ぼす商法が横行しています。そうした悪質な行為を止めさせることができる「適格消費者団体」が、全国各地に誕生しています。
悪質商法のトラブルに遭ったら…
「サプリメントのネット広告に『体重が1カ月で5㎏落ちる』と宣伝していたが、そのような効果が出ない」、「化粧品の定期購入コースを注文したが、販売サイトに『いつでも解約可能』と説明していたのに応じてもらえない」といった消費者トラブルが後を絶ちません。
もし、あなたがネットショッピングなどでトラブルに遭った場合、どうすればよいのでしょうか?
あなた自身が直接、悪質事業者と掛け合って解決する方法もありますが、上手く行くことは稀です。
そこで、まずは最寄りの消費生活センターに相談することをおススメします。わざわざ電話番号を調べる必要はなく、消費者ホットライン「188」番にかけるだけで、身近の消費生活センターにつないでくれます。困ったら「188」へ電話することを思い出してくださいね。
消費生活センターに相談してアドバイスをもらい、実践してみましょう。上手く行かない場合には、事業者との間に入ってもらうことも可能です。
適格消費者団体とは?
トラブルに遭った場合、消費生活センターに相談することが基本となりますが、同時に、「適格消費者団体」へも情報提供することをおススメします。と言っても、適格消費者団体という言葉を初めて耳にする方も多いのではないでしょうか?
適格消費者団体は通常の消費者団体と違って、不特定多数の消費者の利益を守るために、不当(違法)な表示や勧誘を行う事業者に対し、差止(やめさせること)請求ができる権限が与えられています。
所管しているのは消費者庁で、内閣総理大臣が認定します。2023年8月15日時点で全国に25団体が誕生しています。
不特定多数の消費者に代わって違法行為をストップ!

先ほど、あなたがトラブルに遭った場合、消費生活センターに相談するとともに、適格消費者団体へも情報提供することを推奨しましたが、これは次のような理由からです。
例えば、あなたが悪質なネット販売事業者から健康食品を購入して、トラブルに遭ったとします。間違いなく、あなたと同じような被害に遭った方は多数いるはずです。仮にあなた自身は運よく解決できたとしても、ほかの多くの方は泣き寝入りする可能性があります。
悪質な事業者は、1人あたりの被害額が数万円と少額であるため、消費者が弁護士を雇ったり、訴訟したりしないことを見越して、違法な広告や勧誘を続けるわけです。
そこで、トラブルに遭った1人ひとりが適格消費者団体へも情報提供することで、適格消費者団体が多数の消費者に代わって、事業者に対し、不当な行為を止めるように申し入れることになります。
適格消費者団体の所在地・連絡先は消費者庁のホームページに掲載されています。あなたが暮す地域から最も近くにある団体を確認しておきましょう。
(https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_system/collective_litigation_system/about_qualified_consumer_organization/list/)
消費者に代わって適格消費者団体や特定適格消費者団体が訴訟
適格消費者団体では、「消費者契約法」「景品表示法」「特定商取引法」「食品表示法」に違反する行為のうち、「不当な勧誘」「不当な契約条項」「不当な表示」などに対し、差止請求を行うことができます。
これまでに実施された差止請求は、25団体の合計で約950件に上ります。行政の取り締まりだけでは多数の事案をカバーできないことから、適格消費者団体の活動が期待されています。
1例を挙げると、健康飲料の広告で二日酔い防止効果をうたっていた販売事業者に対し、改善を申し入れ、広告を削除させたケースなどがあります。
しかし、悪質な事業者の中には、適格消費者団体が改善を申し入れても対応しないことも少なくありません。その場合、適格消費者団体では、次のステップとして訴訟することができます。健康食品の行き過ぎた広告をめぐって、訴訟に発展した事例も複数あります。
また、被害額が少額のため、ほとんどの消費者は弁護士を雇ったり、訴訟したりすることに躊躇し、被害額を取り戻せずにいます。
そこで、差止請求を一歩進めて、金銭的な被害を回復(被害額を取り戻すこと)するために、「特定適格消費者団体」が被害に遭った多数の消費者に代わって訴訟する制度も整備されています。
特定適格消費者団体は、適格消費者団体のうち被害回復を行うための要件を備えた団体で、2023年8月15日現在で4団体が認定されています。
訴訟だけでなく、その一歩手前の申し入れ活動によって、行き過ぎた効果をうたっていた健康食品の販売事業者が、購入者へ返金した事例も報告されています。
もしもの時には消費生活センターへの相談と適格消費者団体への情報提供を!

ネット通販に参入する販売事業者が増えていますが、残念ながら、その中には悪質な事業者も存在します。
もし、トラブルに巻き込まれた場合には「188」に電話し、消費生活センターに相談するようにしましょう。その時、あなたと同じ境遇の方がほかにも多数いると考え、適格消費者団体へも情報提供することを思い出してくださいね。