SNS上のメッセージのやり取りによって健康食品を購入し、多額の代金を請求されるという消費者トラブルが増加しています。どのような手口なのでしょうか?被害に遭わないようにするための注意点も合わせて解説します。
SNSのメッセージ機能でダイエット食品など販売
「オンラインダイエット指導:〇〇(氏名)」「食育健康アドバイザー」などのアカウント名で消費者に近づき、SNSのメッセージ機能を使って、高額な健康食品の購入を強要する手法が問題となっています。
このような手法を「チャット勧誘販売」と呼びます。LINEなどのSNSに広告を出して、一般消費者と“友だち”になり、SNSのメッセージ機能を使って相談に乗りながら、売買契約まで行うという手口です。
ダイエット食品の販売では、「10キロ痩せられる」「絶対にリバウンドしない」など、効果について断言するものの、その根拠は不明。また、販売者の身元が不明で、代金を支払ってしまうと取り戻すことが困難です。
広告で栄養士などをかたり近づく

典型的な手口を見ていきましょう。
あなたがスマートフォンでSNSやインターネットを閲覧していると、ダイエットの広告が表示されます。
広告の冒頭には「体重を落とすだけでバストは減らない」、「減量・脂肪落とし・カラダづくり」のキャッチコピーとともに、白衣を着た栄養士の写真を掲載。本文には、利用者の「1カ月の相談を終え、先生(写真の栄養士のこと)を信用してみようと決意し、先生の方法でダイエットを始めました。2カ月でなんと20キロもやせました」といった体験談が続きます。それぞれのページの下には目立つように、「先生のLINEを追加します」のボタンが配置されています。
そして、あなたがボタンをクリックすると、LINEでのやり取りがスタート。栄養士をかたる人物から、「はじめまして。ダイエットプランを作りたいと思いますので、身長・体重・年齢・性別を教えてください」、「永遠にリバウンドしません」などのメッセージが届き、相談が始まります。
次に、「体質改善プラン」として、健康食品の購入について標準タイプ(7万円)、普通タイプ(6万円)を案内し、「追加料金は一切ありません」と説明。あなたがどちらかのタイプを選び、購入すると伝えると、代金の支払方法は「代金引換」になるとの返信があります。
言いくるめて別の高額サプリを販売

実は、ここまでは詐欺的な手口の第1段階にすぎません。怖いのはここから。
あなたは、購入した健康食品によって、短期間に大幅な減量ができると期待するわけですが、摂取を開始して間もなく、第2弾の勧誘がスタートします。では、続きを見ていきましょう。
商品の到着後、届いた健康食品を撮影した画像をLINEで送るように依頼し、ダイエットプランに基づく摂取を開始させます。しかし、摂取開始からわずか数日後に、今度は脂肪を溶かす必要があると説明し、別の商品を追加購入するように勧誘します。
当然ながら、あなたは追加費用が発生しないとの説明を受けたと抗議します。すると、「体質改善には追加料金は一切ありません。しかし、脂肪を溶かすことと体質を改善することは別」と説明し、脂肪を溶かす健康食品として高効率型(20万円)、普通型(18万円)の購入を勧誘します。
あなたは「そんな高額な代金を支払えない」と断りますが、販売業者は「あなたの都合で調合したダイエット材料で、ほかの人は使用できないので返品できません」と購入を強要してきます。
20万円以上の商品代金を請求
このような手口に遭う方は既に1万人を大きく超えるとみられ、実際に被害に遭うと、少なくとも20万円以上、多いと100万円以上をむしり取られます。商品代金の支払方法は「代金引換」しかなく、支払ってしまうと取り戻すのは絶望的です。
また、アカウント名をコロコロと変えて、同様の手口を繰り返すため、行政機関による取り締まりも困難を極めます。商品の発送業者までたどり着くことができても、販売業者を特定するまでには至りません。
国も対策を検討中
チャット勧誘販売による被害が増えていることから、政府内でも対策を検討中です。消費者委員会は2023年8月10日、「チャットを利用した勧誘の規制等の在り方に関する消費者委員会意見」を策定。消費者庁に対し、特定商取引法の「通信販売」として、チャット勧誘販売の規制を検討するように求めています。
「意見」に盛り込まれた主な対策は、(1)事業者名・販売目的などの明記の義務化、(2)「再勧誘の禁止」規定などの導入、(3)「取消権」「クーリング・オフ」の適用――など。しかし、消費者庁では、被害の実態把握が進んでいないことなどを理由に、今すぐ義務化に動くことに慎重のようです。
支払方法に「代金引換」しかない…怪しいと感じたらやり取りをストップ

被害に遭わないようにするには、どうすればよいのでしょうか?
例えば、以下のような点が該当する場合には、警戒を強めてください。不審に感じたら、SNS上でのやり取りをストップしましょう。
・販売業者の素性がはっきりとわからない。
・「絶対に痩せる」など断定的な説明を行う。
・「1カ月で5キロ減量」など著しい効果を説明する。
・支払方法が「代金引換」しかない。
インターネット取引はさまざまな手法が登場し、便利な半面、悪質商法も混在しています。このため、健康食品の購入は信頼できる販売サイトで行うことが鉄則です。