新たな原料原産地表示は複雑!

加工食品の原料原産地表示制度が2022年4月1日、新たなルールへ完全移行されたことをご存じですか?加工食品を選ぶ際に、使用原材料の産地情報はとても重要です。制度改正によって、表示方法がどう変わったのかを理解しておきましょう。

加工食品の原料原産地表示とは?

原料原産地表示制度は、加工食品に使用する原材料の産地を商品パッケージに表示するというもの。消費者庁と農林水産省が所管しています。改正された新制度は2017年9月1日にスタート。2022年3月末までは猶予期間の位置づけで、22年4月1日から完全施行となりました。それまでは、従来の表示方法と新たな表示方法が混在している状況が続いていました。

なぜ制度が改正されたの?

制度の改正は、貿易の自由化を促進するという世界的な動きも一因です。原料原産地表示をすべての加工食品に広げて、国産品の強みである「安全・安心」をアピールする狙いがあります。

改正のもう1つの背景として、消費者が加工食品を選ぶ際に、従来の制度では使用原材料の産地情報を得にくかったことがあります。加工食品の原材料の産地を知りたいという消費者ニーズに応えることも改正の狙いです。

表示方法はどう変わったの?

従来の制度は22食品群と4品目が対象でした。具体的には「緑茶」「合いびき肉」「乾燥キノコ」「野菜冷凍食品」「うなぎ加工品」などです。しかし、改正によって、日本国内で製造・加工されたすべての加工食品を対象に、原料原産地表示を義務づけました。

表示の対象は、商品に占める重量割合が第1位の原材料(「国別重量順表示」と呼びます)。第2位以下の原材料については、企業が自主的に原料原産地表示を行うことも可能です。重量割合が第1位の原材料が生鮮食品の場合は「産地」を表示。加工が施された原材料の場合は「製造地」を表示します。

まず、第1位の原材料が生鮮食品の場合の表示方法を見ていきましょう。

  • 原産地が1カ国の場合、「大豆(国産)」や「大豆(アメリカ産)」などと表示します。
  • 2カ国以上の原材料を混合して使用する場合は、「大豆(アメリカ産、カナダ産)」というように、多い順に原産地を表示します。
  • 3カ国以上の原材料を混合して使用する場合は、「大豆(アメリカ産、カナダ産、その他)」というように、3カ国目以降は「その他」とすることが可能です。

「製造地表示」とは?「国産」と「国内製造」は同じ?

重量ベースで第1位の原材料が、たとえばオレンジ果汁といった加工食品の場合は「製造地」を表示します。これは、原材料として用いた加工食品の原料原産地を把握することが困難なためです。

表示方法は、「オレンジ果汁(ドイツ製造)」などとなります。「製造地」が日本の場合は「オレンジ果汁(国内製造)」と表示します。ここで注意すべき点は、オレンジ果汁に使用されたオレンジの産地が「国産」という意味ではありません。海外から輸入したオレンジを使用して、日本でオレンジ果汁を製造したかもしれません。あくまでも、原材料として用いるオレンジ果汁を製造した場所が日本国内であることを指しています。

「又は表示」の意味は?

「国別重量順表示」が困難なケースもあります。たとえば、冷凍ミックス野菜などでは季節ごとに調達先の国が変わります。そうすると、その都度、商品パッケージの変更も余儀なくされますが、これでは企業の負担が大きすぎます。そうした場合には、「又は表示」や「大括り表示」を認めています。「又は表示」とは、「大豆(アメリカ産又はカナダ産)」という表示方法です。

この表示は、(1)アメリカ産のみ、(2)カナダ産のみ、(3)アメリカ産、カナダ産の重量順、(4)カナダ産、アメリカ産の重量順――の4つの可能性を意味します。また、過去の使用実績では、アメリカ産の方がカナダ産よりも多く使用していたという意味も持ちます。

「又は表示」では、「5%未満」と表示しなければならないケースもあります。たとえば、「アメリカ産又は国産(5%未満)」の表示は、国産の割合が5%未満であり、残りはアメリカ産が占めていることを意味します。なぜ、このような表示が必要かというと、わずかしか国産原材料を使用していないのに、相当量を国産が占めているという誤認が生じるためです。

「大括り表示」とは?

次に「大括り表示」とは、どのようなものでしょうか。これは3カ国以上の海外の原産地を「輸入」とひと括りにして表示する方法です。たとえば、アメリカ産・カナダ産・中国産の大豆を混合して使用している場合は「大豆(輸入)」と表示できます。

さらに、「大括り表示」のみでは表示が困難な場合には、「輸入又は国産」という表示方法も可能です。たとえば、「大豆(輸入又は国産)」の表示は、「輸入」(3カ国以上)+「国産」(日本)なので、つまり4カ国以上の大豆を使用している可能性を意味します。

輸入か国産のどちらかしかないため、「輸入又は国産」の表示は意味がないように思えますよね。筆者も当初、「地球産のこと?」と思ったぐらいです。しかし、重量順なので、過去の実績では輸入原材料の方が国産よりも多く使用されていたことを意味するなど、一定の情報を伝えているわけですね。

商品選択に役立てよう!

ここまで見てきたように、新たな原料原産地表示制度はかなり複雑です。その分、「国別重量順表示」「製造地表示」「又は表示」「大括り表示」のそれぞれを理解しておけば、買い物で商品を選択する時にとても役に立ちます。

新たな表示ルールは、原材料の産地にこだわる消費者にとっては歓迎できます。複雑であるものの、すべての加工食品が対象となり、従来の制度よりも親切です。ぜひ、新たな表示ルールを理解して買い物で活用してみましょう。

ABOUTこの記事をかいた人

フリーライター。食品、サプリメント、医薬品、医療、通販などの分野を中心に取材・執筆活動。玉石混交の情報が氾濫する中で、正しい情報の発信を目指します。千葉ロッテマリーンズを応援。仕事で疲れた時は、MISIAさんの歌が一番の癒し。