改正特定商取引法で健康食品のネット通販が変わる!?

改正特定商取引法(特商法)が6月9日、国会で成立しました。今回の改正は、健康食品のインターネット通販に大きく影響します。改正のポイントを知れば、これまで以上に安心してネット通販を楽しむことができるでしょう。改正特商法の概要を解説します。

特商法改正のポイント

まず、特商法とは、どのような法律なのかを確認しましょう。

特商法は、事業者が違法な行為によって消費者に商品を売ったり勧誘したりしないように、取引のルールを定めています。消費者トラブルが発生しやすい「訪問販売」「通信販売」「電話勧誘販売」などが対象です。

今回の改正のポイントは主に次の3点です。

  1. 健康食品・化粧品の悪質な「定期購入商法」への対策
  2. 健康食品や生鮮食品などの「送り付け商法」への対策
  3. 訪問販売などの「クーリング・オフ制度」の見直し

改正特商法は6月16日に公布され、施行は公布から1年以内を予定しています。

急増中の定期購入トラブル

  • 2016年:1万3,673件
  • 2017年:1万7,027件
  • 2018年:2万1,980件
  • 2019年:4万4,756件
  • 2020年:5万9,172件

この数字は、(独)国民生活センターがまとめた健康食品・化粧品・飲料の「定期購入商法」に関する消費者相談件数です。相談内容は、「初回500円」「初回無料」といったネット広告を見た消費者が申し込んだところ、実際には「〇回以上の定期購入」だったというものです。

定期購入トラブルが社会問題に浮上した2016年と比べ、2020年の相談件数は4倍以上に急増。しかも、この件数は(独)国民生活センターが収集したものだけであり、実際には15~20倍の被害が発生していると推計されます。定期購入トラブルに巻き込まれると、高額な購入代金を請求されます。解約したくても販売会社が嘘の説明で言いくるめたり、連絡がつかなかったりと、泣き寝入りする消費者が多いと言われています。

定期購入に関するルールはどう変わる?

悪質な「定期購入商法」による消費者被害を防止するため、改正特商法は手厚い対策を盛り込みました。

1点目

「お試し」などとうたって、定期購入契約ではないと消費者を誤認させる表示を行った事業者に対し、「直罰」(刑事罰)を適用できるようにしたことです。現行は業務停止命令などの行政処分によって対応し、それに従わない場合に罰金などの刑事罰を適用します。一方、改正特商法の施行後は、行政処分のほかに、刑事罰を直接科すことが可能となります。わかりやすく言えば、従来どおり消費者庁が取り締まることも、警察が直接動くこともできるわけです。いきなり警察が動くとなると、悪質業者は「これはヤバイ!」となり、抑止力が働くと予想されます。

2点目

違法な表示によって定期購入契約であるとは知らずに申し込んだ場合、申し込み(契約)を取り消せる仕組みを導入したこと。泣き寝入りするしかなかった消費者も、これによって救われると期待されています。

3点目

消費者が契約解除を求めた場合、事業者による解除の妨害を禁止する規定を導入したこと。インターネット広告で「〇〇日以内ならいつでも取り消せる」と表示していても、悪質業者は約束を守りません。「解約の申請期間外なので契約できない」などと嘘をついて、契約を解除させないように仕向けるわけです。しかし、改正特商法の施行後は、そうした妨害行為も法律で禁止されます。

「送り付け商法」の対策も強化、消費者は即処分可能に!

改正特商法は、健康食品や生鮮食品などの「送り付け商法」による被害を防ぐため、規制を強化しました。

「送り付け商法」とは、商品を消費者宅へ一方的に送付し、商品代金を請求するという手口。認知機能が衰えた高齢者が狙われる傾向にあり、健康食品やカニなどの生鮮食品を送り付けるケースが多いと言えます。現行ルールでは、もし、あなたの自宅にいきなり商品が送り付けられたとしても、すぐに処分できません。特商法で、「14日間」の保管を経てから処分が可能と規定されているからです。このため、14日間を待たずに商品を使用したり処分したりして、事業者から損害賠償請求を受けるケースもあります。これに対して改正特商法は、商品が届き次第、すぐに処分できるようにルール変更しました。言い換えれば、事業者が商品の返還を請求できないルールを導入したわけですね。「送り付け商法」の対策については、ほかの施策に先駆けて今年7月6日に施行される予定です。

クーリング・オフの通知方法が変わる!

改正特商法では、消費者が「クーリング・オフ制度」を利用する場合のルールも変更しました。

「クーリング・オフ制度」は、商品・サービスの購入契約を結んだ後、冷静になって「やはり契約したくない」と考え直した場合に、一定期間内に申し込みを撤回できるというもの。訪問販売や電話勧誘販売などに適用されます(通信販売には適用されません)。

現行ルールでは、クーリング・オフを行う場合、消費者は紙の書面によって事業者へ通知しなければなりません。一方、改正特商法は電子メールによる通知も可能にしました。消費者にとっては利便性が向上し、クーリング・オフをしやすくなるわけですね。また、事業者に交付を義務づけている紙の契約書面についても、消費者の承諾を得れば、電子メールで交付できるようになります。

ただし、電子メールによる契約書面の交付は、消費者被害を拡大させるのではないかと懸念されています。というのも、特に高齢者の場合、家族が紙の契約書面を見つけて被害に気づくことが多いからです。電子メールだと第三者が気づきにくく、悪質業者に悪用されるのではないかという声が聞かれます。こうした問題点があるため、電子メールによる契約書面の交付については、ほかの施策よりも施行を遅らせる(公布日から2年以内)ことになりました。

改正点を理解してネット通販を楽しもう!

改正特商法が施行されると、健康食品などのインターネット通販は、より安心して利用できるようになるでしょう。改正のポイントを知っていれば、トラブルに巻き込まれても、泣き寝入りせずに悪質業者に対抗しやすくなります。

特商法の改正点をしっかりと理解し、もし、あなたがトラブルに遭ったとしても適切な対応を取れるようにしておきましょう。それ以前に大切なことは、信頼できる販売サイトを利用することです。ぜひ、よりいっそう賢い消費者を目指していきましょう!

ABOUTこの記事をかいた人

フリーライター。食品、サプリメント、医薬品、医療、通販などの分野を中心に取材・執筆活動。玉石混交の情報が氾濫する中で、正しい情報の発信を目指します。千葉ロッテマリーンズを応援。仕事で疲れた時は、MISIAさんの歌が一番の癒し。