「肌の潤いをサポート」「睡眠の質向上」など、さまざまな効果を表示できる機能性表示食品。市場は伸びていますが、解決すべき問題も山積み。機能性表示食品が抱える課題について解説します。
どのような科学的根拠が必要?

機能性表示食品として販売するには、機能性や安全性の根拠となる資料を消費者庁へ届け出なければなりません。
その根拠にインチキがあれば、あなたもきっと、「表示されている効果は期待できないのでは?」と思うでしょう。実は、そうした問題が後を絶たないのです。
機能性表示食品の効果の証明は、「二重盲検ランダム化比較試験」の良好な結果が必須となります。
この試験は、試験に参加する人(被検者)を2つのグループに分けて、一方のグループに特定の成分を含む機能性表示食品を与え、もう一方のグループには特定の成分が入っていない食品を与えます。一定期間、摂取した後、各グループの被験者を測定します。
ルール違反の試験方法も

二重盲検ランダム化比較試験の「二重盲検」とは、被験者が、自分がどちらのグループなのかがわからず、試験を行う医師も、それぞれの被験者がどちらのグループなのかがわからないようにした研究手法のこと。
なぜ、「二重盲検」が必要なのでしょうか。例えば、「脂肪を減らす」機能性表示食品の場合、被験者が、自分が機能性表示食品を摂取するグループであると知っていたら、「良い結果を出さないといけない」というプレッシャーを感じて、ハードな運動を行うかもしれません。医師も同様に、必要以上の指導を行うかもしれません。そうしたことを避けるために、「二重盲検」とするわけです。
ところが、機能性表示食品のなかには、「二重盲検」でない試験を科学的根拠とする商品も見つかっています。適正な試験を根拠としていないわけですから、表示されている効果は期待できないでしょう。
偶然にも良好な結果?
さらに深刻な問題も浮上しています。
二重盲検ランダム化比較試験の結果、グループ間の測定値に差が出たとしても、偶然出たのかもしれません。そこで、「P値≦0.05」の場合に認めるというルールがあります。
「P値≦0.05」とは、同じ試験を繰り返して行った場合に、95%以上の確率で同じ結果が出ることを意味します。つまり、偶然出た結果ではないわけです。
ところが、「P値≦0.05」とするために、一部の機能性表示食品でインチキが行われているのです。一体、どういうことでしょうか?
通常は試験を始める前にあらかじめ、「目標とする試験結果」を1つ設定しておきます。もし、目標とする試験結果が2つあれば、どちらか一方でも達成すればOKとなり、良い結果が出る確率が2倍に跳ね上がってしまいます。
目標とする試験結果が複数設定されていることを「多重検定」と呼びます。多重検定は試験の信頼性を損なうため、機能性表示食品でもNGとなります。しかし、多重検定が疑われる試験が横行している、というのが現状です。
「査読」が甘い雑誌に群がる
機能性表示食品の届出は、効果を検証した研究論文が「査読」付き学術雑誌などに掲載されることも要件となります。
査読とは、雑誌に投稿された研究論文を複数の専門家が目を通して、査定すること。掲載する価値があるかどうかを判断するために行われます。問題があれば、雑誌側は掲載を拒否します。
雑誌に掲載される確率を「アクセプト率」と呼びます。例えば、アクセプト率が40%の雑誌の場合、100本の論文が投稿され、そのうち40本しか掲載されないということです。アクセプト率が低い雑誌では、厳しい査読が行われていると言えるでしょう。
では、機能性表示食品の研究論文はどうでしょうか。残念ながら、査読が甘い雑誌への投稿が圧倒的に多いのが現状です。なかには、アクセプト率が90%の雑誌や100%に近い雑誌も。査読は形だけのものとなっているようですね。
安全性の確認が不十分な商品も

安全性の根拠についても、不十分な商品が散見されます。
機能性表示食品では、安全性の確認で「喫食実績による食経験」を根拠とする商品が多いのですが、問題は食経験の長さ。
安全であると主張する場合、本来ならば、世代間にわたる長期の食経験が必要と考えられます。先進国の食経験に対する考え方は統一化されていませんが、数十年、少なくとも5年以上の食経験が必要とされています。
一方、機能性表示食品の届出を見ると、わずか1~2年の食経験をもって安全性を確認したとする商品も。さらには、10カ月程度の食経験を根拠にする商品も見られます。
機能性表示食品を利用する前に知っておきたいこと
機能性表示食品の広告も問題があります。効果の行き過ぎた表現が目立っていて、消費者庁は厳しく取り締まる方針です。
あなたが機能性表示食品を利用する前に、知っておくべき点を以下に整理しました。
(1)商品によって、機能性と安全性の科学的根拠の質にバラツキがある。
(2)特に、目新しい成分を配合した商品では食経験が乏しいものが多く、安全性の根拠が十分でないものがある。
(3)摂取によって疾病を予防・改善できない。痩身効果をうたう商品については、見た目でわかるほどやせることはない。
届出資料の見方

ここまで機能性表示食品の問題点を見てきましたが、適切な科学的根拠を備えた商品もあります。見分けるのは難しいですが、まずは消費者庁のホームページで、関心のある商品の届出資料をじっくり見ることをオススメします。
届出資料の見方を紹介します。消費者庁のホームページに、「機能性表示食品の検索」(https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/foods_with_function_claims/search/)というボタンがあります。クリックすると、検索画面が出てきます。
検索画面の「表示しようとする機能性」という項目に、肌、目、ストレス、血圧…などのワードを打ち込んで検索すると、関連商品の届出情報がずらりと出現します。各商品の詳細なデータを閲覧できますので、一度チャレンジしてみてくださいね。