食品添加物をめぐって、さまざまな情報が溢れています。大切なのは、日本の現状を正しく知ること。国内で使用されている主な食品添加物や、米国との違いなどについて解説します。
日本の食品添加物は4つのカテゴリー

食品添加物は着色、香り付け、保存性の向上、風味の改良などの目的で使用されます。日本で使用できる食品添加物は、「指定添加物」「既存添加物」「天然香料」「一般飲食物添加物」の4カテゴリーに大別されます。
(1)指定添加物
指定添加物は食経験が乏しく、国の審査によって安全性と有効性が確認されたもの。安全性については、内閣府の食品安全委員会の評価を受けます。約470品目が指定されていて、代表的なものに「ソルビン酸」「キシリトール」などがあります。
(2)既存添加物
既存添加物は、1995年時点で広く使用されていて、長期間の食経験があるもの。約360品目があり、「クチナシ色素」「タンニン」などが代表的なものです。
(3)天然香料
天然香料は、動植物から得られる天然の物質。食品に香りを付けるために使用されます。「バニラ香料」「カニ香料」など、約600品目が例示されています。
(4)一般飲食物添加物
一般飲食物添加物とは、一般的に流通している食品であって、食品添加物として使用されるもの。「イチゴジュース」「寒天」など、約100品目が例示されています。
代表的な「甘味料」「着色料」「保存料」
次に、日本で使用されている食品添加物の種類と使用目的を見ていきましょう。
「甘味料」「着色料」「保存料」についてはご存じの方も多いと思います。
「甘味料」は食品に甘みを与えるために使用します。飲料や菓子、健康食品などに用いる「キシリトール」「アスパルテーム」がよく知られています。「カンゾウ抽出物」はみそや漬物などに使用されます。砂糖を使用すれば甘みが出るのですが、肥満の原因となるため、代替品として食品添加物を使用するケースが増えています。
「着色料」は、色を調えて見た目を良くするために用いられます。日本では天然の着色料が広く使用され、代表的なものに「クチナシ色素」「ウコン色素」などがあります。カレー粉が黄色いのは「ウコン色素」の影響です。飲料や冷菓の赤っぽい色は「コチニール色素」などによるものです。
「保存料」は、食品が腐る原因となる微生物の増殖を抑え、保存性を高めることが目的。よく知られているのが「ソルビン酸」で、チーズ・魚肉製品・食肉製品・佃煮など幅広く使用されています。
「増粘剤・安定剤等」「酸化防止剤」「乳化剤」って何だろう?
「増粘剤・安定剤等」「酸化防止剤」「乳化剤」もよく知られている食品添加物です。
「増粘剤・安定剤等」は、少量で高い粘性が出る場合は「増粘剤」、液体をゼリー状に高める場合は「ゲル化剤」、粘性を高めて均一に安定させる場合は「安定剤」と呼びます。代表的なものに柑橘類やリンゴの果皮に含まれる「ペクチン」があり、ジャムやアイスクリームなどに使用されます。
「酸化防止剤」は、食品が酸化することによって品質の低下を防ぎます。特に油脂類が酸化すると、生じた過酸化物による消化器障害を引き起こすこともあります。
「乳化剤」は、水と油のように交じり合わない素材の境界面で働き、均一に混ざった状態を作り出します。マヨネーズの場合、「レシチン」が乳化剤として作用し、卵や酢の中にサラダ油が均一に混ざるようにします。
日本は食品添加物の“天国”って本当?

インターネット上では、「日本は食品添加物の天国」といった情報が溢れています。本当でしょうか。
まず、世界的な食品添加物規制の流れを押さえましょう。食品添加物の国際基準は、国連のコーデックス委員会で検討されています。日本を含む各国はコーデックス基準を参考に、それぞれの国の実情に沿った基準を設けています。
各国間で基準にバラツキが見られるのは、食生活の違い、食品添加物の定義や対象範囲の違いによるものです。特に食生活の違いは重要で、例えば豆腐に用いる「凝固剤」「消泡剤」は日本特有の用途と言えるでしょう。
国によって異なる品目数や対象範囲
では、食品添加物の数はどうでしょうか。日本と米国の指定されている品目数を比べてみましょう。
日本は指定添加物が約470品目、既存添加物が約360品目の合計830品目。一方、米国は香料を除いて約1,600品目に上ります。
日本と比べて米国は2倍ほど多いのですが、米国の場合、果汁や茶など日本では添加物に含まれないものが入っていたり、日本では1品目とカウントされるものが、物質ごとに指定されて数十品目となっていたりします。このため、一概に数を比べてもあまり意味がないのかもしれません。
また、ポストハーベスト農薬のうち、「防かび剤」について日本は添加物として規制していますが、米国では農薬に分類されるなどの違いもあります。
詳細はともかく、国によって食文化・食生活、それぞれの食品の消費量が異なることから、食品添加物の基準も違ってくるという点を理解できれば、不安を煽るような“フェイク情報”に惑わされなくて済みます。
欧米で広がる「クリーンラベル」のトレンド

日本では食品添加物の安全性を食品安全委員会が評価していることから、極端に不安を感じる必要はありませんが、できるだけ避けたいという消費者ニーズも強いです。その背景には、過去に安全性で問題のある食品添加物が使用されていたことなどがあります。
可能な限り食品添加物を避けるという考え方は、日本に限らず世界的な潮流です
近年、「クリーンラベル」という言葉を耳にするようになりました。「クリーンラベル」は、シンプルな原材料を使用していることや、化学的に合成された食品添加物を使用していないことなどを指すトレンドで、欧米の消費者間で広がっています。
食品添加物は食品の広域流通や食中毒防止などの面で貢献していますが、日本でも「クリーンラベル」のトレンドがさらに浸透すれば、国内の食品業界も食品添加物の使用を可能な限り減らす方向へシフトすると予想されます。