健康食品と医薬品の飲み合わせ

「ウナギと梅干しを一緒に食べるとだめ」という話を聞いたことありませんか?健康食品と医薬品についても、一緒に飲むとよくないケースがあります。健康食品を賢く利用するためには、医薬品との関係を理解することがとても大切なのです。

食品でも起こる、飲み合わせによる相互作用とは?

普段食べている食品なのに、医薬品を一緒に飲むと医薬品の効果が弱まったり、反対に効きすぎて体調が悪くなったりすることもあります。このような飲み合わせによって起こる良くない現象を「相互作用」といいます。多くの食品についてはそれほど心配する必要はありませんが、問題となる事例も報告されています。

代表例にグレープフルーツジュースがあります。グレープフルーツが好きな方は「えっ?」と思うかもしれませんね。実は、グレープフルーツジュースと血圧を下げる医薬品(血圧降下剤)を一緒に飲むのはNG。医薬品の効果が強くなりすぎて、頭痛やめまいなどの症状が表れるからです。このほか、「大豆とワルファリン(抗血液凝固剤)」や「牛乳と抗菌剤」の相互作用も、よく知られています。

相互作用はなぜ起こるの?

食品と医薬品による相互作用は、なぜ起こるのでしょうか?その理由は大きく分けると3つあります。

成分による影響

食品に含まれる成分が影響して、医薬品成分の体内への吸収量が減ったり、増えたりするため。牛乳と皮膚真菌症(皮膚が赤くなったり、かゆくなったりする病気)の治療薬を一緒に飲むと、医薬品成分の吸収率が高まって副作用が出ることも。反対に、牛乳と抗生物質や抗菌剤を一緒に飲むと、吸収率が下がって効果が弱まることもあります。

化学反応による影響

食品に含まれる成分が、体内での医薬品成分の代謝に影響するため。代謝とは、体内に取り入れた成分をもとに行う化学反応のこと。先ほどの「グレープフルーツジュースと血圧を下げる医薬品」の例がこれに該当します。一緒に飲むと、血中の医薬品成分の濃度が上昇して効果が強くなりすぎて、低血圧の症状を引き起こすわけです。

個々の状態による影響

個人の栄養状態によって、医薬品成分の体内分布が変化するため。体内分布とは、血液・臓器・筋肉・脳など体の組織から組織へ医薬品成分が移動することや、各組織の医薬品成分の濃度差を指します。食が細くなった高齢者に見られる低栄養の場合、医薬品によっては効きすぎたり、効かなかったりすることがあります。

健康食品と医薬品の相互作用

健康食品と医薬品についても、相互作用を引き起こす飲み合わせが報告されています。相互作用による症状には、軽度なものから重度なものまで。とくに抗血液凝固剤、免疫抑制剤、抗不整脈薬などを服用中の方で発生しやすいので、これらの医薬品を使用する場合は注意してください。

野菜・果物・乳製品といった通常の食品と比べて、健康食品と医薬品の相互作用は発覚しにくい傾向があります。それは、医療機関を受診したときに、患者が申告しないことが多いからです。各種調査の結果を見ると、通院患者の約4割が健康食品を利用。しかし、そのことを主治医に相談している人の割合は3割弱にとどまっています。

というのも、主治医に相談しても頭ごなしに「健康食品を利用するな」と言われることが多いから。また、患者が相談する必要がないと自己判断していることも要因の一つです。

知っておきたい健康食品と医薬品の飲み合わせ、代表的な事例

これまでに明らかになった健康食品と医薬品による相互作用の事例のうち、代表的なものを紹介します。次のような飲み合わせは、絶対に避けてくださいね。

(1)セント・ジョーンズ・ワート(セイヨウオトギリソウ)と免疫抑制剤、気管支拡張薬、抗不整脈薬など多数

(2)イチョウ葉エキスと抗血液凝固剤、利尿薬、解熱鎮痛剤など

(3)ノコギリヤシと卵胞ホルモン薬

(4)甘草と強心薬、利尿薬

(5)ナットウキナーゼと抗血液凝固剤

(6)クマザサと抗血液凝固剤

(7)チョウセンニンジン(オタネニンジン)と抗血液凝固剤

(8)エキナセアと免疫抑制剤

(9)ビタミンKと抗血液凝固剤

(10)ビタミンDと強心薬

(11)マグネシウムと抗生物質

(12)カモミールと抗血液凝固剤

健康食品と医薬品の相互作用は、国が許可する特定保健用食品(トクホ)であっても例外ではありません。トクホだから安心と思い込むのは間違いです。いくつか例を挙げると、トクホ成分の「サーデンペプチドとカリウム製剤」、「キトサンと高脂血症治療薬」、「ポリデキトロールと強心薬」などの相互作用が知られています。

複数の健康食品の摂取でも相互作用は起こる?

健康ブームの中で、複数の健康食品を利用している方も多いことでしょう。医薬品の場合と違って、健康食品同士の相互作用についてはそれほど心配しなくても大丈夫。ただし、注意が必要なケースもあります。それは、同じ効果をもつ健康食品を何種類も利用している場合。たとえば、「早く痩せたい」と思って、ダイエット成分を含む健康食品を2つも3つも同時に利用すると、同じ成分または類似成分の過剰摂取につながります。

ただ、健康食品を利用する目的は病気の改善や治療ではないので、複数の健康食品を利用したとしても、深刻な問題は起こりにくいです。一方、同一成分や類似成分の過剰摂取は、避けるようにしましょう。

賢く健康食品を利用するための注意点

今回紹介した事例は代表的なものですが、それ以外にも一緒に飲んではならない健康食品と医薬品の事例が多数報告されています。医薬品を服用中で、利用している健康食品との相互作用が心配な方は、主治医または薬局(薬剤師)に確認してください。

健康食品は正しく理解して利用すれば、あなたの健康をサポートし、元気で明るい毎日を演出してくれます。医薬品との相互作用について知り、賢く健康食品を利用してくださいね。

ABOUTこの記事をかいた人

フリーライター。食品、サプリメント、医薬品、医療、通販などの分野を中心に取材・執筆活動。玉石混交の情報が氾濫する中で、正しい情報の発信を目指します。千葉ロッテマリーンズを応援。仕事で疲れた時は、MISIAさんの歌が一番の癒し。