法改正の効果も乏しい? インターネット通販の定期購入トラブルが減らない!

健康食品のインターネット通販で深刻な問題となっているのが、悪質な定期購入商法による消費者トラブル。特定商取引法(特商法)の改正後も、トラブルの件数は減っていません。このため、国は特商法による取り締まりを強化しつつあります。違反事例を通じて、安心してネット通販を楽しむための注意点を解説します。

定期購入トラブルとは?

お気に入りのサプリメントや化粧品をインターネット通販で注文する場合、毎回、新たに申し込むのは面倒ですよね。その際に便利なのが定期購入契約です。定期購入契約は大きく分けると、規定の購入回数(4回や5回など)に基づくものと、止めたくなったタイミングで契約を解除する無期限の契約があります。

定期購入契約には買い忘れを防ぐというメリットもあります。その一方で、悪質なネット通販会社による消費者トラブルも後を絶ちません。販売サイトで「お試し」とうたいながら、申し込むと実際には定期購入契約だったという内容です。

SNS上の広告がきっかけに

最近の傾向を見ると、定期購入をめぐるトラブルは、SNS上の広告を発端とするケースが増えています。LINEなどの閲覧中に出現した広告や、スマホゲームをしている途中で出現した広告などです。

あなたも、「シミが消える」という美容クリームや、「飲むだけで〇㎏痩せられる」というサプリメントが「初回〇〇円」で購入できるとうたった広告を見たことがあるのではないでしょうか?

そうした宣伝に興味を持った方は、SNS上の広告に表示されているリンク先の販売サイトにアクセスし、定期購入契約だとは知らずに、「お試し」のつもりで注文することになります。しかし、最初の商品が届いた数週間後にまた同じ商品が届き、定期購入契約だったと気づくわけです。

巧妙化する悪質な手口

最近では、さらに手の込んだ悪質な手口も登場しています。国民生活センターに寄せられた40代女性からの相談事例を紹介します。

「スマートフォンで『定期縛りなし』『初回約2000円』という美容液の定期コースの広告を見て、販売サイトで注文した。初回の商品が届き、販売業者に電話で定期コースを解約したいと伝えたところ、『4回の購入が条件の定期購入コースの契約になっている』と説明された。『特別割引クーポンを<利用する>のボタンを押してコースを変更しているため、4回約4万円分の商品を購入する必要がある』と説明された」。

この事例では、申し込んだ時点では4回の購入が条件の定期購入契約ではなかったものの、申し込み直後に表示された「特別割引クーポン」を利用したことで、いつの間にか4回の購入が条件のコースに変更されていたそうです。

法改正後の2023年度も約8万件の消費者相談

定期購入をめぐる消費者トラブルの急増を受けて、消費者庁は特商法を改正し、2022年6月1日に施行しました。

改正により、ネット通販の定期購入契約の場合には、申し込み最終確認画面(「申し込む」などと表示されたボタンを押すと、注文が完了する注文手続きの最終画面)に、「各回の分量、総分量」「販売価格(2回目以降の代金も)」「各回の支払時期」「各回の商品発送時期」「解約の条件・方法」などの6項目の表示を義務づけました。

しかし、全国消費⽣活情報ネットワークシステム(PIO-NET)に登録された定期購入に関する消費者相談の件数は、法改正後も減少せずに高水準で推移しています。

2021年度は約5万8000件、2022年度は9万8000件でしたが、法改正後の2023年度も約8万件となっています。さらに、2024年度も同水準で推移したとみられています。

解約手続きを複雑にした事例も

法改正による抑止効果だけでは問題を解決できないこともあり、消費者庁は特商法による行政処分に注力しています。

2024年10月に行った行政処分では、美容液のネット通販会社が9カ月間の業務停止命令を受けています。9カ月間の業務停止命令はかなり重い処分と言えます。

この事業者は、チャットボットページから定期購入契約を申し込んだ場合、申し込み最終確認画面には解約方法の一部しか表示せず、「利用規約」に異なる条件を表示するなど、ユーザーが容易に解約できないようにしていました。例えば、電話による解約を希望する場合、自動音声で案内される別の電話番号にかけ直させて、解約の仮受付を行わせ、事業者からの「定期コースの停止可否の結果」のメールを待たせるという内容でした。

このように悪質な定期購入商法の手口は、複雑化・巧妙化する傾向にあります。

どのように対応すればいいの?

では、悪質な定期購入商法を避けるために、どうすればよいのでしょうか?

まず、広告の「お試し」「初回500円」といった表示を鵜呑みにせずに、申し込み最終確認画面を十分にチェックすることが大切です。その際、各回の分量、2回目以降の代金などとともに、契約を解除するための条件・方法が明記されているかどうかを確認しましょう。

連絡先の電話番号に、いつでも容易につながるかどうかを事前に確認することも重要です。これに加えて、「利用規約」もしっかりと確認しなければなりません。

悪質なネット通販会社では申し込み最終確認画面の表示ルールを順守していないケースもあるため、初めて利用するような販売サイトについてはスクリーンショットなどで保存しておくことも忘れないようにしてくださいね。トラブルに遭ったときに証拠がないと解決が困難になるため、必ず画面を保存するようにしましょう。

信頼できる販売サイトを利用しよう!

ネット通販を安心して楽しむためには、誇大な広告を疑うことが基本です。また、定期購入コースを利用する場合は、信頼できる販売サイトから申し込むようにしましょう。

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フリーライター。食品、サプリメント、医薬品、医療、通販などの分野を中心に取材・執筆活動。玉石混交の情報が氾濫する中で、正しい情報の発信を目指します。千葉ロッテマリーンズを応援。仕事で疲れた時は、MISIAさんの歌が一番の癒し。