食品添加物「赤色3号」をめぐる騒動、その顛末とは?

米国政府が2025年1月15日、使用禁止を発表した食品添加物の「食用赤色3号」。日本でも一部の食品に使用されていることから不安が高まったものの、指定の取り消しや基準の変更は必要ないとの結論に至り、赤色3号をめぐる騒動は沈静化の方向にあります。米国でなぜ使用禁止となったのか、日本ではなぜ対応が不要と判断されたのかなど、これまでの経緯を整理しました。

菓子・漬物・カマボコなどに使用

赤色3号は、食品を赤色にするための着色料の1種。日本では1948年に食品添加物に指定されました。日本では菓子類をはじめ、漬物、カマボコなどに使用されています。

これに対し、国際的には砂糖漬け果実、ソース、食肉製品、ガムなどで使用が許可されています。EUでは缶詰・瓶詰の果実や野菜、カナダではリンゴジャム、パイナップルマーマレード、魚介加工品、オレンジジュース、アイスクリームなどへの使用が許可されています。

国際的組織のFAO/WHO食品添加物専門家会議が実施した安全性評価によると、赤色3号については、人が生涯にわたって毎日摂取を続けても、健康に悪影響が生じないとされる1日あたり摂取量(ADI:1日摂取許容量)を「0~0.1mg/㎏体重/日」としています。つまり、この数値よりも摂り過ぎなければ、健康被害が出ないという意味です。

このように、国際的に1日摂取許容量が設定されていて、国内外で使用されている赤色3号ですが、米国食品医薬品局(FDA)は2025年1月15日、赤色3号の食品への使用許可を取り消すと発表しました。

このニュースは世界中を駆けめぐり、国際的な話題となりました。日本でも、長年にわたって使用されてきた食品添加物であることから、マスコミ各社が大きく取り上げ、消費者間で不安が高まりました。

ラット試験で発がん性を確認

米国政府はなぜ、赤色3号の使用許可を取り消すことを決めたのでしょうか?その理由は、雄ラットの試験で、発がん性が認められたという報告があったからです。

使用許可の取り消しは、試験結果の報告を受けて、「デラニー条項」に基づく法的措置として実施されました。デラニー条項とは、米国連邦食品医薬品化粧品法に1958年に追加された条項で、「動物やヒトにがんを引き起こすと考えられる物質は食品添加物として使用できない」とされています。

このため、米国では2027年1月15日までの経過措置期間中に、赤色3号を使用している食品について切り替えが行われることになっています。

消費者庁の部会、基準変更は不要と判断

ラット試験で発がん性が認められたというニュースは、世界中を駆けめぐり、日本でも大きな関心事となっています。

このため、消費者庁の食品衛生基準審議会添加物部会は検討に乗り出し、2025年2月18日の会合で、「指定を取り消す、または使用基準を改正する必要はない」との見解を取りまとめました。

そうした結論に至った背景を見ていきましょう。まず、厚生労働省が所管する国立医薬品食品衛生研究所の専門家から、意見を聴取しました。その結果、「動物試験のように高濃度、高用量で、人が食用赤色3号を摂取することは想定できない」、「ラット試験で認められた甲状腺の発がんは、人では問題にならないと考えられる」といった意見が聞かれました。

もう少し詳しく見てみましょう。米国で報告されたラット試験は、2,464 mg/kg体重/日の赤色3号をラットに投与した場合に、甲状腺で発がんが認められたという内容です。これは、日本人の摂取量の推定値のうち、最も高い値と比べて400万倍以上に該当し、ラット試験のような高用量の赤色3号を摂取する可能性は人では考えられないとしています。

また、小売店頭から購入した食品を対象とする調査や、生産量の調査の結果を基に、日本人の赤色3号の1日摂取量を推計しました。その結果、許容1日摂取量(ADI)を大きく下回っていたことも、判断理由の1つとなりました。

米国では使用禁止となりますが、日本では現在のところ、これまでどおり使用することが可能となっています。

慎重姿勢は崩さず

このように、日本では赤色3号をめぐる騒動は沈静化の方向にありますが、消費者庁では引き続き、情報を収集していく方針です。今後の対応として、内閣府の食品安全委員会へ安全性評価を依頼する内容を検討するとしています。

食品添加物については、今後も新たな科学的知見が報告されると予想されます。私たちにとって大切なのは、パニックにならずに、信頼できる情報を基に冷静に判断することと言えるでしょう。

多くの場合は摂り過ぎなければ心配する必要もありません。一方、同じ食品を大量に食べるといった偏った食事を続けたりすると、健康上のリスクが生じる可能性があります。また、食品添加物によっては、将来的に使用基準を見直すケースも考えられるなど、現行の基準が必ずしも適切とも言い切れません。

このように、心配しすぎる必要もありませんが、安全性を過信することも問題です。食品添加物が気になる方はできるだけ使用していない商品を選び、それほど気にならない方は偏った食事を避けるようにしましょう。

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フリーライター。食品、サプリメント、医薬品、医療、通販などの分野を中心に取材・執筆活動。玉石混交の情報が氾濫する中で、正しい情報の発信を目指します。千葉ロッテマリーンズを応援。仕事で疲れた時は、MISIAさんの歌が一番の癒し。