「シリカ(ケイ素)」を配合した飲料やサプリメントが流行していますが、(独)国民生活センターは消費者に向けて「商品を購入・利用するときは必要性をよく検討しましょう」と呼びかけています。いったい、どうしてでしょうか?
「美容に良い」「ダイエットに役立つ」って本当?
シリカは二酸化ケイ素などで構成され、健康食品業界では「シリカ=ケイ素」として宣伝しています。
ケイ素は地殻中で酸素の次に多い元素で、微量ミネラルの1種。岩石や土壌を構成し、水道水やさまざまな食品にも含まれています。
ケイ素は、動植物では二酸化ケイ素やケイ酸塩として存在し、骨や細胞壁の構成に役立っています。
ここ最近、「シリカ入り」「ケイ素入り」とうたった飲料水やサプリメントが販売され、人気を集めています。一説によると、国内で300億円市場を形成しているとも。
各社の販売サイトを見ると、「美容に良い」「ダイエットに役立つ」といった効果をうたっています。そうした宣伝によって人気が高まっているわけですが、本当に痩身効果などが期待できるのでしょうか?
国民生活センターが「必要性をよく検討しましょう」と注意喚起
シリカ(ケイ素)入り飲料の流行に伴って、消費者の苦情も増えています。国民生活センターには2017年度から2022年9月末までの5年間で、消費者からの相談が429件も寄せられています。特に2021年度から急増しています。
主な相談内容は、「子どものアトピーに効くとの体験談を信じてケイ素水をネット通販で購入したが、効果がない」、「ケイ素のパウダーを飲み続けているが、何の効果もない。このまま飲み続けても大丈夫なのか」など。整体師から「シリカを含む水を塗ると、コロナに感染しない」と言われて購入した方もいます。
しかし、「アトピーに効く」「コロナに効く」をはじめ、美容やダイエットの効果についても十分な根拠はないようです。
国民生活センターでは、「ケイ素の摂取による有効性については信頼できる十分な情報がないとされており、多く摂取することの有効性についても明確な情報は見当たりません」と説明。シリカ(ケイ素)入り商品を購入する場合には、「必要性をよく検討しましょう」と呼びかけています。
飲料やサプリメントからシリカ(ケイ素)を余計に摂取しても、意味があるかどうかが不明なため、飛びつく前に慎重に考えるように促しているわけですね。
シリカ(ケイ素)入り飲料で表示値を下回る含有量
国民生活センターでは、シリカ(ケイ素)を配合したペットボトル入り飲料などを対象にテストを実施しました。
その結果、飲料10商品のケイ素の含有濃度は1リットルあたり20~40mgで、ほとんどの商品で表示値よりも実際の濃度が低いことがわかりました。これは、食品表示法や景品表示法に抵触する恐れがあります。
通常の食事でケイ素の摂取不足は起こらない
販売会社のウェブサイトでは、通常の食事からの摂取ではケイ素が不足しがちとなり、積極的な摂取が必要という記載が散見されます。しかし、これは消費者を誤認させる説明です。ケイ素については、1日あたりに必要な摂取量が明確でないことから、厚生労働省の「日本人の食事摂取基準2020年版」では、「推奨量」「目安量」などを設定していません。欧米も同様です。
ケイ素は、ミネラルウォーターや水道水、ビール、穀類や野菜などのさまざまな食品に含まれています。私たちは日頃の食事や飲み物からケイ素を摂取していて、通常の食生活をしていれば、ケイ素の摂取不足は起こらないと考えられています。
シリカ(ケイ素)入り飲料やサプリの有効性は不明
前述したように、飲料やサプリメントによって、シリカ(ケイ素)を上乗せして摂取することによる有効性についても、現時点では確認されていません。
国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所によると、「老化を予防する」「美容に良い」といった宣伝については、信頼できる十分な情報が見当たらないとしています。
ケイ素の安全性については、通常の食事や一般的な食品・飲料に含まれる量を摂取しても問題ありません。ただし、妊娠中の方や授乳中の方が大量に摂取した場合の安全性情報は十分に整備されていないため、シリカ(ケイ素)入り飲料やサプリメントの利用は避けるべきです。
コンプライアンスの低い販売会社に要注意
健康食品市場を見渡すと、根拠もなく、「〇〇に効果がある」と宣伝するケースが少なくありません。その多くは、医薬品医療機器等法(薬機法)や景品表示法に違反する行為です。そうした広告を展開する企業ではコンプライアンスが低いことから、売買契約や解約をめぐっても消費者トラブルが後を絶ちません。
安心して健康食品を利用するために、信頼できる販売会社かどうか、宣伝内容が行き過ぎていないかどうか、といった点に注意しましょう。