2023年4月から新たな遺伝子組み換え表示制度がスタート。従来と何が変わったの？

遺伝子を組み換えた大豆やトウモロコシを原材料に使用したかどうかは、食品を選ぶ際の大切な情報です。避けたい方にとって頼りになるのが「遺伝子組み換え表示制度」ですが、2023年4月1日から新たな制度としてスタートします。従来の表示ルールとの違いを知って、買い物で役立ててみましょう。

遺伝子組み換え農産物を避けたい、という消費者ニーズ

日本では1996年に厚生省（現・厚生労働省）が、遺伝子を組み換えた大豆・トウモロコシ・ジャガイモ・ナタネの4作物で、初めて安全性を確認。その後、遺伝子組み換え農産物の輸入が始まり、それを使用した豆腐やスナック菓子などが流通するようになりました。

一方、遺伝子組み換え農産物に抵抗感を持つ方も少なくありません。「人工的に改良されたものは避けたい」「自然に育った農産物を口にしたい」という消費者ニーズは根強く、そうした声に応える表示が求められるようになりました。

「遺伝子組み換え表示制度」の登場

そこで、登場したのが「遺伝子組み換え表示制度」です。農林水産省が2001年4月に導入し、現在は消費者庁が所管しています。

この表示制度は、安全性審査を終了した9種類の農産物（大豆・トウモロコシ・ジャガイモ・ナタネ・パパイヤ・てん菜など）と、それを原材料に使用した33種類の加工食品を対象としています。

加工食品には、豆腐・納豆・みそ、コーンスナック菓子・ポップコーン・コーンスターチ、ポテトスナック菓子などがあります。

従来の表示ルールとは？

遺伝子組み換え表示制度が2023年4月からどう変わるのかを見る前に、まずは従来の表示ルールについて説明します。

表示制度は「義務表示」と「任意表示」で構成されます。

「義務表示」は事業者がパッケージに必ず表示しなければならない事項、

「任意表示」は事業者の判断で表示できる事項です。

「義務表示」については、遺伝子組み換え農産物を使用した場合、「大豆（遺伝子組み換え）」などと表示しなければなりません。組み換え農産物と非組み換え農産物を分別して管理（分別生産流通管理）していない場合には、「大豆（遺伝子組み換え不分別）」などと表示しなければなりません。

次に、従来の表示ルールの「任意表示」について見ていきましょう。遺伝子組み換えでない農産物を分別して管理したものの、意図せずに混入してしまうことがあります。従来の表示ルールでは、意図せずに混入した割合が「5％以下」ならば、「大豆（遺伝子組み換えでない）」と表示できました。

改正でどう変更されたの？

消費者庁は2023年4月1日から、新たな遺伝子組み換え表示制度をスタートさせます。食品表示基準を改正する内閣府令を2019年4月に公布。2023年3月末までを猶予期間とし、その間は従来の表示でも、新たな表示でも流通できるようにしました。

では、改正によってどう変わるのでしょうか。まず、「義務表示」については従来の表示ルールと同じです。

つまり、遺伝子組み換え農産物を使用した場合には「大豆（遺伝子組み換え）」と表示し、分別して管理していない場合には「大豆（遺伝子組み換え不分別）」と表示しなければなりません。

「5％」も混入しているのに、どうして遺伝子組み換えでないの？

大きく変わるのは「任意表示」です。消費者庁の検討会が問題視したのは、「最大で5％も遺伝子組み換え農産物が含まれているのに、『遺伝子組み換えでない』と表示すると消費者は誤認する」という点でした。「遺伝子組み換えでない」と表示するための要件を厳しくするように求めたわけです。

その結果、「任意表示」のルールが変更されました。「遺伝子組み換えでない」の表示は、「分別生産流通管理をして、遺伝子組み換えの混入がないと認められる大豆・トウモロコシ、それらを原材料とする加工食品」を対象とすることが決まりました。

新たな表示ルールの下で「遺伝子組み換えでない」と表示するためには、科学的に分析して「不検出」が要件となります。従来の混入率「5％以下」から「不検出」へと、要件を厳しくしたわけですね。

また、新たな表示ルールでは、意図せずに遺伝子組み換え農産物が混入したものの、混入率が「5％以下」に抑えられている大豆・トウモロコシ、それらを用いた加工食品を対象に、適切に分別生産流通管理が行われた旨を表示することも可能です。表示方法も工夫し、「大豆（分別生産流通管理済み）」「トウモロコシ（遺伝子組み換え混入防止管理済み）」などと表示します。

このように新たな表示ルールでは、「任意表示」を細分化するとともに、「遺伝子組み換えでない」と表示するための要件を厳格化しています。