「サプリメントを飲むだけで病気が治る」「1カ月で10㎏痩せる」など、事実と異なる効果をうたう健康食品の広告は後を絶ちません。そうした行き過ぎた広告は、間違った使用方法を利用者に植え付けてしまいます。健康食品を正しく選択・使用するために、私たちはどのような広告表現に注意すればよいのでしょうか。最新の動向を紹介します。
消費者庁の改正版「留意事項」でクローズアップされた表現
消費者庁は「健康食品に関する景品表示法及び健康増進法上の留意事項について」という文書を公表しています。これは、健康食品の販売事業者に向けたもので、広告・表示の注意点を整理しています。
「留意事項」は、2022年12月5日に全面的な改正が行われました。「留意事項」を通して、健康食品の広告でどのような点に注意すべきかが理解できます。今回の改正でクローズアップされた広告表現を紹介します。
「妊活」「腸活」など「〇〇活」とうたう広告にご用心!
ポイントの1つ目に、「妊活」「腸活」という表現があります。あなたも、こうした表現を目にしたことがあるのではないでしょうか?
「妊活」「腸活」と聞くと、多くの場合、「妊活」は妊娠率を向上させる、「腸活」はお腹の調子を良くする、というイメージを抱くと考えられます。
しかし、妊娠率を向上させることを科学的に確認した食品は存在しません。消費者庁では「妊活」の表現を悪質と捉え、厳しく監視しています。
「腸活」のお腹の調子を良くするというイメージも、特定保健用食品(トクホ)や機能性表示食品以外で伝えると、景品表示法や医薬品医療機器等法に違反します。
「〇〇活」という表現には、ほかにも「脳活」「骨活」などがありますが、これらも法令違反に問われる可能性があります。
「こんなお悩みありませんか?」の問いかけ…各チェック項目に注意

ポイントの2つ目は、「こんなお悩みありませんか?」という表現。健康食品の広告では、「こんなお悩みありませんか?」と問いかけて、チェック項目として「甘いものが我慢できない」「運動が苦手」といった悩みを列挙する手法が流行っています。
この手法自体は可能なのですが、チェック項目として挙げた悩み事が、健康食品の摂取によって解消できない場合には、景品表示法や健康増進法に違反します。
商品選びの際には、各チェック項目(悩み事)についても、「本当に解消できるの?」と慎重に考えるクセをつけましょう。
配合成分の広告も法令違反の可能性
ポイントの3つ目は、健康食品に配合している成分の広告です。
最近の取り締まり事例を見ると、商品の広告は問題ないものの、サンプルや商品の発送時に小冊子またはチラシを同梱し、その中で配合成分の効果について「免疫力を高める」などと説明する手法が横行しています。
また、車内広告で「○○乳酸菌」によるストレス軽減などの研究データを表示し、その翌週に同じ車内で「〇〇乳酸菌入りヨーグルトを発売」と商品を宣伝する手法も見られます。
これらの手法は、法の盲点を突いたものとして業界で多用されてきた経緯がありますが、今回の「留意事項」の改正により、違法であることがいっそう明確にされました。
健康食品の不適切な広告“あるある”

最新の動向として、(公社)日本広告審査機構(JARO)が2023年3月30日に公表した中・高校生や大学生などに向けた啓発資料「ダメダメ3匹を見つけよう」についても紹介します。
ここでは、「事実と違う嘘の広告」「大げさな広告」「まぎらわしい広告」の3点に注意するように呼びかけています。
健康食品については、ここ最近のありがちな不適切な事例として、次のような表示を挙げています。
「飲むだけで女性ホルモンドバドバ! バストアップ」
「ミネラルパワー水でコロナ撃退!!」
「つらい花粉症に〇〇ヨーグルト」
「1日1粒飲むだけ!もう我慢しないダイエット たった10日でマイナス10㎏」
「身体の中から口臭ゼロ体質に」
「不妊治療成功者続出 およろこび報告600組突破!」
「ひざ腰の痛みが消えた」
「ぼんやり視界がはっきり クリアに! メガネがいらなくなりました」
こうした広告を見かけたら、悪質事業者である可能性が高いと理解し、警戒してくださいね。
コンプライアンスを重視した販売事業者の商品を選ぼう!

健康食品には病気を治療したり、短期間で何㎏も痩せたりする効果はありません。健康や美容のためには、まずは規則正しい生活、バランスの取れた食事、適度な運動が基本となります。
それにプラスして、高品質の健康食品を上手に活用すれば、あなたの健康や美容の維持をさらにサポートしてくれるでしょう。
大げさな広告を行う販売事業者はコンプライアンスが欠如していることから、品質面の不安もあり、また購入契約・解約時のトラブルも生じやすいと言えます。コンプライアンスを重視する真面目な販売事業者から、あなたに合う商品を選んでくださいね。