健康志向を背景に世界中で“自然派”食品の人気が上昇中

健康志向の高まりを背景に、プラントベース食品、A2ミルク、自然派サプリメントなどが世界中で支持を広げています。また、日本ではコロナ禍が明けて訪日する海外旅行者が急増したこともあり、ベジタリアンやヴィーガンへの対応が重視されています。自然派食品の現状と、ベジタリアンやヴィーガンへの対応状況についてお話します。

日本でも普及してきたプラントベース食品

プラントベース食品は、植物由来の原材料を使用し、食肉や魚肉に風味も外観も似せて製造された食品のこと。消費者ニーズの多様化によって、従来の牛肉や豚肉といった動物性の原材料ではなく、植物由来の原材料を用いたプラントベース食品が増えています。

市場を見渡すと、食肉・卵・ミルク・バター・チーズなどの代替品が販売されています。このうち、大豆を原材料とした大豆ミートが代表的なものです。家庭用商品だけでなく、外食店舗でも大豆ミートを用いたメニューが提供されるようになってきました。魚肉の代替品としては、原材料に大豆や野菜を使用した植物ツナなどが登場しています。

大豆ミートや植物ツナは、低脂質で、コレステロールの心配もなく、良質なタンパク質が豊富なことから、健康面でも注目されています。

また、オーツ麦を使用したオーツミルク、米や玄米を原材料としたライスミルクも市場に浸透。豆乳などで作ったチーズやバターも見かけるようになりました。

一方、プラントベース食品を利用する際には注意も必要です。例えば、「大豆から作ったハンバーグ」「〇〇ミルク」とうたう食品では、すべての原材料が植物由来であるとは限らず、食物アレルギーを持つ方は原材料表示を十分に確認してくださいね。

A2ミルクの台頭

A2ミルクも、今後の食卓を賑わす商材として注目されています。A2ミルクは、牛乳のタンパク質の1種であるβ-カゼインの遺伝的変異に由来する牛乳を指します。日本でも酪農家の所得アップを目的に、A2ミルクの取り組みが始まっています。

牛乳に含まれるタンパク質の約8割を占めるカゼインは、リン酸の数やアミノ酸の構造の違いによって、いくつかのタイプに分けることができます。このうちβ-カゼインは、A1とA2の遺伝子型があり、A2を含むがA1を含まない牛乳をA2ミルクと呼びます。

A2ミルクは、「牛乳を飲むとお腹がゴロゴロする」という人の体に優しいと言われています。しかし、健康面の機能性については、今後の科学的研究が待たれる状況にあります。

健康志向の高まりを背景に、A2ミルクは世界的に注目されています。日本では一般社団法人日本A2ミルク協会がA2ミルクの認証制度を運営し、A2ミルクの品質担保に乗り出しています。

根強い人気の自然派サプリメント

食品添加物や遺伝子組み換え食品を原材料に使用しない自然派サプリメントに対するニーズも、世界的に根強いです。民間の調査によると、世界の関連市場は年平均で1割ほどの成長が続くと予想されています。

このように世界中で自然派サプリメントの需要が拡大していますが、その背景の1つとして、科学的研究によって天然成分と健康との関連が少しずつ明らかにされてきたことがあります。また、食品添加物や遺伝子組み換え食品といった人工的に作られたものを敬遠する消費者ニーズも、後押ししていると考えられています。

さらに、オーガニック食品を支持する層の広がりも、自然派サプリメントの人気に影響しているとみられます。オーガニック原料を用いたサプリメントを選択することは、化学肥料の製造工場から排出される二酸化炭素の削減につながり、環境保全にも貢献できます。

食品添加物、遺伝子組み換え食品、農薬を使った原材料を避けて、できるだけナチュラルな形で栄養成分を摂取したいというニーズは、今後も根強く続くと予想されています。

政府も後押し ベジタリアンやヴィーガンに適したJAS

世界的に見て、ベジタリアンやヴィーガンの存在感も増しています。主要100カ国・地域のベジタリアンとヴィーガンの人口は、新型コロナの感染拡大前の2018年には約6億5000万人で、欧米諸国を中心に毎年1%近く増加しています。日本では人口の約4%が、ベジタリアンとヴィーガンと推定されています。

また、コロナ禍が明けて海外からの訪問客が激増していますが、その中の一定割合がベジタリアンやヴィーガンを占めています(参考:2018年度の訪日客約3,119万人のうち、約167万人がベジタリアンとヴィーガンと推定)。一方、日本の外食店舗では、訪日客からの食材変更のリクエストに柔軟に対応できないケースが多く、訪日客の不満も多いようです。

こうした状況に対応するため、農林水産省では2022年に、「ベジタリアン⼜はヴィーガンに適した加⼯⾷品の⽇本農林規格」と「ベジタリアン⼜はヴィーガン料理を提供する飲⾷店等の管理⽅法の⽇本農林規格」の2つのJASを設けました。

加工食品のJASでは、使⽤してはならない原材料、混⼊防⽌や洗浄の徹底を含む製造⽅法、表⽰⽅法などを規定。飲食店の管理方法のJASでは、使⽤してはならない⾷材、混⼊防⽌の管理⽅法、提供すべき料理や情報提供⽅法などを規定しています。

訪日したベジタリアンやヴィーガンへの対応が進めば、インバウンド需要の取り込みもさらに円滑になるでしょう。

予想される需要拡大

世界的な自然派志向の高まりという流れは、日本にも影響を与えています。これに健康ブームも手伝って、ナチュラルフードや自然派サプリメントなどの需要拡大が予想されています。また、ベジタリアンやヴィーガンの増加に伴って、プラントベース食品などに対するニーズも引き続き高まるでしょう。

ABOUTこの記事をかいた人

フリーライター。食品、サプリメント、医薬品、医療、通販などの分野を中心に取材・執筆活動。玉石混交の情報が氾濫する中で、正しい情報の発信を目指します。千葉ロッテマリーンズを応援。仕事で疲れた時は、MISIAさんの歌が一番の癒し。