ふるさと納税、2025年10月からポータルサイトでのポイント付与が禁止に

あなたもふるさと納税制度を利用して、故郷の自治体へ寄附したことがあるのではないでしょうか?まずは、自治体を支援したいという気持ちが大切ですが、ふるさと納税ポータルサイトに掲載されている返礼品の特産品や、ポイント付与も魅力的ですよね。ところが、サイト間の競争が過熱し、制度本来の趣旨がないがしろにされる傾向にあるため、制度改正により、2025年10月1日からポータルサイトでのポイント付与が禁止されます。また、返礼品をめぐる不祥事が相次ぐなど、ふるさと納税制度のあり方が問われています。

ふるさと納税とは?

ふるさと納税は、自分の住まいがある自治体に納める税金を故郷や応援したい自治体へ寄附することで、控除を受けられる制度です。寄附額のうち2,000円を超える額について、所得税と住民税から原則として全額が控除されます。

ふるさと納税の規模は拡大の一途をたどっています。総務省が発表した調査結果によると、受け入れ額は2024年度に過去最高の1兆2,728億円に達しました。自治体がふるさと納税の募集にかけた費用は総計5,901億円、このうちポータルサイト事業者に支払った額は1,656億円に上ります。募集費用の内訳は「返礼品の調達に係る費用」が25.2%、「事務に係る費用」が13.2%などです。

過当競争で制度の趣旨から逸脱

ふるさと納税を行う場合、「生まれ故郷を応援したい」「災害復興に取り組む自治体をサポートしたい」という気持ちが動機となることでしょう。これに加えて、返礼品の特産品に魅力を感じたり、ポータルサイトの利用で付与されるポイントに魅力を感じたりする方も多いと思われます。

一方、ポータルサイト間の競争激化を背景に、ポイントが多くもらえるポータルサイトの自治体に寄附するケースもあり、自治体を応援するという制度の趣旨を逸脱する傾向が顕著となってきました。また、自治体にとっては、ポイント付与の原資としてサイト手数料を負担しなければなりません。

そうした事情を踏まえ、総務省は2024年6月、ふるさと納税ポータルサイトでのポイント付与を禁止すると発表しました。自治体がポイントを付与するポータルサイトを通じて、寄附を集めることを禁止し、2025年10月1日からスタートします。

ポータルサイト事業者は反発も

ふるさと納税ポータルサイトの業界では、総務省の決定に対し、冷静に受け止めている事業者もいれば、反発する事業者もいます。

反対運動を繰り広げたのが楽天グループです。ポイント付与を禁止する総務省の告示に反対する署名活動を展開し、2025年3月に約295万件の署名を首相に提出しました。さらに、7月には、告示の無効確認を求めて東京地裁に提訴しました。同社は、ポイント付与の加熱を避けるためには上限を設ける方法もあり、全面禁止は過剰規制に当たると主張しています。

一方、ポイント付与で遅れを取ってきたポータルサイトでは、返礼品の満足度を向上させるといった施策に注力しています。

返礼品をめぐる不祥事も

ふるさと納税の返礼品をめぐる不祥事も相次いでいます。2025年3月には、返礼品のシャインマスカットの原産地を偽装していたことが発覚しました。販売会社がシャインマスカットの原産地が「山形県産」と知りながら、「長野県産」と表示して、ふるさと納税の返礼品として長野県須坂市に販売したという内容です。

総務省は、問題が判明した後も必要な措置を取らなかったとして、須坂市に対し、ふるさと納税の対象団体の取り消し処分(2年間)を決定しました。

さらに、長野県内の市町村が自主点検したところ、6市町村で総務省への申請内容と実態が異なっていたことがわかりました。

また、2025年4月には、返礼品の米の調達費用が寄附額の3割を超えているとの指摘を受けて、総務省は岡山県吉備中央町に対して報告を求めるという動きも見られました。

地場産品の基準を明確化

返礼品をめぐる問題が噴出したことから、総務省は2025年6月24日、ふるさと納税の指定基準を見直しました。

返礼品の調達費用やポータルサイト手数料など、ふるさと納税の募集費用は膨らんでいます。不適正な運用を防ぐため、「1件あたり100万円以上」の募集費用を対象に、自治体が支払先・支払額を公表するルールを導入しました。

また、返礼品は「区域内で過半の付加価値が生じていること」が要件ですが、自治体によって付加価値の算出方法が異なり、同じ製品を複数の自治体が地場産品として扱うことがありました。この状況を改善するため、付加価値の割合を「価格」に基づいて算出することを明確化しました。

制度の趣旨を踏まえた活用を!

ポータルサイトでのポイント付与禁止を前に、各ポータルサイトでは、“駆け込み需要”を狙ったさまざまなキャンペーンを展開するという動きも見られました。

ふるさと納税の楽しみとして、オリジナルの返礼品や“お得”なキャンペーンなどもありますが、ポータルサイト間の競争に巻き込まれないようにし、応援したい自治体に寄附するという制度の趣旨を踏まえて活用するようにしましょう。

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フリーライター。食品、サプリメント、医薬品、医療、通販などの分野を中心に取材・執筆活動。玉石混交の情報が氾濫する中で、正しい情報の発信を目指します。千葉ロッテマリーンズを応援。仕事で疲れた時は、MISIAさんの歌が一番の癒し。