食物繊維とは?飽食時代に不足とされる栄養素をもっと知ろう

食べ残しによる食品ロスが社会問題になるほど、飽食の日本。そんな日本人のほとんどで不足している重要な栄養素があると言っても、ピンとこないですよね。それは、あなたもよくご存じの「食物繊維」なのです。食物繊維はあなたの健康と美容を守る栄養素。もっと知って、積極的に食物繊維を取る食生活を送りましょう。

食物繊維とは?

テレビ番組などで、よく栄養士さんが「食物繊維をしっかりと取りましょう」と言っています。それは、食物繊維が私たちの健康を守るために非常に重要だから。そして、ほとんどの日本人で摂取量がまったく足りていないからです。

さて、食物繊維とは、どのようなものでしょうか。意外と思うかもしれませんが、はっきりとした定義はありません。一般的には、「人の消化酵素で消化されない食品中の成分」とされています。

タンパク質や糖質などは、胃や小腸で消化酵素によって分解され、小腸から吸収されます。一方、食物繊維は吸収されずに、小腸を通過して大腸まで到達します。

食物繊維は「第6の栄養素」とも呼ばれます。

サラダ Salad

糖質・脂質・タンパク質を「3大栄養素」と呼び、これにビタミンとミネラルを加えて「5大栄養素」と言います。食物繊維はこれらと並んで不可欠な栄養素なのです。

かつては研究者の間で「食物繊維は役に立たない」、「栄養素とは言えない」といった見解がありました。しかし、世界中で研究が進み、今では多くの疾患を防ぐことが明らかな「稀(まれ)な栄養素」と評価されています。

水溶性食物繊維と不溶性食物繊維の違い

フルーツの集合 Fruit set

食物繊維とひと口に言っても、多くの種類があります。食物繊維は水に溶ける「水溶性」と、水に溶けない「不溶性」に大別されます。

水溶性食物繊維

水溶性食物繊維にはペクチン、アルギン酸、グアーガム、グルコマンナン、β‐グルカンなどがあります。

ペクチンはミカン・レモン・リンゴなどの果物、ニンジン・パプリカなどの野菜に豊富に含まれています。アルギン酸はワカメ・コンブなどの海藻類のヌルヌル成分。グルコマンナンはコンニャクに含まれる成分です。

不溶性食物繊維

不溶性食物繊維の代表選手はセルロース、ヘミセルロース、リグニン。これらは植物の細胞壁の成分。植物の形を維持するために不可欠なものです。植物は繊維質なので、もっともイメージしやすいのではないでしょうか。

このほか、不溶性食物繊維として寒天やキチンなどが知られています。キチンは主にカニ・エビの殻に含まれています。食物繊維のなかでは数少ない動物性由来の成分です。

人工的につくられる食物繊維もあります。主なものに、難消化性デキストリン、ポリデキストロース、オリゴ糖、糖アルコールがあります。これらは健康食品に使用されることが多い成分です。

水溶性食物繊維も不溶性食物繊維も腸内で働きます。また、水溶性食物繊維が多様な機能性を発揮するのに対し、不溶性食物繊維は便の量を増やしてくれます。どちらも、健康と美容を守るために重要な役割を果たしているのです。

全年代で大幅に足りない
食物繊維の摂取量

私たちが健康であるために、脂質や糖質の取りすぎに注意しなければなりません。ビタミン・ミネラルについては、ほぼ足りています。一方、ほとんどの日本人にとって、大きく不足しているのが食物繊維です。

食物繊維の1日当たりの摂取状況は次のとおりです(17歳以下は省略)。

18~29歳 男性11.27g 女性10.79g

30~49歳 男性12.16g 女性11.69g

50~64際 男性14.00g 女性13.87g

65~74歳 男性15.76g 女性15.86g

75歳以上 男性15.61g 女性14.35g

これに対して、国が定める目標量は18~64歳までで男性21g以上・女性18g以上、65歳以上が男性20g以上・女性17g以上。どの年代も男女ともに、大幅に不足していることがわかりますね。

米国やカナダなど先進国の基準を踏まえると、本来ならば1日あたり24g以上を目標量に置きたいというのが、国の本音。しかし、現状を考えると、いきなり高い目標を掲げても、“絵にかいた餅”になりかねなりません。そこで、現実的な目標量を設定しているわけです。

日本人の食物繊維の摂取量が少ない背景として、米や雑穀を食べなくなってきたこと、果物の摂取量が少ないことなどがあります。

食物繊維が豊富な食品をしっかり取る

食物繊維の不足を補うためには、食物繊維を豊富に含む食品を知って、意識して食事に取り入れることが必要です。

果物、野菜、穀類、豆類、キノコ、イモ、海藻をバランス良く食べることが理想的です。食物繊維を豊富に含む食品には、次のようなものがあります。

・野菜:ゴボウ、フキ、セロリ、キャベツ、アスパラガス、カボチャなど。

・果物:リンゴ、柑橘類、バナナなど。

・穀類:玄米、麦ごはん、トウモロコシ、発芽米など。

・豆類:大豆、インゲン豆、小豆、おからなど。

・キノコ:シイタケ、シメジ、エノキタケ、マイタケなど。

・イモ:サツマイモ、サトイモ、コンニャクなど。

・海藻:ワカメ、コンブなど。

しかし、「忙しくて、きちんとした料理をする時間がない」という方も多いでしょう。そうした方には、朝食にバナナを加える、全粒粉を使用したパンやシリアルを活用することがおすすめ。

コンビニ各社では雑穀を混ぜた弁当に力を入れていますので、どうせ弁当を買うなら、そうしたものを選びましょう。また、食物繊維のサプリメントを上手に利用することも有効な手段です。

食物繊維をしっかり取って、いつまでも健康と美容を維持してくださいね。

ABOUTこの記事をかいた人

フリーライター。食品、サプリメント、医薬品、医療、通販などの分野を中心に取材・執筆活動。玉石混交の情報が氾濫する中で、正しい情報の発信を目指します。千葉ロッテマリーンズを応援。仕事で疲れた時は、MISIAさんの歌が一番の癒し。