池や沼に浮かんでいる菱形をした水草の「ヒシ」。健康に良いことから、日本では古くからヒシのお茶を飲んだり、ヒシの実を食したりしてきました。近年になり、ヒシに含まれる成分の研究が進み、ヒシエキスを配合したサプリメントが話題となっています。さらに、ヒシエキスを使用した化粧品の研究開発も進められています。ヒシとはどのような植物で、どのような成分を含んでいるのでしょうか?
ヒシとは?

ヒシは1年草の水草で、学名は「Trapa jeholensis」。ミソハギ科に属し、原産は在来種とされていますが、アジア・米国・ヨーロッパなど世界中に分布しています。
日本では全国各地の池や沼に自生し、北海道から本州、四国、九州にかけて広く見られます。水面に浮いた葉は、菱形または三角形をしていて、見分けることが容易です。
7月ごろから10月ごろにかけて花が咲き、秋に実を付けます。花は白または薄い紅色をしていて、小さくて可愛らしいです。実は硬い殻で覆われていて、幅は3cm~5cmほど。鋭いトゲがあり、古くは忍者が撒き菱として使ったのではないか、という言い伝えもあります。
開花・結実の後、種子は池や沼の底にある泥に溜まって、春になると発芽します。
古来より食品として利用
ヒシは古来より、食品などに利用されてきました。一説によると、縄文時代から利用されてきたとも言われています。実をゆでて食べたり、一部地域では味噌づくりに用いたりしてきました。
そして近年では、ヒシを使用したお茶やサプリメントが注目されています。これに加えて、ヒシに含まれる成分を活用した化粧品の研究開発も進められています。
健康や美容の面で注目を集める一方、ヒシが茂り過ぎると、ヒシの実によって貯水池の給水栓が詰まり、通水障害が生じるという事例も報告されています。
ヒシの実には栄養成分がたっぷり
近年、ヒシの実に含まれる栄養成分が注目されるようになりました。どのような成分を、どのくらい含んでいるのでしょうか?
文部科学省の食品成分データベースによると、ヒシ(生)の可食部100g当たりに含まれる成分の量は、たんぱく質が5.8g、炭水化物が40.6g、食物繊維が2.9g、熱量が183Kcal。
特にミネラル類がリッチで、カリウムが430mg、カルシウムが45mg、マグネシウムが84mg、リンが150mg含まれています。ビタミン類は葉酸が430㎍などです。
さらに、ヒシにはトラパインをはじめとしたポリフェノール類が豊富に含まれています。ヒシに含まれるポリフェノールの総称として、「ヒシポリフェノール」と呼ぶことがあります。
ヒシ茶の魅力

ヒシは、実を食べるだけでなく、お茶としても利用されてきました。ヒシ茶は、乾燥・焙煎を施したヒシの実をお湯で煮て抽出されます。
香ばしい風味が特長で、古くから各地域で飲まれてきました。多種類の栄養成分を摂取できる点が評価され、近年、ヒシ茶が話題に上ることが増えました。
あなたが自宅で楽しむ場合には、乾燥後に細かくカットされたヒシの実と水を用意しましょう。これで準備はOK。沸騰させたお湯に、ヒシの実を入れて弱火で煮だしていきます。麦茶のような香ばしい風味を楽しんでくださいね。
ヒシの実にはポリフェノールをはじめ、各種のミネラルなどが含まれることから、ヒシ茶の健康への寄与が期待されていますが、飲み過ぎには注意が必要です。
というのも、前述したとおり、特にカリウムを多く含むため、医師からカリウムの摂取を制限されている方は、必ず医師に相談した上で、利用可能かどうか判断しましょう。
ヒシエキス配合のサプリメントが人気
最近では、ヒシを原料に用いたサプリメントや健康食品が話題となっています。サプリメントにはヒシエキスが配合されています。ヒシエキスはヒシの果皮から抽出したもので、果皮に含まれる成分が濃縮されています。
国内では、ヒシポリフェノールによる健康や美容への効果について、さまざまな研究が進展してきました。そうした研究成果に基づいて、ヒシエキスを配合したサプリメントが登場。錠剤タイプが主流で、オンラインショッピングモールや専門ショップで販売されています。
このほか、クリームや石けんなどの化粧品の研究開発も進められているところです。近い将来、ヒシエキスを配合したサプリメントと化粧品による“内外美容”が流行するかもしれませんね。
カリウムを制限されている方は医師に相談を

ここまでお話してきたように、ヒシにはヒシポリフェノールをはじめ、各種のミネラル類が豊富に含まれています。
お茶として飲んだり、実を食したりすることで、これらの成分を摂取できます。効率的に摂取するには、サプリメントの利用も選択肢の1つとなります。
ただし、カリウムなどが多く含まれていることから、過剰に摂取しないように注意する必要があります。カリウムの摂取を制限されている方は、必ず医師に相談し、独自の判断で利用しないようにしてくださいね。