「ウソの説明で健康食品を買わされた」「必要以上の量のサプリメントを買わされた」。こんな経験をしたことはありませんか?多くの方は「キャンセルしたい」と思うでしょう。その時に、あなたの味方になってくれるのが消費者契約法です。消費者契約法のポイントを解説します。
消費者契約法とは?
店舗やECサイトで物を買ったり、サービスを受けたりする際に、消費者と事業者の間で結ぶ契約を「消費者契約」といいます。あなたも日常生活で、たくさんの「消費者契約」を結んでいるわけですね。
商品やサービスに関する知識・情報は、消費者よりも事業者が圧倒的に豊富で、トラブルが発生した場合、交渉力に格差があります。消費者契約法はこうした状況に対応し、消費者を守るための法律です。
消費者契約法では、主に「契約の取り消し」と「不当な契約条項の無効」が規定されています。
健康食品の購入トラブルでも消費者の味方になってくれる!
健康食品の販売を例に、消費者契約法によってどのようなケースで契約を取り消せるのかを見ていきましょう。
1つ目は、ウソの説明によって購入させられたケース。例えば、販売業者が「ガンが治る」「アトピーが改善する」といったウソの話をして、健康食品を販売した場合、消費者は契約を取り消すことが可能です。
2つ目は、必要以上の量の健康食品を購入させられたケース。販売業者が過量であることを知りながら、消費者が摂取しきれない量の健康食品(例えば1年分や2年分など)を販売した場合、契約の取り消しを認めています。
3つ目は、訪問販売業者に帰ってほしいと告げても、勧誘を続けるケース。「取り込み中で帰ってほしいのですが」と頼んでも、「この健康食品は品質が良く…」と説明を続けて帰らないために仕方なく購入したような場合も、契約を取り消せます。
さまざまな悪質商法に対応
消費者契約法はあらゆる物・サービスが対象となり得ますので、契約を取り消せる案件は幅広いです。前述した3つのケース以外でも、次のような場合には後から契約を取り消すことができます。
・不利になることを説明しなかった
例えば、隣接する建物の建設計画があり、日照を阻害することを知りながら、それを説明せずに「日照良好」と宣伝してマンションを販売するケースなど。
・必ず値上がりすると説明
「将来、確実に値上がりしますよ」と話して、金融商品を販売する行為など。
・帰らせてくれない
例えば、着物やアクセサリーの販売店で商品説明を受けて、「もう帰ります」と言っても帰らせてくれないような場合。
このほかにも、「就職セミナー商法(不安を煽る)」「デート商法(好意の感情の不当な利用)」「霊感商法」なども、契約の取り消しの対象となります。
一方的な契約条項は「無効」!
消費者契約法のもう一つの柱は、不当な契約条項を無効とすることです。
よくあるのが「事業者は責任を負わない」とする条項です。ECサイトなどで、「当社が過失のあることを認めた場合に限り、当社は損害賠償責任を負うものとします」といった規約を見かけることがあります。また、スポーツジムで「当ジムで発生した傷害、盗難などの事故については一切責任を負いません」という規約も散見されます。
しかし、責任の有無や限度を事業者自ら決定する条項は、消費者契約法によって無効となります。
次に、「どのような理由であってもキャンセルできない」とする条項も無効です。例えば、ECサイトで「販売した商品については、いかなる理由があっても契約後のキャンセル・返品はできません」といった規約を設けている場合がありますが、これは無効となります。
また、「消費者の利益を一方的に害する」条項も無効としています。実際に問題となった例を挙げると、「掃除機の購入時に健康食品が同封されていて、消費者が健康食品を継続して購入しない旨を電話で伝えない限り、継続的に購入するとみなす条項」があります。当然、このような条項は無効です。
法改正でサブスクにも対応
次々と新たなタイプの悪質商法が発生するため、消費者契約法はたびたび改正されてきました。2022年5月、改正法案が国会で成立。サブスクリプション(定額制)について、「解除権の行使に必要な情報提供」を事業者の努力義務としました。
これは、解約手続きをしない限り自動更新されるサービスが多いのですが、解約しようとしても手続き方法が分からないという苦情に対応したものです。今後、事業者は解約に必要な手順の説明が求められます。
「188」へ相談、泣き寝入りに決別を!
景品表示法や特定商取引法は悪質業者を罰することができますが、消費者トラブルを解決してくれる身近な法律は消費者契約法です。
悪質商法の被害に遭っても、泣き寝入りせずに済むケースもあります。被害に遭ったら、まずは政府の消費者ホットライン「188」へ電話し、対処法を相談することをお勧めします。