ビタミンAは、身体の機能を正常に保つために重要な役割を果たします。健康食品・サプリメントの配合成分として脚光を浴びているβ(ベータ)カロテンやβクリプトキサンチンはビタミンAの前駆体で、摂取すると体内でビタミンAに変換されます。ビタミンAとその前駆体についてお話します。
植物の色素成分「カロテノイド」は体内でビタミンAに変換
ビタミンAは、油に溶けやすい脂溶性ビタミンの1つ。ビタミンAはレチノール、レチナール、レチノイン酸という成分の総称です。
私たちは日頃の食事でビタミンAを肉類(特にレバー)、乳製品、魚などから摂取しています。また、野菜やフルーツからは、ビタミンAの前駆体(プロビタミンA)であるカロテノイドを摂取しています。
ビタミンAの前駆体として、約50種類のカロテノイドが知られています。カロテノイドは植物に含まれる色素成分。ニンジンやトマトの赤色、カボチャやミカンの黄色などをイメージするとわかりやすいですね。
ビタミンAの前駆体であるカロテノイドは、私たちの体内でビタミンAに変換されて、作用します。
体内で効率的に変換されるβカロテン

植物に含まれるビタミンAの前駆体として、αカロテン、βカロテン、βクリプトキサンチンなどがあります。βカロテンやβクリプトキサンチンは、健康食品やサプリメントの成分として注目されているので、耳にしたことがあるのではないでしょうか。
特に、βカロテンは他のカロテノイドと比べて、体内で効率的にレチノール(ビタミンA)に変換されます。
βカロテンを多く含む食品には、ニンジン、ホウレンソウ、カボチャ、春菊、小松菜などがあります。
食材選びで残留農薬が気になる方は、有機栽培による野菜を選びましょう。ニンジンやホウレンソウなどは、国内で有機栽培されたものが出回っていますので、容易に入手できます。
温州ミカンに豊富なβクリプトキサンチン

βクリプトキサンチンは柑橘類に豊富で、特に温州ミカンにはオレンジの約10倍もの量が含まれています。「ミカンを食べると手が黄色くなる」ことは知られていますが、これはミカンに含まれるβクリプトキサンチンが影響するためです。
βクリプトキサンチンは温州ミカンのほか、パパイア、ビワ、柿などのフルーツに多く含まれています。
ビタミンAを大量に含むレバー
ビタミンAが豊富な動物性食品には、鶏・豚・牛のレバーをはじめ、ウナギ、アナゴ、ホタルイカ、銀ダラといった魚介類、鶏卵などがあります。プロセスチーズや牛乳といった乳製品にも含まれています。
特に多く含まれているのが、鶏レバーと豚レバー。食べ過ぎると、過剰症を生じる恐れがあります。急性の症状として、腹痛、悪心、嘔吐、めまいなどが報告されています。
厚生労働省の食事摂取基準によると、ビタミンAの「推奨量」は、男性の場合、18~29歳が1日あたり850μg(レチノール活性当量)、30~64歳が900μgなど。女性はそれぞれ650μg、700μg(同)などです。
これに対し、鶏レバーは100gあたりに1万4,000μg、豚レバーは1万3,000μgのレチノール(ビタミンA)が含まれています。
βカロテンなどの前駆体と動物性食品に含まれるビタミンAの違いとは?
野菜・フルーツに含まれるβカロテンやβクリプトキサンチンなどのカロテノイドは、体内でビタミンAに変換されます。しかし、通常の食事で摂取されるカロテノイドについては、ビタミンAの過剰症は知られていません。
というのも、カロテノイドの摂取が過剰となった場合、ビタミンAへの変換が減少するためです。
栄養機能食品では「夜間の視力の維持」「皮膚や粘膜の健康維持」を表示
食品でビタミンAの機能性を表示できるのが、消費者庁が所管する「栄養機能食品」。企業の任意によって栄養機能食品として販売できますが、国が定めた基準に沿った量を配合しなければなりません。
ビタミンAについては、1日あたりの摂取目安量に含まれる量を下限値231μg~上限値600μgと規定しています。
ビタミンAの栄養機能食品に認められた表示内容は、「ビタミンAは、夜間の視力の維持を助ける栄養素です。ビタミンAは、皮膚や粘膜の健康維持を助ける栄養素です」。注意喚起表示も必要で、「本品は、多量摂取により疾病が治癒したり、より健康が増進するものではありません。1日の摂取目安量を守ってください。妊娠3か月以内又は妊娠を希望する女性は過剰摂取にならないよう注意してください」と表示します。
残留農薬が気になる方はオーガニックの緑黄色野菜を

ビタミンAは他のビタミン類と同様、健康維持のために大切な栄養素ですが、だからと言って、摂り過ぎると健康被害を生じます。
基本は毎日の食事で緑黄色野菜をしっかりと摂り、肉や魚も適度に取り入れること。野菜の残留農薬が気になる方は、オーガニックの緑黄色野菜を選びましょう。
偏食や外食、飲み会が続いて、栄養バランスが気になる方には、配合量が一定の範囲内にコントロールされている栄養機能食品ならば、気軽に利用できます。