食品添加物の「無添加」「不使用」の表示ルールが明確化されます。消費者庁は今年3月にガイドラインを策定する予定です。21年12月に公表されたガイドライン(案)を見ると、禁止される表示は広範囲に及びます。特に、消費者を誤認させるような「無添加」「不使用」表示については、市場から排除されることになりそうです。
ルール明確化の背景とは?
まず経緯を見ていきましょう。消費者庁の「食品添加物表示制度に関する検討会」は2020年3月、制度の改正方針を示した報告書を取りまとめました。報告書には、「無添加」「不使用」に関する表示ルールの明確化が盛り込まれました。これを受けて消費者庁は21年3月、「食品添加物の不使用表示に関するガイドライン検討会」を発足。12月にガイドライン(案)が示され、今年3月にガイドラインが公表される予定です。
食品添加物の表示方法は、食品表示法の食品表示基準で定めています。しかし、「無添加」「不使用」表示の明確な基準はありません。このため、消費者が誤認するような表示が横行していると指摘されています。そこで、表示ルールの明確化に乗り出したわけです。問題視された代表的な事例として、パン製造で使用するイーストフードなどがあります。食パンや菓子パンのなかには、「イーストフード不使用」「乳化剤不使用」とうたう表示が見られます。しかし、そうした商品にはイーストフードや乳化剤と同じ機能を持つ物質が使用されているというのが実態です。
表示禁止事項を10カテゴリーに分類
ガイドライン(案)は、食品表示基準で禁止している「実際よりも優良と誤認させる表示」や「内容物を誤認させる表示」に該当する表示を列挙。禁止する「無添加」「不使用」表示を次の10カテゴリーに分けました。禁止事項に挙がった表示は、消費者に誤認を与えかねないものなどです。10カテゴリーについて一つずつ見ていきましょう。
(1)単なる「無添加」の表示
「無添加」としか表示していない場合、着色料が無添加なのか、保存料が無添加なのかなど詳細が不明です。消費者は推測するしかありませんね。そうすると、消費者の推測と商品の実態が異なるケースも出てきます。このため、禁止事項とする予定です。
(2)食品表示基準に規定のない用語を使用した表示
消費者庁は2020年7月16日付で、食品表示基準の改正により、「人工甘味料」や「合成保存料」などの表示を「甘味料」「保存料」などに変更しました(今年3月末までを経過措置期間に設定)。「人工甘味料不使用」「合成保存料不使用」といった表示は法令違反となります。
(3)食品添加物の使用が法令で認められていない食品への表示
例えば、清涼飲料水に「ソルビン酸」を使用することは、そもそも禁止されています。それにもかかわらず「ソルビン酸不使用」と表示すると、消費者はほかの商品よりも優れていると誤解します。
(4)同一または類似の機能を持つ食品添加物を使用した食品への表示
例を挙げると、日持ちを向上させる目的で保存料以外の食品添加物を使用しながら、「保存料不使用」と表示するケースなどが該当します。
(5)同一または類似の機能を持つ原材料を使用した食品への表示
乳化の作用を持つ原材料を高度に加工して使用しながら、「乳化剤不使用」と表示する場合などです。
「健康」「安全」「おいしい」も禁止事項に
食品添加物不使用だから「安全」「健康」「おいしい」といった表示も、禁止事項に挙がっています。
(6)「健康」や「安全」と関連付ける表示
「無添加だから安全」「無添加だから体に良い」といった表示もNGとなります。これは、事業者が安全性や健康への効果を科学的に検証することが困難なためです。
(7)「健康」「安全」以外と関連付ける表示
「食品添加物不使用だからおいしい」などの表示を念頭に置いたものです。また、「保存料不使用なので、お早めにお召し上がりください」といった表示も該当。開封後に言及せず、期限表示よりも早く食べなければならないという印象を与えるからです。
(8)食品添加物の使用が予期されていない食品への表示
例えば、ミネラルウォーターには通常、保存料や着色料は使用されていません。それにもかかわらず、「保存料無添加」「着色料不使用」とうたうと、法令違反に問われる可能性があります。
(9)「加工助剤」「キャリーオーバー」として使用されている食品への表示
食品添加物を加工助剤やキャリーオーバーとして使用した場合に、「無添加」「不使用」と表示することも禁止事項に挙げられました。加工助剤は、最終的に商品から除去されるものなどを指します。キャリーオーバーとは、原材料の製造で使用されるが、商品の製造には使用されず、出来上がった商品にわずかな量しか含まれない(食品添加物としての作用が発揮されない)ことを言います。
(10)過度に強調された表示
「過度」の線引きは困難ですが、容器包装の多数の箇所に、目立つ色で「着色料無添加」などと表示するケースが想定されています。
広告は景品表示法で対応
ガイドラインは加工食品の容器包装の表示に適用され、広告は対象外。だからと言って、広告で従来どおり「無添加だからおいしい」などと表示したりすると、景品表示法に抵触する可能性が生じます。広告についてもガイドラインに沿った表示が求められるでしょう。
ガイドラインは今年3月に公表されますが、容器包装の切り替えが伴うことから、24年3月末までを経過措置期間とする予定です。
今後2年間で「無添加」「不使用」表示が淘汰
ガイドライン公表後から経過措置期間が切れるまでの2年間で、さまざまな商品の「無添加」「不使用」表示がガラリと変わる可能性があります。淘汰されるのは、消費者が誤認しかねない表示です。「無添加」「不使用」表示が消え去るわけではありませんので、食品添加物を避けたい方は引き続き、容器包装の表示内容を見て判断することになります。