インターネット通販の消費者相談が様変わり?!

インターネット通販は、私たちの日常生活に欠かせない存在となってきました。その一方で、契約トラブルが発生するなど、用心しなければならない面もあります。最近のインターネット通販に関する消費者相談の傾向について解説します。

「化粧品」のトラブルが急増、「健康食品」は激減

国民生活センターには全国各地の消費者相談が集まってきます。2021年度の集計結果によると、消費者相談の傾向に大きな変化が生じています。毎年、相談件数の上位に並んでいた「健康食品」のトラブルが激減したのです。

商品別で見ると、「健康食品」の相談件数は、20年度が第2位で約6万件に達しました。ところが、21年度はその半分以下の2万9,000件に激減。減少件数は「健康食品」が第1位でした。

減少件数の第2位は「他の保健衛生用品」で、これはコロナ禍によるマスクや除菌剤の供給不足が落ち着いたためと考えられます。20年度に日本中がパニックに陥ったことの反動による減少ですが、それでも減少件数は約1万9,000件と、「健康食品」の減少件数(約3万1,000件)を大きく下回っています。

反対に相談件数がもっとも増加したのが、「化粧品」です。20年度から約8,000件も増え、約4万5,000件に上りました。

定期購入をめぐる消費者トラブルに異変

「健康食品」の相談件数が激減し、「化粧品」が急増したのは、なぜでしょうか。最大の理由に、定期購入をめぐる消費者トラブルの変化が挙げられます。

インターネット広告の「初回実質0円」「お試し」といった表示を見て申し込んだものの、実際には複数回の購入が条件だったというトラブルが後を絶ちません。

国民生活センターによると、定期購入に関する相談件数は2016年度に約1万5,000件でしたが、19年度に5万件を突破。20年度に5万6,000件を超え、21年度には約5万8,000件へとさらに増加しています。

詳細を見ると、21年度に変化が生じていることに気づきます。20年度までの定期購入に関する相談は「健康食品」と「化粧品」がほとんどを占め、特に「健康食品」が多い傾向がありました。

ところが、21年度の定期購入に関する相談件数は、第1位が「化粧品」(約3万4,000件)で、第2位の「健康食品」(約1万8,000件)を大幅に上回っています。定期購入をめぐる消費者トラブルの主役が、「健康食品」から「化粧品」へ移行したわけです。

背景に広告規制の強化?

なぜ、そうした変化が起こったのでしょうか。

業界内では、広告の規制や取り締まりが強化されるなかで、悪質なアフィリエイト広告が、取り締まりのターゲットとなりやすい「健康食品」から、「化粧品」へ移行したという見方が出ています。

これに加えて、定期購入商法への対策を強化するため、特定商取引法の改正に向けた議論が行われたことで、改正法の施行(2022年6月1日)を待たずに、健康食品業界に抑止力が働いたという指摘もあります。

定期購入トラブル、「電子タバコ」など新たなジャンルに拡大

「健康食品」の定期購入トラブルは激減したのですが、前述したとおり、定期購入に関する相談件数の合計数はむしろ増加しています。

その要因に、「化粧品」の相談件数の増加に加え、新たに「電子タバコ」や「医薬品」の定期購入トラブルが目立つようになったことが挙げられます。これは、2021年度に顕著となった傾向です。

国民生活センターによると、21年度に寄せられた「電子タバコ」「医薬品」などの定期購入に関する相談件数は、合計で約5,800件を数えました。

悪質な定期購入商法に新たな手口が登場

定期購入商法については、2022年6月1日施行の改正特商法によって厳しい規制が敷かれました。

ところが、その裏をかくような新たな悪質な手口が登場しています。国民生活センターに寄せられた消費者相談の事例を紹介します。

「スマートフォンで『定期縛りなし』『初回約2,000円』という美容液の定期コースの広告を見て、販売サイトで注文した。初回の商品が届き、販売業者に電話で定期コースを解約したいと伝えたところ、『4回の購入が条件の定期購入コースの契約になっている』と説明された。広告には『定期縛りなし』と記載されていたと伝えたが、『特別割引クーポンを<利用する>のボタンを押してコースを変更しているため、4回約4万円分の商品を購入する必要がある』と説明された」(40代女性)。

いつでも解約できる旨の広告を見て申し込むと、注文完了後に「特別割引クーポン」の利用を勧める表示が出てきて、利用すると、知らない間に、複数回の購入が条件の定期購入コースに変更されるという手口です。

注文ボタンを押す前に行うこと

終息の気配が見えないインターネット通販の詐欺的な定期購入商法に、私たちはどう対応すればよいのでしょうか。

対策の1点目は、販売サイトの利用規約や購入条件を確認すること。面倒かもしれませんが、トラブルを防ぐために必要です。

2点目は、申し込みの最終確認画面に、「購入回数・量、代金、支払い時期・方法、商品の引き渡し時期、解約方法」が記載されているかを確認しましょう。これらがわかりやすく明記されていない場合は、特商法違反の疑いがあります。注文をストップし、もう一度、購入条件を確認してください。

3点目は、申し込みの最終確認画面をスクリーンショットで保存すること。トラブルに巻き込まれた際に、有力な証拠となります。

4点目は、解約を申し出る場合の連絡先が明記されているかを確認しましょう。

インターネット上には膨大な数の販売サイトがあります。広告を見てお得だと思って、慌てて申し込まないことが大切です。信頼できる販売サイトを見つけて、ネットショッピングを楽しんでくださいね。

ABOUTこの記事をかいた人

フリーライター。食品、サプリメント、医薬品、医療、通販などの分野を中心に取材・執筆活動。玉石混交の情報が氾濫する中で、正しい情報の発信を目指します。千葉ロッテマリーンズを応援。仕事で疲れた時は、MISIAさんの歌が一番の癒し。