若者のアルコール離れが加速、「酒は百薬の長」ではなかった?!

「酒は百薬の長」――近年の研究により、必ずしもそうとは言えないことがわかってきました。また、自分に合った時間の過ごし方や健康を重視する若者が増え、アルコール離れが進んでいます。飲酒をめぐる直近の動向を紹介します。

少量の飲酒でも寿命を短縮する可能性

昔から「酒は百薬の長」と言われてきました。アルコール類の飲み過ぎは健康に良くありませんが、少量を口にする程度ならば、かえって健康に良く、長生きの秘訣になると信じられてきたわけです。

確かに、飲酒は仕事の緊張から解きほぐし、ストレス解消にもなります。職場の仲間や友人との飲み会は楽しく、明日への活力になることもあるでしょう。

しかし、近年の研究によって、少量の飲酒であっても寿命を縮める可能性があることが判明し、「酒は百薬の長」と必ずしも言えないことがわかってきました。

長生きのためには飲酒「ゼロ」がベスト

世界的な一流の学術誌「ランセット」に、2018年に掲載された研究論文が世界中で注目されています。研究グループは、1990年~2016年の期間に世界195カ国で発表されたアルコール摂取量とアルコールに起因する死亡数に関する調査結果を基に分析しました。

それによると、飲酒は男性が早死にする原因の6.8%、女性では2.2%を占めていました。衝撃的だったのは、健康への悪影響を最小限に抑えるアルコール摂取量は、週あたり「ゼロ」であるという報告です。

長生きするためには、アルコール類をまったく口にしないことがベストな方法であるという研究結果なのですね。

特にがんの発症リスクは、アルコール類を飲めば飲むほど高まっていく傾向にあると指摘しています。飲酒によるがん発症のリスクを最小限に抑えるためには、飲酒量を「ゼロ」にすることと結論づけています。

若者を中心にアルコール離れが加速

健康に良いかどうかを別に、日本国内を見ると、そもそもアルコール離れが進んでいるようです。お酒ではなく、ノンアルコール飲料を利用する方が増加しています。

ノンアルコール飲料を利用する理由は、「健康を気にして」「気分転換」「食事に合うから」などさまざま。

仕事帰りの過ごし方が多様化していることも、アルコール離れの背景にあるのかもしれません。かつて、サラリーマンは勤務が終われば、職場の仲間や上司・部下と居酒屋へ直行するのがお決まりの行動パターンでした。会社の悪口を言ったり、上司に悩みを打ち明けたりして、仕事のストレスを発散しつつ、モチベーションを維持してきたわけですね。

しかし、趣味・娯楽も、働き方も多様化した現代では、飲酒以外の過ごし方を大切にする傾向が強まっています。

さらに、「ソバーキュリアス」という言葉が国内外で流行していますが、これは「飲めるけれど、あえてお酒を飲まない」というライフスタイルのこと。このライフスタイルを重視する若者の増加も、アルコール離れの要因の1つとなっています。

居酒屋で酔っぱらって何時間も同じことを繰り返して話すのはカッコ悪く、それよりも時間を節約したり、健康に良いことをしたりするという考え方です。「酒は飲んでも飲まれるな」と言うように、若者層ではクールな生活スタイルが支持されているようです。

ノンアルコール飲料の人気が上昇

こうしたことを背景に、近年ではノンアルコール飲料が人気です。特に健康を気にして、ノンアルコール飲料を選ぶ方が増えているとみられています。

ウイスキーや日本酒などと違って、ビールテイストをはじめ、各種のフルーツテイスト、コーラ味といった幅広い風味の商品が登場し、気分に合わせて商品を選ぶことができる点も支持されています。食事にはビールテイスト、家事の息抜きにはフルーツ味といったように、ノンアルコール飲料はシーンに合わせて楽しむことが可能です。

データからも若者のアルコール離れの様子がうかがえます。厚生労働省が発表した「国民健康・栄養調査(2019年)」によると、年代が高くなるほど、飲酒の習慣がある傾向が見られます。

飲酒の習慣があると回答したのは、20代が7.8%、30代が17.2%と低く、40代が25.2%、50代が28.1%でした。

厚労省は、1日あたりの純アルコール摂取量が男性40g以上、女性20g以上で生活習慣病のリスクを上昇させるとしています。

この摂取量に該当するのは、男性の場合、20代が6.4%、30代が13%であるのに対し、40代21%、50代19.9%でした。女性の場合は20代5.3%、30代11.7%、40代13.9%、50代16.8%で、男女ともに年代が上がるほど飲酒量も増えていきます。

飲む場合もほどほどに

がんの発症リスクなどを考えると、アルコールの摂取を「ゼロ」にすることが重要と考えられますが、だからと言って、すべての飲み会などを避けることも困難です。あまり神経質に考えるよりも、飲み過ぎないように注意することが大切かもしれません。

飲酒の習慣がある方は、その頻度を減らしたり、1回あたりの摂取量を減らしたりするなど、可能な範囲で節制を心がけましょう。

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フリーライター。食品、サプリメント、医薬品、医療、通販などの分野を中心に取材・執筆活動。玉石混交の情報が氾濫する中で、正しい情報の発信を目指します。千葉ロッテマリーンズを応援。仕事で疲れた時は、MISIAさんの歌が一番の癒し。