食物アレルギー表示制度の新たな動きとは?

アレルギーの原因となる原材料を加工食品に表示する「食物アレルギー表示制度」で、いくつかの重要な動きが出てきました。あなた自身や家族に食物アレルギーのある方がいる場合、食物アレルギー表示制度がどう変わるのかを理解しておくと安心です。

対象品目が変化することに注意すること

食物アレルギーは、私たちの体が、食品に含まれるたんぱく質(アレルゲン)を異物として認識し、体を過剰に守ろうとすることで起こります。肌が赤くなったり、かゆくなったりするほか、呼吸が苦しくなる、重篤な症状が生じて命を危険にさらすケースもあります。

食物アレルギーの発症を未然に防ぐため、消費者庁では食物アレルギー表示制度を運用しています。

現在、加工食品のパッケージに表示を義務づけている(表示義務品目)のは、えび・かに・くるみ・小麦・そば・卵・乳・落花生の8品目。表示を推奨している(表示推奨品目)のは、アーモンド・オレンジ・カシューナッツ・キウイフルーツなど20品目があります。

制度の対象品目は、国が3年に1度実施する実態把握調査の結果を基に、見直しが検討されます。ここ最近でも、いくつかの新たな動きが出ています。対象品目が追加されたり、削除されたりする可能性がありますので、食物アレルギーがある方にとっては制度改正の動向を注意深く見守ることが大切です。

2025年4月から「くるみ」の表示を義務化

消費者庁は2023年3月9日、食品表示法の食品表示基準を改正して、食物アレルギー表示制度の表示義務品目に「くるみ」を追加しました。

2014年頃からナッツ類による発症数が増加し、特に「くるみ」による発症数の増加が顕著となっていることに対応した取り組みです。

ただし、販売会社ではパッケージを改訂しなければならないことから、2年間の経過措置期間を設けています。実際に「くるみ」の表示が義務づけられるのは、2025年4月1日からです。経過措置期間中は、「くるみ」を使用していても表示がない商品も流通するため、注意が必要です。

「カシューナッツ」が表示義務品目の最有力候補に

2023年3月14日には河野太郎消費者担当大臣が、食物アレルギー表示制度の表示義務品目に「カシューナッツ」を追加する可能性があるとし、食品中のカシューナッツを検出するための公定検査法の開発に着手する方針を発表しました。

まだ正式に決定したわけではありませんが、「カシューナッツ」が表示義務品目の最有力候補に挙がっていることは明らかです。どのような理由からなのでしょうか?

消費者庁の2021年度「食物アレルギーに関連する食品表示に関する調査研究事業」の報告書によると、カシューナッツが原因のアレルギー発症数が増加傾向にあります。即時型症例は鶏卵・牛乳・小麦などに続いて7番目、ショック症例も6番目に多いということです。

表示義務品目に追加された場合、表示を怠った販売会社は法令違反に問われます。義務を課す以上、食品中にカシューナッツが含まれているかどうかを確認することが必要となります。そこで、消費者庁では義務化を念頭に置きながら、カシューナッツの公定検査法の開発に乗り出しました。

公定検査法の開発には数年かかることから、義務化の決定に先立って開発に着手したというわけです。

表示推奨品目に「マカダミアナッツ」を追加、「まつたけ」は削除へ

消費者庁は2023年6月14日、「食物アレルギー表示に関するアドバイザー会議」を開催し、表示推奨品目に追加または削除する場合の要件を示しました。その要件に照らし合わせて、追加品目に「マカダミアナッツ」、削除品目には「まつたけ」が挙がりました。

表示推奨品目に追加するための要件は、(1)直近2回の実態調査で即時型症例数が上位20品目以内、(2)直近2回の実態調査でショック症例数が上位10品目以内で、重篤度などの観点から別途検討が必要――のどちらかに該当すること。この要件を満たす食品として、「マカダミアナッツ」があります。

一方、表示推奨品目から削除するための要件は、(1)直近4回の実態調査で即時型症例数が上位20品目に入っていない、(2)直近4回の実態調査でショック症例数が極めて少数――の両方を満たすこと。該当する食品に「まつたけ」があります。

その後、消費者庁では、表示推奨品目に「マカダミアナッツ」を追加することと、「まつたけ」を削除することを決定し、2023年度内に対応する予定です。

食物アレルギー表示制度は商品選択で頼れる存在

食品の表示制度には、原料原産地表示、遺伝子組み換え表示、食品添加物表示など多数ありますが、安全性の観点で言えば、食物アレルギー表示は期限表示と並んで極めて重要とされています。

食物アレルギーは高齢になってから発症することもあります。食物アレルギーのある方にとって、食物アレルギー表示制度は商品選択で頼れる存在。制度の動向を押さえて、的確な商品選択につなげていただければと思います。

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フリーライター。食品、サプリメント、医薬品、医療、通販などの分野を中心に取材・執筆活動。玉石混交の情報が氾濫する中で、正しい情報の発信を目指します。千葉ロッテマリーンズを応援。仕事で疲れた時は、MISIAさんの歌が一番の癒し。