最近、健康食品の広告で「エラグ酸」「エラグタンニン」という成分名を目にすることが増えてきました。エラグ酸もエラグタンニンも、果物などに含まれるポリフェノールの1種です。健康の維持に役立つという研究成果が報告されていることを受けて、これらの成分を配合したサプリメントや健康食品が販売されています。また、化粧品にも使用され、幅広い層の女性に支持されています。エラグ酸とエラグタンニンはどのよう成分で、どのような関係性があるのでしょうか。そして、どのような食品に豊富に含まれているのかを見ていきましょう。
エラグ酸とは?
エラグ酸はポリフェノールの1種です。ポリフェノールは、植物が光合成を行う際に作り出される成分で、ほとんどの植物に含まれています。特に濃い色をした野菜・果物に豊富です。ポリフェノールは苦味・渋味成分や色素成分であり、害虫や紫外線から植物を守る役割を果たしています。
ポリフェノールは、フラボノイド系(色素成分)と非フラボノイド系(フェノール酸系・タンニン類)に大別されます。
このうち、非フラボノイド系のポリフェノールの代表例として、ウコンのクルクミン、コーヒーのクロロゲン酸、ゴマのリグナンなどがあり、エラグ酸もその1つに挙げられます。
エラグ酸の機能性表示食品は250件超
エラグ酸は19世紀に発見されました。植物の細胞壁などを構成している成分の1つとして知られています。
エラグ酸については、これまでに国内外で機能性に関する研究が行われてきました。その結果、エラグ酸にはさまざまな健康効果や美容効果があることが確認されています。そうした研究成果は、サプリメント・健康食品や化粧品の開発に活用され、各社から関連商品が販売されています。
また、エラグ酸を機能性関与成分とした機能性表示食品のサプリメントも多数登場しています。消費者庁の届出データベースを検索すると、エラグ酸を機能性関与成分に用いた商品は合計250件超(2025年7月21日時点)に上り、一定規模の市場を形成しつつあるようです。
ヒト試験による安全性評価も
安全性についても、科学的な手法によって確認されています。その一環として、ランダム化比較試験が行われています。これは、被験者をエラグ酸含有食品の摂取グループとプラセボ食品の摂取グループに分けて、約3カ月間にわたって摂取してもらい、有害事象の有無を評価したもの。その結果、人の健康への悪影響は認められなかったと報告しています。
ただし、一部の医薬品と相互作用があると報告されていますので、医薬品を服用中の方がエラグ酸を配合したサプリメント・健康食品を利用する場合は、事前にかかりつけ医に相談するようにしましょう。
エラグ酸がリッチなベリー類・ナッツ類

次に、エラグ酸を豊富に含む食品を見ていきましょう。代表的なものに、まずベリー類があります。具体的には、イチゴ・ラズベリー・ブラックベリー・クランベリーなどです。
ナッツ類にも多く含まれています。クルミをはじめ、アーモンドやカシューナッツ、ペカンナッツなどがあります。
このほかにも、エラグ酸リッチな食品として、ザクロやブドウも知られています。クコの実、パイナップルなどにも多く含まれています。
これらの果物やナッツを組み合わせて、日々の食卓に乗せることで、エラグ酸を効率的に摂取できます。
エラグタンニンの加水分解でエラグ酸を産生
エラグタンニンもポリフェノールの1種です。ここでは、エラグタンニンとエラグ酸の関係を見ていきます。
エラグタンニンの「タンニン」は、柿・ナッツ・赤ワイン・緑茶・コーヒーなどに多く含まれるポリフェノールで、渋味成分として知られています。植物にとっては、外敵から身を守る働きがあります。
タンニンは、「加水分解性タンニン」と「縮合型タンニン」に大別されます。このうち加水分解性タンニンは、酸やアルカリによって分解されやすい性質を持っています。加水分解されると、エラグ酸や単糖類のブドウ糖(グルコース)などに分かれます。
一方、縮合型タンニンは水に溶けにくく、重合しやすい性質を持ちます。その代表例に、カテキンや柿渋タンニンなどがあります。
今話題となっているエラグタンニンは、加水分解性タンニンの1つです。このため、植物に含まれるエラグタンニンは、加水分解によってエラグ酸を作り出すことになります。
サプリメントの利用時には過剰摂取に注意

今回紹介したように、ベリー類やナッツ類などは健康の維持に役立つ成分を豊富に含んでいます。あなたの健康や美容のために、日々の食生活に取り入れることも選択肢となります。 また、エラグ酸を配合したサプリメントや健康食品、化粧品が注目されています。機能性に関する研究も進展中です。ただし、サプリメント・健康食品は食生活を補足するものですので、利用時には1日あたりの摂取目安量を守り、過剰摂取を避けるようにしましょう。