秋は食中毒の季節…防止するために注意すべきこととは?

食中毒が起こりやすい季節は?「食品が腐りやすい夏場でしょ」と思う方も多いのではないでしょうか。意外かもしれませんが、1年間を通してもっとも多発するのは秋。食中毒を防ぐために、どのような点に注意すべきかを見ていきましょう。

1年で食中毒が最も多いのは10月

厚生労働省や農林水産省の資料を調べてみました。2018年~22年の5年間の平均を見ると、食中毒の発生件数が最も多い月は10月で、100件超となっています。年によって異なりますが、10月に大幅に増加する傾向があり、次に多いのが3月、6月の順です。

一方、夏場は食品が腐りやすく、食中毒が発生しやすいと思うかもしれませんが、8月は1月の次に少ない月となっています。

2018年~22年(5年間平均)の食中毒の原因を見ると、最も多いのが「寄生虫」で、全体の43.5%を占めます。次に「細菌」(32.5%)、「ウイルス」(14.5%)、「自然毒」(6.5%)の順で続きます。

年間700件以上の食中毒事件が発生

食中毒による被害の状況はどうでしょうか。ニュース報道でしばしば耳にするように、下痢などで済むケースもありますが、最悪の場合は死に至ります。

食中毒事件の件数は2020年が887件、21年が717件、22年が962件。年によって変動がありますが、700件~1,400件で推移しています。患者数は2020年が1万4,613件人、21年が1万1,080人、22年が6,856人。死者数はそれぞれ3人、2人、5人でした。

秋に増えるカンピロバクターによる食中毒

秋に食中毒が増加する背景として、いくつかの点を挙げることができます。行楽シーズンを迎えると、キャンプやバーベキューを行う人が増え、運動会やお祭りも各地で実施されます。そうした場で食事する機会が増えますが、食材・調理の衛生管理に問題があれば、食中毒が発生しやすくなります。

また、原因別で見ると、秋には「カンピロバクター」という細菌による食中毒が増加します。カンピロバクターは鶏や牛をはじめ、ペットや野鳥など多くの動物が保菌しています。乾燥に弱く、加熱によって死滅するという特性がありますが、その一方で、少量の菌でも人に感染することが知られています。

カンピロバクターが原因の食中毒は、7割以上が「飲食店」で発生。そのほか、「学校」「家庭」「販売店」などがあります。

キノコ毒やアニサキスにも注意

秋はアウトドアのシーズンで、散策でキノコや野草を採取する方も多いと思われます。しかし、持ち帰ったキノコを食べて食中毒を起こすケースもあり、キノコによる食中毒の多くが秋に集中しています。

秋には「寄生虫」による食中毒も多発します。その代表的なものが「アニサキス」。魚介類の中には、アニサキスの幼虫が寄生していることがあります。

主なものは、サバ・サンマ・アジ・カツオ・サケなど。刺身などで、魚に含まれるアニサキスを生きたまま食した場合、食中毒の原因となります。特にサンマやカツオなどは秋がシーズンのため、アニサキスによる食中毒事件数も10月頃にピークを迎えます。

晩秋の11月頃になると、「ノロウイルス」による食中毒が増えてきます。非加熱で食する生牡蠣(かき)などには、十分に注意する必要があります。症状として、嘔吐や激しい下痢、腹痛などがあり、幼児や高齢者などでは重症化することがあります。

防止には十分な加熱を

では、食中毒を防ぐために、どのような点に注意すべきでしょうか?

秋はキャンプやバーベキューを楽しむ機会が増えますが、飲食に使用する水は水道水や市販の飲料水を利用し、川の水などは使わないようにしてください。自宅から食材を運ぶ際にはクーラーボックスを使用し、肉や魚はビニール袋に入れてほかの食材に触れないようにしましょう。

バーベキューなどでは、手洗いは当然として、肉類を焼く場合には中心まで火が通るようにしっかりと加熱しましょう。生の肉や魚に使う箸やトングをほかの食材に使用しないことも大切です。

ニュース報道で生肉を食べて食中毒が発生したという話を耳にしますが、日本では牛や豚のレバー、豚肉などを生食用として販売したり、店舗で提供したりすることは禁止されています。牛肉は、生食用でないものを生で食べないように注意しましょう。また、カンピロバクターが心配される鶏肉については、中心部までしっかりと加熱してから食べるように注意してくださいね。

弁当はおかずの汁気を切る

秋には運動会など弁当を持参するイベントが増えますが、弁当づくりの際にも注意が必要です。おかずは中心部まで十分に加熱することが基本。卵焼きやゆで卵も半熟ではなく、完全に固まるまで加熱します。ハムやかまぼこも、できるだけ加熱してから弁当箱に詰めるようにしましょう。

水分が多いと細菌が増殖しやすいため、おかずの汁気をしっかりと切るようにしてください。ご飯やおかずが温かいうちに盛りつけると、蒸気がこもって水分となり、傷みの原因となります。このため、冷やしてから詰めることも大切です。

今回紹介したように、秋は食中毒が増えるシーズンです。バーベキューや弁当づくりなどの機会も増えますが、食中毒対策をしっかりと行ってくださいね。

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フリーライター。食品、サプリメント、医薬品、医療、通販などの分野を中心に取材・執筆活動。玉石混交の情報が氾濫する中で、正しい情報の発信を目指します。千葉ロッテマリーンズを応援。仕事で疲れた時は、MISIAさんの歌が一番の癒し。