藻類は自然の恵みを受けて、様々な栄養成分を凝縮しています。日頃の食事で口にするノリやコンブ、健康食品の原料に使用されるクロレラやスピルリナなど多くの種類があります。昨年12月、農林水産省は「有機藻類」の日本農林規格(JAS)を制定。有機をうたう藻類の登場は、世界的な潮流である持続可能な食料生産に沿ったものとして注目されそうです。
藻類って何?
藻類とは、光合成を行う生物のうち、地上に生息しているコケ植物やシダ植物、種子植物を除いたものを指します。
日頃、私たちが食べるノリ・ワカメ・コンブも藻類の仲間。健康食品に使用されるクロレラやスピルリナといった微細藻類もその一つです。
藻類の多くは淡水や海水に生息しています。ほかの植物と同じように光合成を行い、二酸化炭素を吸収して酸素を放出します。
藻類は栄養成分の“宝庫”

それぞれの藻類には、多様な栄養成分が含まれています。自然と太陽の恵みを受けた栄養満点の食材なのです。
ノリはたんぱく質と食物繊維が多く、ビタミン類、鉄・カルシウムなどのミネラル類も含まれています。ワカメもたんぱく質や食物繊維をはじめ、カルシウム、ビタミンAなどが豊富。また、コンブに多く含まれるフコイダンは、機能性を持つ成分として健康食品に利用されています。
クロレラやスピルリナといった微細藻類も、たんぱく質・食物繊維・ビタミン・ミネラルなどがぎっしり詰まっています。海のスーパーフードとして、健康食品市場で一定の地位を築いています。
クロレラとは?
クロレラは淡水に生息する緑藻の一種。多数の種類があり、直径2~10マイクロメートルと微細で、球形や楕円形をしています。
成分を見ると、クロロフィル(葉緑素)とたんぱく質が多く、ビタミンB2・鉄・マグネシウムなども含みます。
クロレラの健康食品は既に大きな市場を形成し、定番の素材となっています。
スピルリナとは?
スピルリナは、アルカリ度の高い湖などに生息する藍藻の一種。主に熱帯や亜熱帯地域に自生しています。メキシコやアフリカの一部地域では、古くからたんぱく源として利用されてきたと言われています。
スピルリナにはたんぱく質や食物繊維、各種のアミノ酸、ビタミン・ミネラルなどが含まれています。
ビタミン類はビタミンAの前駆体であるβカロテン、ビタミンB群など。ミネラル類は鉄・カルシウム・マグネシウム・カリウムなど。このほか、リノール酸をはじめとした脂質も含みます。
ヘトマコッカスやドナリエラも注目素材
近年では、藻類の一種であるヘトマコッカスに含まれる「アスタキサンチン」という成分が脚光を浴びています。アスタキサンチンはカロテノイドの一つで、エビ・カニの殻や鮭にも含まれています。美容・健康への効果があることから、化粧品や健康食品の原料として利用されるようになってきました。
ドナリエラも機能性を持つ藻類です。楕円形をしていて、2本の鞭毛を持っています。ドナリエラ由来のカロテノイドは、化粧品や健康食品に利用されます。
ミドリムシ(ユーグレナ)は動物!?
近年、「ミドリムシ(ユーグレナ)」という言葉を耳にすることが増えてきましたね。実は、ミドリムシは藻類と動物の両方の性質を持つ、ちょっと不思議な生物なのです。
ミドリムシには葉緑体があり光合成を行いますが、植物特有の細胞壁はありません。同時に、細胞を変形させる運動を行ったり、鞭毛によって遊泳したりします。藻類の特徴を持ちながら、動物特有の活動も行っているわけですね。
栄養面も、植物に含まれるビタミン類やミネラル類に加え、魚類に含まれる不飽和脂肪酸(DHA・EPAなど)も含んでいます。
ミドリムシは化粧品や健康食品への用途だけでなく、バイオエネルギーとしての活用も進められています。
農林水産省の「有機藻類」JASがスタート
これまで難しいとみられてきた藻類の有機認証ですが、農林水産省は2021年12月7日、「有機藻類」の有機JASを制定。2022年1月6日から施行されています。
これに伴って健康食品業界では、有機JAS取得に向けた動きが本格化しつつあります。今後は藻類を原料に用いた健康食品で、「有機」と表示した商品が増えると予想されています。
世界中で持続可能な食料生産や環境保護が叫ばれるなか、有機藻類の普及はその一助になると期待されています。
有機JASの対象は海水・汽水・淡水で生産される藻類で、植物プランクトンを含みます。生産(養殖)現場では、天然物質以外の資材の使用を禁止しています。
有機JASを取得した藻類については、「有機藻類」「有機藻類〇〇〇(一般的な藻類の名称)」「オーガニック〇〇〇(同)」などと表示できます。
日常の食事に藻類を取り入れよう!

ワカメやコンブなどの海藻類にも、クロレラやスピルリナといった微細藻類にも、様々な栄養成分が詰まっています。
あなたの美容・健康を守るために、食事に利用したり、健康食品として補給したりするなど、藻類を上手に利用してみましょう。