特定商取引法(特商法)をご存じの方は少ないかもしれません。あなたが日頃行うネット通販も、特商法によってさまざまなルールが設けられています。それは、悪質な事業者からあなたの利益を守るためです。安心してネット通販を楽しむために、知っておきたい特商法の基礎知識について解説します。
特商法とは?

特商法は、事業者による悪質な勧誘行為や違法行為を防止し、消費者の利益を守り、商品・サービスの健全な流通を目的とした法律です。
一見したところ、「私には直接関係がないのでは」と思われるかもしれませんが、特商法ではネット通販の返品ルールや訪問販売のクーリング・オフなどを定めています。悪質な事業者によってトラブルに巻き込まれた場合に、あなたを守ってくれる法律なのです。
一方、事業者にとっては、特商法に違反すると、業務停止命令が出されるなど、企業経営に深刻な打撃を受けます。さらに、実名が公表され、メディアも報道するため、社会的な信頼が著しく低下します。
特商法のルールは幅広く、細かく規定されていますが、ここからはネット通販を行う方が知っておくべきポイントに絞って説明します。
通信販売にはクーリング・オフがない!
消費者庁が2023年6月8日に発表した「消費生活意識調査結果」(全国の15歳以上の男女5000人が対象)によると、クーリング・オフ制度について「知っている」と回答した人は全体の9割に上りました。そのうち、「名称と内容を知っている」と回答した人の中で、「通信販売ではクーリング・オフ制度を利用できる」との回答が8割強を占めました。しかし、これは間違った理解です。
クーリング・オフとは、契約の申し込みや締結の後に、一定期間以内ならば「無条件」で解約できる制度。訪問販売や電話勧誘販売などは8日以内、連鎖販売取引などでは20日以内ならば利用できます。しかし、ネット通販を含む通信販売については、特商法でクーリング・オフ制度が設けられていません。
特商法では通信販売について、契約の申し込みの撤回または契約の解除に関する規定が設けられていますが、これはクーリング・オフとは異なります。
商品の引き渡し日から8日以内であれば、消費者は事業者に対し、契約の申し込みの撤回や解除ができると規定しています。しかし、「無条件」ではなく、返品する場合は消費者が送料を負担することになります。これに対して、訪問販売などで適用されるクーリング・オフの場合、「無条件」で解約できます。
返品特約をしっかりと読むこと
さらに、通信販売の場合、「返品特約」と呼ばれる仕組みがあります。これは、あらかじめ広告で、契約の申し込みの撤回や解除について特約を表示すること。具体的には、「返品不可」「到着後〇日以内に限り返品可」というように、返品の可否や条件を表示します。
販売サイトによって特約の内容はさまざまですが、返品特約が表示されている場合には、特約が優先されます。
安心してネット通販を楽しむためには、各販売サイトの返品ルールを理解しておくことが大切です。
表示事項が欠落しているサイトは要注意
ネット通販サイトを見ると、「特定商取引法に基づく表記」として、事業者の氏名・住所・電話番号をはじめ、代金と支払い時期、支払方法、商品の引き渡し時期などが記載されています。これは、特商法で規定されているルールの1つです。
特に初めて利用するサイトについては、必ず確認しましょう。記載が不十分な場合は、特商法を理解していないなどコンプライアンス面で不安があります。住所や電話番号が表示されていなかったり、表示されている番号に電話してもつながらなかったりする場合は、トラブルが発生しても対応してもらえない恐れがあります。
申し込み画面を訂正できない!

特商法はネット通販について、「顧客の意に反して契約の申し込みをさせようとする行為」を禁止しています。
これは、画面のボタンをクリックすると申し込みが完了することを容易に識別できるように表示していないケースなどが該当します。また、申し込み内容を確認して訂正できる仕組みになっていないケースなどもルール違反です。
こうした画面設定は、強引に購入させるために、サイト運営者が意図的に行っている可能性もあります。当然、特商法違反となり、事業者は行政処分の対象となります。
定期購入コースの申し込みにも注意を
定期購入コースを申し込む際にも注意が必要です。1度きりの購入と装って申し込みをさせるものの、実際には「5回購入が条件」などの定期購入契約だったというトラブルが激増しています。
トラブルを避けるために注意すべき点は、申し込みの最終確認画面に次の6項目(または5項目)が明記されているかどうかです。
・分量
・販売価格
・支払いの時期・方法
・商品引き渡しの時期
・申し込みの期間(期間が定められている場合)
・申し込みの撤回・解除に関する事項
これらの情報が明記されていなかったり、小さな文字で目立たないように表示されていたりする場合は特商法違反に該当するため、利用を控えるようにしましょう。
安心できる通販サイトでショッピングを楽しもう

ここまで説明してきたように、ネットショッピングを楽しむためには、特商法の概要を知ることが大切です。
今回紹介したポイントも参考にしながら、安心できる販売サイトを見つけてショッピングを楽しんでくださいね。