個人輸入やSNS、フリーマーケット(フリマ)で入手した健康食品の摂取により、健康被害に遭うケースが多発しています。これらの健康食品のなかには、どこで誰が製造したのかが不明なものもあり、口にするのは危険です。健康被害の発生が相次いでいる背景を解説します。
個人輸入とは?
海外で製造された健康食品については、基本的に輸入業者が仕入れて販売します。これに対し、個人で使用することを目的に、インターネットや海外の小売業者を通じて、個人が直接購入することも可能です。これを個人輸入と呼びます。
近年、健康食品の個人輸入が増加し、健康被害の発生がたびたび問題となってきました。また、最近では、SNSやフリマで販売される痩身効果をうたうゼリー状の健康食品によって、体調を崩したというニュースを耳にします。
「食べるだけで痩せられる」と宣伝、全国各地で健康被害が発生
2022年以降、健康被害を引き起こしているゼリー状の健康食品は、主にベトナムで製造されたものです。SNSやフリマで「食べるだけで痩せられる」と宣伝し、売られています。
千葉県千葉市と兵庫県西宮市は2022年6月、同製品から医薬品成分を検出したと発表。両市では、摂取した消費者から相談が寄せられ、調査したと説明しています。頭痛や動機、ほてり、吐き気などの症状が出たそうです。
国立医薬品食品衛生研究所が調べた結果、医薬品成分の「シブトラミン」が検出されました。その後、同製品による健康被害は九州にも拡大しました。宮崎県では県民が体調不良を訴えたため、県の衛生環境研究所で検査したところ、シブトラミンのほか、「フェノールフタレイン」という医薬品成分も検出。北九州市にも市民から体調不良の相談があり、検査の結果、同じ2成分が検出されました。
発がん性の恐れがある成分を含有
シブトラミンは、海外では医薬品として承認されていますが、日本では未承認です。肥満症の治療に適用され、食欲抑制作用があります。副作用については、血圧上昇、心拍数増加、頭痛、口渇、便秘、鼻炎などが報告されています。米国では肥満抑制薬として使われ、過去に30人以上の死者を出しています。
フェノールフタレインは下剤として用いられたことがありましたが、発がん性の恐れがあるため、現在は使用されていません。
そうしたリスクの高い医薬品成分が海外製の健康食品に含まれているという事例は、今回に限ったことではありません。
過去の例を見ると、個人輸入で入手した中国製のダイエット食品などが問題となりました。例えば、「N-ニトロソフェンフルラミン」という医薬品成分を添加した健康食品の摂取により、肝障害を発症した事例が報告されています。
また、中国製のダイエット食品から「マジンドール」が検出された事例もあります。マジンドールは日本で食欲抑制剤として承認されている医薬品成分ですが、当然ながら、食品には使用できません。
医薬品成分を含む健康食品は薬機法に違反
海外製の痩身効果をうたった健康食品のなかには、効果を実感できるように、食欲抑制剤などの医薬品成分を添加している製品もあります。そうした製品は、日本では医薬品医療機器等法(薬機法)に違反します。
効果を強調するために医薬品成分をこっそり配合した健康食品は、言い換えれば、安全性を確認していない未承認の医薬品に該当します。いかに危険であるかが容易に想像できるでしょう。
摂取するだけで痩せられる食品は危険…食品安全委員会が注意喚起
食品の安全性を評価する内閣府の食品安全委員会は、痩身効果を強調した食品について、次のような注意喚起を行っています。
「『運動や食事制限なしに痩せられる』といった類のうたい文句には注意が必要で、多くは効果もないと思われます。食べて痩せる食品は栄養状態を低下させる有害物といえます。仮に何らかの効果がある場合は、その作用の仕組みを考えれば、安全性におけるリスクが高いと考えられます」。
さらに、「なかには医薬品成分やそれに類似した成分、規制対象となる成分が含まれているものもあり、重篤な肝障害に至った例や死亡した例もあります」と指摘しています。
健康食品の購入は正規ルートで
健康食品は健康をサポートするものです。摂取するだけで、運動もせず、カロリー制限もせずに、見た目ではっきりとわかるほど痩せられるという効果は持ち合わせていません。もし、そのように宣伝している場合は、嘘をついているか、医薬品成分が含まれているか、のどちらかを疑ってみましょう。
特に個人輸入した健康食品については、健康被害のリスクが大きいため、注意が必要です。これに加えて、販売者の身元確認が難しいSNSやフリマから安易に購入することも避けるべきです。 健康食品の購入は、販売会社やメーカーの公式サイト、ドラッグストアやスーパーなどの正規ルートならば安心できます。