拡大傾向が続くオーガニック市場 環境保全やサステナブルな農業を支える 

「もう少し安ければ、オーガニック食品を利用したいのだけど」と迷っていませんか?確かにオーガニック食品は一般的な食品よりも価格が高いのですが、サステナブルな農業への支援、環境保全への貢献という重要な役割を果たしています。そうした観点を踏まえながら、オーガニック食品を取り巻く現状を理解し、オーガニック食品の利用を考えてみましょう。

オーガニック食品の売上規模 全世界で約18兆7,000万円、日本は13位

世界のオーガニック食品の売上規模は増加傾向にあります。2022年には全世界で約18兆7,000万円に達しました。年によって前年を下回るケースも見られますが、おおよそ右肩上がりで世界の市場規模は拡大を続けています。

国別で見ると、米国が最も売上規模が大きく、8兆円を超えています。2位がドイツで約2兆1,000億円、3位が中国で約1兆7,000億円、4位がフランスで約1兆6,000億円です。これにカナダ、スイス、イタリア、イギリス、スウェーデン、スペインが続いています。

日本は2022年時点で世界13位に位置し、売上規模は2,240億円。これはデンマークやオランドと同水準です。ただし、日本の売上規模は2009年が1,300億円、2017年が1,850億円、2022年が2,240億円と拡大傾向が続いています。

1人あたりの年間消費額 1位のスイスは約6万円…日本は約1,800円

国民1人あたりのオーガニック食品の年間消費額を見ると、スイスが約6万円で1位。2位はデンマークの約5万円、3位はオーストリアの約3万8,000円です。

売上規模がトップの米国は、約2万4,000円で7位。日本は約1,800円で、欧米と比較して、まだまだ1人あたりの消費額が小さいと言えます。

有機農業の耕地面積に占める割合 欧州が高い傾向に

次に、有機農業の取り組み面積を見ていきましょう。世界の取り組み面積は2022年に約9,640万ヘクタールとなり、過去15年間で約3倍に拡大しました。世界の全耕地面積に対し、有機農業の取り組み面積が占める割合は約2%となっています。

有機農業の取り組み面積を国別で見ると、オーストラリアが5,301万6,000ヘクタールで1位。次いで中国が289万8,000ヘクタール、フランスが287万6,000ヘクタール、スペインが267万5,000ヘクタールなど。

また、耕地面積に占める有機農業の取り組み面積の割合を見ると、オーストリアの27.5%が最も大きく、次いでスウェーデンの19.9%、イタリアとスイスの17.9%が続き、欧州諸国で高い傾向が見られます。これに対し、市場規模が大きい米国や中国ではそれぞれ0.5%にとどまっています。

日本の有機農業の取り組み面積は、2012年度末に2万500ヘクタールでしたが、2022年度末には3万300ヘクタールへ拡大。耕地面積に占める割合は0.7%です。

農林水産省が掲げる目標とは?

ここまで見てきたとおり、欧米諸国と比べて、日本の有機農業への取り組みは遅れており、オーガニック食品の売上規模もまだまだ小さいと言えます。

一方、国内農業の現状を見ると、担い手の高齢化や人手不足、農家の所得向上といった問題が横たわっています。さらに、近年では地球環境を守る取り組みが叫ばれるようになり、農業・食品分野も例外ではありません。

そこで農林水産省では、有機農業の取り組み拡大を重要施策として打ち出しています。具体的な目標を見ると、2050年までにオーガニック市場を拡大しつつ、耕地面積に占める有機農業の取り組み面積の割合を25%(100万ヘクタール)に拡大する計画です。

2030年時点の目標としては、有機農業の取り組み面積を6万3,000ヘクタールに置き、オーガニック食品の国産シェアを84%まで引き上げる計画です。

オーガニックの茶など輸出促進

日本でもオーガニック食品の市場規模は少しずつ拡大しています。それとともに、日本で製造されたオーガニック食品は国内で消費されるだけでなく、海外へも輸出されています。

2023年の輸出数量ベースで最も大きかったのが、茶の1585トン。このほか、しょうゆ(524トン)、食酢(131トン)、梅加工品(66トン)、みそ(59トン)、納豆(47トン)などがあります。

オーガニック食品の価格はなぜ高い?

「オーガニック食品を選びたいけど、値段が高くて…」という声も少なくありません。きっと、あなたもそう感じているのではないでしょうか?

少し古いデータですが、農林水産省の調査結果(2017年公表)によると、有機栽培品と標準品の販売価格を比較したところ、ダイコンが55%、ニンジンが74%、キャベツが63%、ネギが43%、トマトが55%、ピーマンが87%の割高でした。一般的なものよりも1.4倍~1.9倍も高い状況にあります。

なぜ、オーガニック食品は割高なのでしょうか?まず、有機農業では除草剤や殺虫剤といった化学農薬を使用しません。このため、雑草・害虫対策に手間がかかり、労働時間が増えてしまいます。また、化学肥料・農薬を使用しないため、どうしても収量が低下しがちです。

これに加えて、一般的な農産物のようにまとまった量を出荷しにくい面もあり、流通コストが高くなる傾向にあります。

そうした事情が重なり、オーガニック食品は一般的なものと比べて割高となっているのですね。

サステナブルな農業を応援しよう!

オーガニック市場の拡大に向けて課題も山積しているのですが、農林水産省を中心に、次世代の栽培技術の開発なども進められています。

購入する側でも、有機農業が環境保全に役立つことへの理解が進みつつあり、今後は支持する層が広がると予想されています。

さらに、サステナブルな農業を応援する観点からも、オーガニック食品を少しずつ食卓に取り入れることが重要となっています。

ABOUTこの記事をかいた人

フリーライター。食品、サプリメント、医薬品、医療、通販などの分野を中心に取材・執筆活動。玉石混交の情報が氾濫する中で、正しい情報の発信を目指します。千葉ロッテマリーンズを応援。仕事で疲れた時は、MISIAさんの歌が一番の癒し。