食物繊維豊富な果物の代表ともいえるいちじく。いちじくは、とろけるような独特な食感と甘みがあります。食感が独特なため好き嫌いが分かれるところですが、女性にうれしい栄養素が多く含まれていることをご存じでしょうか?夏から秋に旬を迎えるいちじくは、生で食べた時とドライフルーツにして食べるのでも栄養成分の違いがあります。今回は、いちじくについて生食とドライフルーツの違いや食べ方の工夫をお伝えします。
いちじくとは?
いちじくは、クワ科イチジク属の落葉高木です。いちじくは、果樹として世界中で栽培されています。樹高は約2~4mに、鉢植えでは高さ1mほどに成長します。日本のいちじくの寿命は約10~15年とされていますが、環境の適した海外では樹齢100年以上で、樹高18mにもなる大木も存在しています。
世界中で栽培されているいちじくにはさまざまな品種があり、雌雄異株(しゆういしゅ)が多く雄株(おかぶ)と雌株(めかぶ)があります。イチジクコバチという蜂が、雄株から花粉を運んで雌株に受粉します。日本で栽培されているいちじくは、改良され雌株だけでも実を付けるようになります。
いちじくの名前の由来
いちじくはアラビア半島が原産で、古代エジプトの壁画に描かれたり、旧聖書に最初の人間として登場するアダムとイブが体を隠すために使われていたりするのがいちじくの葉です。日本には、キリスト教伝来後の1591年に、ポルトガルの神父が天草地方にもたらしたと言われています。そのため日本では、天草がイチジク発祥の地ともされているのです。
いちじくは、異国の果物という意味で「唐柿(からがき)」「蓬莱柿(ほうらいし)」「南蛮柿(なんばんがき)」「唐枇杷(とうびわ)」などとさまざまな呼び名がありました。江戸時代初期に、中国から「映日果(エイジツカ)」という呼び名で伝わり訛(なま)って「いちじく」となった説や、1日1個ずつ熟す果実という意味で「一熟」の名からいちじくになったという説もあります。古くからあり、さまざまな所から伝わった歴史があるいちじくには、名前の由来がいくつもあるのです。
いちじくの旬
いちじくの旬は2回あり、品種によって夏と秋になります。夏が旬である品種にはバローネ・カドタがあり、6月頃から7月頃に収穫されます。秋に旬を迎える品種には桝井ドーフィン・蓬莱柿(ほうらいし)・とよみつひめがあり、8月頃から10月頃まで収穫されます。夏に収穫できる品種は実が大きくみずみずしいのが特徴で、秋に収穫できる品種は甘みが強いのが特徴です。
夏と秋の旬がありますが、バナーネという白いちじくは実がゆっくり成熟するため他の品種と旬が異なります。前の年の秋の終わりに実ったものは、次の年の夏に収穫時期が来る品種です。いちじくは店頭に並ぶ期間も短く、見つけたときに購入しないと次に行ったときにはないこともあります。そのため、四季を感じやすい果物の一つといえます。
栄養豊富な果実と呼ばれるいちじくの栄養素とは?
いちじくは、栄養豊富な果実と呼ばれることがあります。これは、いちじくには、女性にうれしい成分があり、さらに栄養価が高いためです。代表的なものに食物繊維があります。食物繊維には水溶性食物繊維と不溶性食物繊維がありますが、いちじくには両方含まれており、それ以外にも女性にうれしい栄養素が含まれている果実なのです。
いちじくに含まれる栄養素
いちじくに含まれる栄養素は、食物繊維をはじめ、さまざまあります。代表的なものを挙げてみました。
- ペクチン
ペクチンは食物繊維の一種です。いちじく100gあたりに含まれる食物繊維は1.9gで、そのうち水溶性食物繊維であるペクチンが0.7g含まれています。残りの1.2gは不溶性食物繊維です。
- 鉄分
体内にあるヘモグロビンは、鉄(ヘム)とタンパク質(グロビン)が結びついたものです。いちじくには非ヘム鉄が含まれ、ビタミンCと一緒に摂取すると、ヘム鉄に変り体内に吸収されやすい形になるのです。いちじくとビタミンCを多く含む柑橘類を一緒に摂り入れるとよいでしょう。
- カリウム
カリウムは、体に必要なミネラルの一種です。体内で浸透圧の調整などの働きを持っており、ナトリウムを排出する作用で塩分の摂り過ぎを防ぐのに役立ちます。
- カルシウム
カルシウムは、ミネラルのひとつでリンと結合する栄養素です。カルシウムを効果的に働かせるには、ビタミンDも同時に摂取することがポイントです。いちじくには100gあたりに26mg含まれており、果物の中ではカルシウムを多く含んでいるといえます。
- フィシン
いちじくを切ったときに白い液体が出ますが、これはフィシンという成分です。フィシンはタンパク質を分解する酵素の一つで、いちじくと肉を一緒に漬けておくことで肉が軟らかくなります。
生いちじくとドライいちじくの違い
ドライフルーツは、フルーツに含まれる水分を蒸発させているため栄養分が凝縮されているのが特徴です。食物繊維・カリウム・鉄分などの栄養素が凝縮されるため、効率的に栄養素を摂取することができます。生のいちじくを食べる時は、皮をむきます。いちじくに限らず多くの野菜や果物は種・皮に栄養を多く含んでいます。
いちじくの皮には、アントシアニンというポリフェノールが含まれています。皮ごと食べられるドライいちじくは、生のいちじくよりも効率よく凝縮した栄養を摂ることができるといえます。また、収穫時期が限られ傷みやすいいちじくをドライにすることで、時期を気にせず食べることができます。
ドライいちじくはお酒のお供に最適
ドライいちじくはそのまま食べても良いのですが、アレンジすることで飽きずに食べることが出来ます。特にいちじくにはタンパク質を分解するフィシンが含まれているので、肉類やチーズと相性がいいです。お酒のつまみとしてチーズやハムをカナッペに乗せて食べる場合には、ドライいちじくも一緒にトッピングすると程よい甘みが味のアクセントにもなります。また、お酒のお供として食物繊維を上手く摂ることができおすすめです。
有機のドライいちじくとは?
近年、日本でもスーパーなどで有機(オーガニック)栽培された野菜や果物を見かけるようになりました。しかし、海外では有機・オーガニック栽培が主流になりつつあり、フランスでは1980年代にBIO(日本でいうオーガニック製品)認可制度が法制化されました。また、BIO先進国の多いヨーロッパの中でも、フランスの基準は厳しいことで知られています。
野菜よりも果実を有機栽培する方が、手間も時間もかかります。甘い匂いを持つ果実の多くは虫を駆除するために農薬が必要です。また実になるまでに時間がかかるため、肥料も野菜よりも必要になります。国内のいちじく栽培では、駆除する虫も病気も少ないのですが、それでも実を付ける丈夫な木に育てるために化学肥料やカミキリムシを駆除する農薬も必要です。そのため、有機いちじくが出回っていることはほとんどありません。その点でいえば、海外の有機果実は日本よりも多く質も良いとされています。
まとめ
いちじくは、リンゴやみかんのように多く食べるイメージがないかもしれません。長い歴史を持ち、世界中で親しまれているいちじくは、旬が短いことで季節感を感じやすい果物でもあります。生食でも女性にうれしい成分が豊富ですが、ドライいちじくは日持ちもしますし、栄養価も高くなります。ダイエット中のおやつとして、また朝食のヨーグルトやシリアルと合わせて食べることがおすすめです。