取引DPF消費者保護法をご存じですか?オンラインモールでトラブルに遭ったら活用を!

日常の買い物で、オンラインモールなどの取引デジタルプラットフォーム(DPF)を利用する消費者が増えています。とても便利な半面、「偽物だった」「解約できない」といったトラブルも。モールの出店事業者が悪質な場合には連絡がつがず、これまで購入者は泣き寝入りするしかありませんでした。そうした状況を改善するため、2022年5月1日に「取引デジタルプラットフォームを利用する消費者の利益の保護に関する法律」(取引DPF消費者保護法)が施行されました。この法律を知っていれば、泣き寝入りせずに済む可能性が出てきます。

出店事業者に連絡がつかない?

オンラインモールやオークションサイトといったDPFへの出店はハードルが低く、事業を開始したばかりの企業も簡単に出店できます。このため、出店事業者数が急速に増加してきましたが、悪質事業者が紛れ込むことも少なくないようです。

大手オンラインモールの出店事業者から、有名ブランドのバッグや財布を割安で購入したものの、届いた商品は偽物だったという被害がたびたび報じられています。また、商品の品質や返品などで苦情を申し入れるために、オンラインモールに記載されていた出店事業者の電話番号にかけたが、つながらないというケースも珍しくありません。

DPF運営事業者は出店事業者にネット販売を行う「場」を貸しているだけであり、トラブルが発生しても、購入者は自ら出店事業者と掛け合って解決しなければなりません。

また、「誰もが知っている有名オンラインモールだから安心できる」と誤解している方もいます。実際に被害に遭って、DPF運営事業者が何もしてくれないことに初めて気づくというのが現状です。

出店事業者と連絡が取れる措置などを努力義務に位置づけ

悪質な出店事業者から消費者を保護するために、取引DPF消費者保護法が施行されました。オンラインモールやオークションサイトなどで発生する消費者トラブルの解決を促進するため、DPF運営事業者に対し、次の3点を努力義務として定めています。

・販売事業者と消費者との間の円滑な連絡を可能とする措置。

・販売条件などの表示について苦情の申し出を受けた場合、必要な調査などを実施。

・販売事業者に対し、必要に応じて身元確認のための情報提供を求める。

購入者がトラブルに遭った際に、オンラインモールの出店事業者に連絡が取れるようにするなどして迅速に解決するために、DPF運営事業者にも一定の役割を果たしてもらうことが狙いです。

DPF運営事業者には、出店事業者の連絡先を明記する「専用ページ」の設置や、記載された連絡手段が機能しているかどうかの定期的パトロールなどが求められています。

出店事業者である個々の通販企業では、オンラインモール内の自社ページに連絡先を明記するとともに、対応可能な日時も記載しておくことが望ましいとされています。

出店事業者に関する情報の開示請求権

オンラインモールで商品を購入したものの、品質に問題がある、記載されていた返品・解約条件が守られない、といったトラブルが多数報告されています。

しかし、購入者が出店事業者に損害賠償を求めようとしても、連絡先が不明、または出店事業者がアカウントを廃止して表示が見れないなど、手の施しようのないケースもあります。そうした場合、DPF運営事業者が保有する出店事業者の情報に頼るしか方法がありません。

そこで、取引DPF消費者保護法は、購入者が出店事業者に損賠賠償を求める場合に限り、DPF運営事業者に対して出店事業者に関する情報の開示を請求できる権利を消費者側に認めています。

開示請求権を行使するための要件は、債権額が「1万円を超える」こと。債権額には慰謝料や拡大損害も含まれます。開示される出店事業者の情報は、「氏名」「住所」「電話番号」「メールアドレス」など。

従来、泣き寝入りするしかなかったトラブルでも、DPF運営事業者に対して開示請求権を行使すれば、解決できる可能性も出てきます。

ただし、取引DPF消費者保護法は原則、消費者間で取引するフリーマーケットモールには適用されませんので、注意が必要です。少しややこしいのですが、フリーマーケットモールの出品者については、ビジネスとして転売する者(事実上の販売事業者)も紛れ込んでいることがあり、その場合に限り、同法が適用されます。

危険な商品は国が出品停止を要請

オンラインモールの出店事業者から、偽ブランド品や危険な商品を購入する事例が報告されています。海外製モバイルバッテリーが発火して火事になった事件や、高級ブランド「ルイ・ヴィトン」の模倣品の販売などがあります。

そうしたケースに迅速に対応するため、特定商取引法など他の法律で対応が困難な場合には、取引DPF消費者保護法によって国がDPF運営事業者に対し、出品停止を要請できるようにしました。

対象となるのは、危険な商品、偽ブランド品、表示内容が実際と異なる資格サービスなどです。

有名オンラインモールも安心できない!

有名なオンラインモールだから安心とは言えません。どのオンラインモールであっても、実際に購入する先は出店事業者です。初めて耳にする出店事業者の場合は、連絡先が明記されているか、その連絡先が機能しているかなどの確認が必要です。

面倒がらずに安心できる通販事業者を見つけて、ネットショッピングを楽しんでくださいね。

ABOUTこの記事をかいた人

フリーライター。食品、サプリメント、医薬品、医療、通販などの分野を中心に取材・執筆活動。玉石混交の情報が氾濫する中で、正しい情報の発信を目指します。千葉ロッテマリーンズを応援。仕事で疲れた時は、MISIAさんの歌が一番の癒し。