健康ブームを背景に、乳酸菌入りのさまざまな商品が登場。乳酸菌が体に良いことは知っているけど、「生きた菌と死んだ菌は何が違うのだろう」、「どのくらいの数の菌が入っていると効果があるのだろう」といった疑問もあるのでは?乳酸菌について知っておきたいポイントを解説します。
腸で働く善玉菌

乳酸菌は、発酵作用によって糖から乳酸を作る微生物の総称。善玉菌の一つで、腸内の悪玉菌の増加を抑えます。ひと口に乳酸菌と言ってもその種類は多く、数千種類に上ると言われています。
乳酸菌入り食品で真っ先に頭に浮かぶのは、ヨーグルトでしょう。各メーカーでは、ヨーグルトに含まれる乳酸菌の名称を広告に用いて、アピールしています。なぜかと言うと、乳酸菌の種類によって機能性が違うからです。
乳酸菌の機能性については、国内外の多数の研究によって確認されています。機能性を表示できるトクホ(特定保健用食品)では「お腹の調子を整える」など。機能性表示食品では、「体脂肪を減らす」「睡眠の質の向上」「肌の乾燥を緩和」などを表示できる商品が登場しています。
ビフィズス菌とどう違うの?
乳酸菌と並んで、「ビフィズス菌入り」をうたう食品も見かけますが、乳酸菌とビフィズス菌は違うのでしょうか。
ビフィズス菌も善玉菌の一つで、乳酸菌とともに腸で働きます。ビフィズス菌は乳酸菌の仲間ですが、別のジャンルに分類する傾向があります。
と言うのも、乳酸菌が糖から乳酸を作り出すのに対し、ビフィズス菌は発酵によって乳酸だけでなく、酢酸も作るからです。また、一般的にビフィズス菌は酸や酸素に弱く、ヨーグルトなどに使いにくい点も乳酸菌と異なります。
実は、腸内細菌の1割程度をビフィズス菌が占め、乳酸菌の100倍以上も存在しているのです。悪玉菌に対抗するということに限れば、ビフィズス菌が主役で、乳酸菌は脇役と言ったところかもしれませんね。一方、乳酸菌には多様な機能性があるので、それぞれの特長を踏まえて商品を選択することが大切です。
生きた乳酸菌と死んだ乳酸菌

消費者の間では、乳酸菌についての疑問も少なくないようです。「生きた乳酸菌が腸まで届く」という宣伝文句を耳にしますが、「生きた乳酸菌」と「死んだ乳酸菌」は何が違うのでしょうか。
結論から言うと、健康に役立つという点ではどちらも変わりません。実は「生きた乳酸菌」も腸へ届くまでに、胃などでその多くが死んでしまいます。しかし、生きて腸まで届いた乳酸菌も死んだ乳酸菌も、同じように健康に良い働きをします。
また、口から入った乳酸菌は、生きた菌も死んだ菌も腸にとどまらず、2~3日で通過します。このため、乳酸菌は「通過菌」とも呼ばれます。腸を通過してしまいますが、その間に健康への効果を発揮するわけです。
加工食品に使用する「死んだ乳酸菌」は、予め加熱殺菌を施しています。加工時に熱を加える菓子、飲料、みそ汁などのさまざまな食品にも使いやすいというメリットがあります。
植物性乳酸菌か、動物性乳酸菌か
乳酸菌を植物性と動物性に分類する場合もあります。しかし、機能性の面では、植物由来の乳酸菌であっても、動物由来の乳酸菌であっても同じ。イメージの良さから「植物性乳酸菌」とうたうことが多いようです。
もう一つ、広告で気になるのが、商品に含まれる乳酸菌の数。「5,000万個入り」や「100億個入り」、さらには「1兆個入り」というキャッチコピーも。
どのくらいの数の菌が入っていれば、健康に良いのでしょうか。結論を言えば、はっきりとしたことはわかっていません。乳酸菌の種類によっても、機能性を発揮するために必要な菌数は大きく異なります。
目安として、トクホや機能性表示食品の根拠としている試験が参考になります。おおよそですが、1日当たりに1億個~3,000億個の乳酸菌を摂取させた試験が多く、乳酸菌の種類によってかなり違ってきます。つまり、菌数だけで良し悪しを判断できないわけですよね。
高い安全性、「通過菌」であるメリットも
乳酸菌のメリットとして、安全性が高いことも挙げられます。健康な人の場合、乳酸菌の摂取による有害事例はほとんど知られていません。
前述したように「通過菌」であるため、乳酸菌を過剰に摂取したとしても、腸内にとどまり続けることがなく、健康被害が発生する可能性は低いと考えられています。ただし、妊娠中や授乳中の人については、信頼できる十分な情報がないため、過剰摂取を避けるように注意してください。
なんちゃって「乳酸菌入り」商品

ここまで見てきたように、乳酸菌には多くの種類があり、機能性も、必要な摂取量も異なります。安全性については特段の心配は不要。その上、乳酸菌による独特の風味は人気があります。乳酸菌が健康食品の優等生であることをわかっていただけたでしょうか。
ただし、あまりおすすめできないのは、「乳酸菌入り」とうたう目的で、ほんのわずかな量の乳酸菌を使用した商品。そうしたなんちゃって「乳酸菌入り」商品の場合、機能性は期待できません。もちろん、風味で選ぶのなら何も問題ありません。
現在、市場では多種多様の乳酸菌入り食品が流通。今後も新たな商品が相次いで登場することでしょう。消費者の皆様は、どれを利用すればよいのかと悩むかもしれませんが、今回の記事を参考に賢く選んでくださいね。