週刊誌に「輸入食品は危険」という記事が掲載され、衝撃を受ける方も多いことでしょう。そうした報道は、一部の事案を切り取って大げさに表現していることも少なくありません。適切に判断するには、輸入食品の安全性がどのように確認されているのかを知ることが大切。輸入食品の安全性チェックの仕組みについて見ていきましょう。
私たちが口にする食品の6割以上が輸入

日本の食料自給率はカロリーベースで38%(2021年度)。言い換えれば、日本人の台所は6割以上を輸入に頼っていることになります。
先進諸国の食料自給率を見ると、カナダが266%、オーストラリアが200%、アメリカが132%、フランスが125%、ドイツが86%、イギリスが65%、イタリアが60%などで、日本は先進国の中で最低水準となっています。
輸出国・輸入時・日本国内の3段階で監視

輸入食品の安全性に対する責任は、最終的には輸入者や販売者が負いますが、行政機関も監視の目を光らせています。輸入食品の安全性は、どのようにチェックされているのでしょうか?
大きく分けると、輸出国・輸入時・日本国内の3段階で確認しています。
日本と海外諸国では、使用できる農薬や、食品製造で使える食品添加物に違いがあります。このため、輸出国に対して、日本の規制に関する情報を提供したり、違反原因の調査や再発防止策を要請したりします。その際、日本から担当者を派遣し、現地調査を実施することもあります。
このような取り組みを通じて、輸出国の事業者は、日本の規制に合った食料生産や製造・加工を行っています。
すべての食品に輸入届出の提出を義務づけ

輸入時の水際対策では、すべての食品に、検疫所へ輸入届出を提出することが義務づけられています。野菜・肉・魚介類といった生鮮食品、加工食品・飲料をはじめ、食品添加物や食器・容器包装なども輸入届出が必要です。
輸入届出は全国32カ所の「検疫所食品監視窓口」で受理し、輸入食品が日本の食品衛生法に基づく規格基準に適合するかどうかを審査します。
各検疫所では最初に、すべての食品を対象に、輸入者が提出した輸入届出の内容を審査します。この審査は、「食品衛生監視員」の資格を持った職員が行います。
日本の法律に沿った原材料や製造方法によって製造されたかどうか、食品添加物の使用方法が適切かどうかなどをチェック。過去に違反歴のある製造所で製造されたものではないかなども確認します。
輸入食品の約1割を検査

輸入時に検査するのは一部の食品ですが、違反の可能性の高い食品については必ず検査を実施します。これを「検査命令」と呼びます。
初めて輸入される食品に対しては、必要な検査を指導(指導検査)します。さらに、繰り返して輸入される食品については、「モニタリング検査」を実施します。
モニタリング検査では、それぞれの検疫所でサンプリングを行った上、高度な検査技術・機器を備える横浜や神戸の「輸入食品・検疫検査センター」で分析します。主な検査内容は、抗生物質・合成抗菌剤・ホルモン剤といった残留動物用医薬品、残留農薬、食品添加物、病原微生物、カビ毒、安全性未審査の遺伝子組み換え食品の使用の有無など。
これらによって、輸入食品の約1割を検査しています。2022年度の輸入食品の監視指導結果を見ると、輸入届出件数は約240万件。このうち20万2671件について検査を実施したところ、法違反に問われたのは781件で、廃棄または輸出国への積み戻しとなりました。
また、モニタリング検査の実施件数は延べ10万947件で、延べ158件を法違反と認め、回収措置などを行いました。
このように、審査と検査を組み合わせて管理する仕組みを敷いています。検査で違反が見つかると、廃棄や輸出国への積み戻しとなります。
週刊誌報道と実際のギャップ

週刊誌で中国産輸入食品が危険と煽る記事がたびたび報じられますが、実際はどうでしょうか?
2022年の検査実績を見ると、中国産の農産食品は約38万8000件を検査し、違反件数はわずか53件。畜産食品、水産食品はそれぞれ0件、その他食品も0件でした。輸入食品全体の違反割合と比べると、中国産が“危ない”という事実は見当たらないようです。
また、輸入牛肉については、ホルモン剤の使用を懸念する声も聞かれますが、2018年4月~2023年3月の期間、米国産牛肉でも豪州産牛肉でもホルモン剤の違反は0件となっています。
流通している食品で違反→輸入時の検査を強化

国内の取り組みはどうでしょうか?厚労省では日々、海外諸国の食品安全に関する最新情報を確認しています。どこかの国で食品による健康被害が発生したという情報をキャッチすると、日本に同じ食品が輸入されていないかを確認し、食品安全委員会や地方自治体と情報を共有して対応します。
既に日本国内で流通している輸入食品で違反が見つかった場合は、地方自治体から厚労省へ報告され、輸入時の検査を強化したり、輸出国に対して改善を要請したりします。
国産か輸入食品かはSDGsの観点で選択を

輸入食品は危険というイメージが先行しがちですが、実際のところ、危険な食品が輸入されないように手厚いチェックが行われています。安全性の面で、不安がる必要は小さいと言えるでしょう。
一方、「国産を選びたい」という消費者ニーズについては、地球温暖化防止やサステナブルな食品供給といった観点から、その重要性が高まっています。
国産か輸入食品かは、SDGs(持続可能な開発目標)の観点から選択するのが適切と言えるでしょう。





